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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【11】おじさん包囲網~王子様からは逃げられない!~ その2

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 翌日のなんでもやります課。「ご婚約おめでとうございます」とマイアの言葉にコウジは「まだ、婚約してねぇけどな」と執務机の椅子に埋もれるように、力無く微笑んだ。
 茶菓子が出された応接セットに移動する気力もない。マイアがそこにお茶と小皿にのせた焼き菓子を持ってきてくれた。良い子だな。

 その応接セットの椅子にこしかけたシオンが、王都で発行される新聞の束をながめながら言う。

「すべてトップニュースよ。一夜にしてプリンスになったご気分は?」
「おじさんがプリンスってガラじゃないだろう?」
「そうですね。王子様と結婚するんだから、プリンセスですよね」
「……いや、マイアちゃん、それはもっとやだ」

 姫おじさんはない、ない。

「だいたい、反発があると覚悟していたのに。なんだよ。この歓迎ムード」

 シオンの持ってきた新聞の束はコウジも朝、屋敷で読んだのだ。執事のケントンがアイロンをかけたものを手渡されて。
 そこには百年に一度の慶事に王都は歓びに包まれるだの、英雄と盟友、ついに結ばれるだの。純愛を貫くなんて小っ恥ずかしい見出しまで踊っていた。

 純愛、純愛ねぇ……国民の皆さんは知るまい。あのクールな王子様は夜はケダモノになって、このおじさんをヒンヒン啼かせているなんて。
 そんなコウジにシオンが「なにそのアナログの考え」と冷ややかに言う。

「元々同性同士の結婚が女神アルタナの元で、認められている世界よ。ある意味でわたし達の世界よりよっぽど進んでいるわよ。
 少数派とはいえ差別はないんじゃない?」
「そりゃ、差別はありませんと建前として、誰もがいうさ。だけどなあ。貴族や王族の結婚となると話は別だぞ」

 「英雄の血を望む者はいるって、前、言ったのはシオンちゃんだぜ」といえば、彼女は一瞬決まりが悪そうな顔となる。

「だけど陛下自らが、ジーク・ロゥ殿下とあなたの結婚を祝福されたとならば、話は別よ。それに、あなた達は運命のパートナーだもの。たとえ同性同士であっても、やはり王子と魔法少女は結ばれるのだと、夢物語のように王都の民達は語り合っているわ」

 「魔法少女じゃなくて、おじさんだけどな」とコウジは苦笑する。
 民の歓迎ムードに驚いたコウジだが、シオンの言うとおり国王の祝福もあるが、やはり最大の理由は、二人が運命のパートナーということだった。
 このフォートリオンの歴史で王子と魔法少女達はひとつの例外もなく結ばれてきたのだ。それは数々の伝説や物語として伝わっている。

 そこに英雄の王子と盟友のおじさんの物語が加わるのかと思うと、少し複雑であるが。

「で、シオンちゃんはどうして不機嫌なんだ?」

 コウジが子猫を保護したり、捜し物を手伝ったりして新聞に載る度に「自覚が足りない」と怒鳴りこんできた彼女だが、今回の記事に自覚は関係ないだろう。
 そのシオンの表情がどこか冴えない。というより悩んでいる風だ。

「ピート殿下とマイアに続いて、あなたとジーク・ロゥ殿下との婚約でしょ? 
 当然、コンラッド殿下とわたしも……と周囲は期待するわ」

 なるほどとコウジは思う。

 王子と魔法少女は例外なく結ばれてきたのだから、コンラッドとシオンも当然と周りは考えるだろう。
 しかし、シオンは以前、コンラッドとの結婚を迷っているとコウジに話した。

 その理由は、将来コンラッドが王となったとき、当然正妃となるだろうシオンとは別に、準妃を娶ることになる。それにあった。
 フォートリオン国王は正妃と準妃、二人の妃を娶る制度がある。これは聖王グラフマンデが二人の魔法少女をパートナーとしたときからの習わしだ。
 同時に、王家の血を確実に残す制度とも言えた。

 とはいえ、現代日本の考え方からすると配偶者に自分以外の相手がいるなど抵抗がある。過去の魔法少女達かどう折り合いをつけてきたかはともかく、シオンは自立心の強い少女だ。
 コンラッドのことは好ましく思っているが、準妃の制度にやはりひっかかって踏み切れないのだと、コウジに語っていた。

「ジーク・ロゥ殿下は、生涯あなただけだと、国王に確認して、それを認めさせたというじゃない?」
「ああ、あの王様があっさりとうなずいたんだよな」

 婚約式は大神殿にて行われるのだが、そこで女神アルタナにジークは生涯コウジだけだと誓うという。神に対しての宣誓は絶対だから、これでジークが将来王となろうとも、準妃の座は空位のままとなる。

「コンラッド殿下もね。それを聞いて、わたしに準妃を娶ることは将来絶対ない。ジーク・ロゥ殿下と同じく婚約式で、神前に誓ってもいいとおっしゃってね」
「いいじゃないか」

 「正直、嬉しかったわ」とシオンがほんのり頬を赤らめる。しかしすぐに元の憂い顔となって。

「だけどね、それを聞いたロジェスティラ様が反対なされたの」

 コンラッドの母であり、彼女はこの王国の準妃だ。「反対というより、たしなめる口調ね。若さゆえの激情で神前で誓えば取り返しがつかなくなる。よく考えなさいって……」とシオンはため息を一つ。

「王家の血の存続の“保証”として準妃という制度も、愛妾という制度もあるわ。同格の序列2位のジーク・ロゥ殿下が神前で男のあなただけと誓えば、当然、王家の血統を繋いでいくのはコンラッド王子か、ピート王子ってことになる」

 シオンの言葉にマイアが「ピート君も……」と軽く目を見開く。それにシオンは「当然よ。序列3位だもの」と返す。

「え、でもピート君もわたしだけだって……」
「そこは序列3位の気楽さね。嫌みじゃないのよ。ただコンラッド殿下は生まれた時から序列2位の王子で準妃の御子だったってこと」

 序列第1位が空位の今となっては、準妃の御子たるコンラッドが正統な王家の血を伝える唯一の王子と考える石頭は多そうだ。
 「もちろんわたしだって、準妃なんて制度は受け入れがたいわ。いまでもそれがあるならコンラッド殿下との結婚は出来ないと思っている」とシオンは続ける。

「だけど王家の血の存続を一番とするロジェスティラ様の事情もわかるよね。あの方はそれが当たり前のこととして育てられて、生きてきた貴婦人だもの。
 嫌いにはなれないわ」

 シオンの事情もなかなかに複雑なようだ。





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