どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

文字の大きさ
上 下
27 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【6】高慢と偏見とおじさん※ その1

しおりを挟む
   



「うわっ!」

 王都郊外のジークとコウジの邸宅。寝台へと放り投げられて、コウジは声をあげた。

「なに、お前、怒ってんの?」

 無言のまま、自分に馬乗りになるジークにコウジは訊いておきながら、返事を待たずに口を開く。

「だいたいな、王様にバラしてどうする? あんなみんなが見てる前で。今頃、王宮は騒然となっているぞ!」

 どころの話ではない。いままでは曖昧にごまかしてきた自分達の関係が公然となってしまったのだ。

「それがどうした? 男女の関係よりは遥かに数が少ないとはいえ、同性同士の恋情は禁忌などではない。結婚も許されている」

 そうなのだ。なんとこの世界、そういうことには寛容というか、女神アルタナは自らがつくりしすべてに慈愛を注いでいるとやらの教えのおかげで、差別が割合にない。
 割合といったのは、それでも男女よりは少数派であるし、跡継ぎが必要な上位の階級となれば問題になる。
 とくに貴族、さらにいうなら王族ともなればだ。

「たしかに宗教的にも法律的にも許されているんだろうな。だが、お前は序列2位の王子だぞ。その相手がこのおじさんなんてどう考えたって、王様も元老院の石頭の爺さん達も許さないだろう?」
「私達の事柄に誰の許しがいる? あなたは『あえて世間に話すことではない』といつも言い続けていた。それが今のあなたの気持ちならばと、私も黙っていた」
「それが今の正解だと俺は思っていたんだよ。
 噂が曖昧なままなら、第2王子様と縁を結べるんじゃないか? と勝手に奴らは考えるだろう」

 別にコウジは世間体や自分が気恥ずかしいからという理由で、このことをごまかしてきたわけではない。

 コンラッドとピートには“しっかりした”相手がいるが、世間からみればジークにとってコウジは盟友である。妙な噂はあるが、その正夫人の座は空いていると貴族共は勝手に考えるだろうと。
 不遇の王子だったジークだが、いまや第2王子にしてコンラッドと同格の実質上の皇太子だ。たとえ将来彼が玉座につくことはなくとも、王国の中枢をになうことは確実だ。

 そうでなくても、ジークの美貌と母親から引き継いだその財力だけで、結婚相手として十分に魅力的なのだ。
 しかし、王宮ではいまだにジークに反感を持っている元老院のうるさがたは多い。
 だから、ジークの結婚が“餌”になるならば……と。

「そう、あなたの考えも初めからわかっていて、私はそれを承知した。
 だが、あなたは本当にいいのか? もし、私が……そんなことは、この心に誓ってあり得ないが、それでも、他の女性を夫人として迎えていいと?」
「……それも仕方ねぇとは思っているよ」

 ぽつりとコウジはつぶやいた。

「なあ、よく考えてみろよ。俺はこんなおじさんで、世間から見りゃどう考えたってお前と釣り合わない。 そもそも女でもないから子供産めないからな。いや、おじさんが孕むなんて気持ち悪いが」

 苦笑しようとして、どうにもその笑みもゆがむ。
 そういう不安が無かったわけではない。

 ジークの心を疑ったことはない。ただ己をかばって死んだ。そんな男を想い続けた上に、おじさんの姿でやってきた自分の手を迷わずとったのだ。
 だが、愛情だけではどうしようも出来ない問題がある。
 自分の作り出した架空のキャラだとしても、神様のあたえたコウジの人生経験がそう語っていた。

 お互いの立場や周りの意見や、地位が高くなればなるほど身動きは取れなくなる。

「ジーク、俺はな。お前が王様や周りからのすすめで、どっかの貴族のお姫様と結婚したとしても、仕方ないと思っている。
 そのときには俺達は本当に“盟友”となって、こんな関係はきっぱり断とうとな。そうしないと、お前の奥さんも子供も不幸になる」

 好きだったのに別れましたなんて、陳腐な流行歌か恋愛映画かな? と思っていると「言いたいことはそれだけか?」と低い声が、自分を組み敷く男の唇から漏れた。
 こちらを見る剃刀色の瞳には暗い炎が見えた。

「そんな馬鹿馬鹿しいたわごとを、あなたの口から聞きたくもなかった。
 盟友? あなたが私から離れる? そんなことはさせない。それぐらいなら、あなたを鎖につないで、この寝室に閉じこめようか? 
 私から一生逃れられないように」

 その言葉と同時に、のど元に噛みつくように口づけられた。食い込む牙の痛みに、食われる……と思った。





しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。