上 下
24 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【4】街の噂と王様襲来 その2

しおりを挟む
   



 王宮へと戻ると、なんでもやる課に意外な来客があった。
 国王フィルナンドだ。

 表向きはコウジが新しく作った課の視察ということだが、突然の来訪に別の理由があるのはあきらかだった。
 王宮内とはいえ、フィルナンドは最低限の側近しか連れてこなかった。一人の侍従が応接セットの椅子に座るフィルナンドの後ろに立ち、部屋の入り口を二人の近衛騎士が固める。

 おそらくはこれから二人でする話を、家具のようにたたずんで聞かないふりをし、外に漏らすことも絶対にない信頼出来る人物達だろう。

「なんでもやるとは、また奇抜な役職だな」
「役職と言っても、俺一人しか職員はいませんよ。時々マイアちゃん……マイア嬢が手伝いにきてくれますけどね」

 さらにシオンが怒鳴りこんでくるとは、言わなくてもいいことだろう。

「仕事ははかどっておるかね?」
「まあ、ぽちぽち」

 コウジは懐に手をやって煙草をくわえようとして止めた。さすがに王様の前ではな……と思ったが。

「別に構わんよ。君のその煙草は魔道具の一つ。いわば騎士の剣のようなものだろう」
「ああ、どうも」

 王様から許可はでたのだからと、遠慮なく……とコウジは口にくわえる。ライターがなくとも、自分の意思一つでぽっと先に火がつくうえに、スーツだろうと軍服だろうと、そのふところの内ポケットから煙草が湧くのだから、便利なものだ。
 ちなみに銘柄は不明……なのは当時中二病で本当の中学生だった自分に、わかるわけもないのだから。ただ煙草カッコいい……で。

「災厄をうち払い国を救ってくれた君への感謝の印としてな。ロードの称号を与えたいと思う」

 フィルナンドの言葉にコウジは軽く目を見開いた。そう呼ばれるようになれば、コウジも貴族の仲間入りということだ。

「それは一代限りということですか?」
「君を高級官吏の法服貴族と一緒にするつもりなどないよ。なにしろ救国の英雄である王子の盟友だ。もちろん永代であり、いずれはしかるべき爵位を与えたいとも思っている。君が望むならば美しい配偶者も」

 貴族といっても、フィルナンドが口にした高級役人や国に貢献した名士にあたえられる一代限りの名誉としての称号と、その子孫代々まで相続することが出来る永代のものがある。

 王はコウジにその永代の称号をくれるという。それも爵位つきときた。
 爵位がつけば国からの年金のほかに、領地まで授けられるということだ。

 これには当然裏があるぞと、コウジが「それは光栄ですと申し上げるべきなんでしょうが」と無精髭をざらりと撫でる。

「なにか裏があります?」
「相変わらず率直だね」
「人払いまでしてあるんだ。まだるっこしい話は抜きで早く進めましょう。陛下もお忙しい身だ」

 コウジがくわえ煙草の煙をくゆらせば、部屋には完全な防音の結界がかかった。これでこの部屋での会話が外に漏れる心配はない。

「ジーク・ロゥと君との噂は私の耳にも入っている」

 どんな噂かなんて聞かずともコウジにもわかった。フィルナンドは続ける。

「もちろん私は君が英雄の盟友であるとわかっている。が、君達がいつまでも同じ屋敷に暮らしていると、馬鹿な勘ぐりをする者達もいる」
「それで俺にロードの称号を与えて、ジークの家を出ろと? ついでにいうなら、陛下がご紹介くださる爵位持ちのご婦人と結婚して、貴族として悠々自適な暮らしも保証すると?」

 ロードの称号をコウジに与え、さらには王から下賜された邸宅に、これもまた王が選んだ爵位つきの貴婦人との結婚と、異世界からやって来ずとも、なにも持たない男には大変な名誉と保証された生活には違いないが。

「時期がよろしくありませんな」

 お断りしますとはハッキリ言わず、コウジはそう口にした。今度はフィルナンドが軽く目を見開く。

「よくないかね?」
「今は三王子以外の、序列から外された王子達の“整理”の真っ最中でしょう?」

 先の災厄との戦いで一度は死んだ四十一人の王子達。コウジとアルタナ女神との取引で彼らは生き返った。
 フィルナンド王は災厄に惑わされた結果とはいえ、この多すぎる王子達が、後の王位継承争いの禍根とならないように、その“処置”に着手したばかりだった。






しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて、やさしくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。