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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【12】波乱の婚約式~なにごともないわけないよな~ その1

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「母上、どうしても反対だとおっしゃるのですか?」

 王宮。準妃の別宮。その主たる準妃の私室にて。コンラッドにロジェスティラは困ったようにその細い眉をしかめる。

「あなたこそどうして、準妃が必要な制度だとわからないのです? 王家直系の血が途切れることなく、連綿と続いてきたのは、これがあればこそ」
「ただ一人の正妃ではなく準妃を認めることで、他の愛妾の存在をも許し、多くの女性達の嘆きを誘ってきたこの因習が今さら必要ですか? 
 母上、あなたとて父上がよそに心を移す度に心を痛めてきたはずだ」

 「コンラッド!」とロジェスティラが声をとがらせ、それにハッと気づいた表情をした彼は「すみません」と謝罪を口にする。

 ロジェスティラは姉である正妃アルチーナに対して、準妃である己の立場をわきまえてその影に徹してきた。王が新しい愛妾を迎える度に苛立ちの態度を隠そうともしないアルチーナに対して、彼女は常に沈黙を保った。
 万事に対して出過ぎることはなく控えめ。王と王妃と王家に対して誠実であり従順というのが、世間の彼女に対する評価だ。

 それは正妃アルチーナの正体が暴かれ彼女が国の記録から抹消されても変わらない。国の第一の女性となっても準妃ロジェスティラは一歩引いた態度をとり続けた。

「シオンはまだ若く、この国のことも王家の血を残すことの重要さもわかっていないのです。フォートリオンの王が聖王グラフマンデ様から続く、ただ一筋の血であることがどれほど尊いかも。
 王妃となった歴代の魔法少女達はすべておりあいをつけて、準妃の大魔女を迎えてきました。彼女とても時間をかければ、きっとわかってくれます」
「それは私が王となることを前提に母上は話されておられますか? 序列2位にはジーク・ロゥもいるというのに」

 低くなったコンラッドの声に、ロジェスティラは一瞬、しまったという顔をしたが「皆、あなたに期待しているのです」と口を開く。

「誰が誰に期待していると? それは母上ですか? 元老院の貴族達ですか?」
「ジーク・ロゥ殿下は確かに優秀な方です。ですが、あなたは正妃の子無き今、このフォートリオン王の“正統なる”嫡男なのです。愛妾の子とは格が違います」
「それがあなた達の本音だ。そんなに愛妾の子が認められないというならば、逆に準妃も愛妾も持たないという私とジーク・ロゥの宣言こそ歓迎でしょうに」
「コンラッド!」
「母上や元老院の石頭共がどれほど反対しようと、私は己の信念を貫きます」

 結局話は平行線のままコンラッドが立ち去った部屋で、ロジェスティラは立ち尽くす。そこに隣室の扉が開いてやってきた人物が「いけませんな」と声をかける。
 杖の音をコツ……と響かせてやってきた老人はクルノッサ元老院議長だ。

「災厄を倒した功績は認めましょう。彼らが居なければたしかにこの国は救えなかった。
 だが、あれらの存在は劇薬です。母親同様に王家の伝統を乱す。異世界からなぜ少女ではなく、あのような男が呼ばれたのか? それこそが、不吉の前兆のように前々から私には思えてならなかった。
 あれはこのフォートリオン王家を破滅させる存在です」

 あれとは名前は出さないが、二人のあいだではそれで十分に通じた。
 公式愛妾として正妃と準妃の地位を脅かした平民の女。そしてそこから生まれた優秀すぎる息子。
 たしかに彼らはいるだけで王家の秩序を乱す存在だ。さらには異世界からやってきた破天荒な男も。

「彼らの役目はすでに終わりました。愛妾の子でありながら、準妃の御子同様の序列2位まで手に入れれば十分でしょう。
 舞台をかき乱す道化にはすみやかに退場願いましょう」

 クルノッサの言葉にロジェスティラは沈黙したまま答えなかった。が、それがいつもの彼女だった。
 万事において控えめである。自ら動くことはない。
 そして、沈黙こそが、彼女の是という答えだった。





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