どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【13】暗殺教団※ その1

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 神殿内では神官達の祈りによって厳重に張られた結界によって魔法は使えない。また武器の持ち込みも禁止されている。
 当然、ジークもコウジも丸腰だ。

 さらにまずいことに秘匿の間には、遮音の結界も張られている。つまりどんなに大声をあげようともこの部屋の異変に女神像の間に詰めた神官と、彼らだけは武装を許されている神殿の衛兵は気づくことはない。

 ジークとコウジは言葉を交わすことも視線も交えることもなく、棒立ちとなっている大神官長の腕をジークが。側仕えの腕をコウジが引いて後ろに下がらせる。
 刺客達の狙いはあきらかに自分達であるが、それでも彼らに危険がないわけではない。邪魔になると見ればまっ先に始末されるだろう。

 刺客の数は四人。二人ずつ左右からジークとコウジに襲い掛かってきた。
 彼らは武器を持っておらず、猫の様な俊敏な動きで左手を突き出す。爪の先は長く伸びて尖っていた。そして青黒い不気味な色に染めている。

 コウジは左右から伸びる手をのけぞり避ける。同時に目の前で交差する刺客二人の両手首を掴んで引いて、互いに互いの頬に一筋の傷を負わせる。
 その一瞬後、彼らはごふりと血を吐いて床に倒れた。爪の先には肌をかすめただけで即死する猛毒が塗られていたのだ。

 たしかにこれならば武器などいらない。大神殿の入り口で衛兵に武器を持っていないか調べられてもすり抜けられたはずだ。
 どうして、こんな神殿の奥まで来られたか? という疑問は残るが。

 ジークといえば、刺客の手首を掴んだまでは一緒だが、ごきりと鈍い音がした。骨を折ったのだ。さすが脳筋王子というべきか。
 刺客達の誤算というより、彼らを差し向けた者達の誤算は、魔法が封じられた空間でジークとコウジが無力だと思っていたところだろう。

 刺客達は両手ではなく、すべて左手の爪のみをとがらせて先を毒に染めていた。ジークによってそれを無力化された刺客達の行動は早かった。
 彼らもまた口から一筋の血をこぼして絶命したのだ。口内に元から毒を仕込んでいたのか。

 ジークが手首を離すと物言わぬ遺体となった刺客は、だらりと石の床に倒れた。

「暗殺が失敗したとなりゃ、逃げることなど考えずに自ら死を選ぶか。まるきり捨て駒だな」

 そのように暗殺者を仕立て上げた者の得体の知れない邪悪さにコウジは顔をしかめる。傭兵時代の記憶が蘇る。自分のいい加減な中二設定をよくもまあ神様は見事に仕込んでくれたと思うが。

 「宗教がらみの匂いがプンプンしやがるな」と思わずつぶやく。命知らずの狂信者のゲリラほどやっかいなものはないと。
 それに「当たりだ」とジークが返す。

「モルガナのことは聞いているか?」
「虚海に隔てられた隣国の一つだろう? 名前だけはな」
「国家名と同じ女神モルガナを信仰する宗教国家だ。王はおらず神官達と女神の神託により選ばれた“聖女”によって統治されている」
「その国とこの刺客になにか関係があると?」
「聖女と神官達によって統治された身分も貧富の差もない平和な宗教国家だが、裏の顔がある」

 ジークは続けて「かの国は女神モルガナ以外の信仰も認めず、聖魔法以外の魔法も認めない。そのような“異端者”を始末する集団があるとまことしやかにささやかれている」

「暗殺組織ってわけか」

 コウジは綺麗に剃られて心許ない顎をざらりと撫でて、床に転がる四つの死体を見つめた。





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