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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【4】街の噂と王様襲来 その2
しおりを挟む王宮へと戻ると、なんでもやる課に意外な来客があった。
国王フィルナンドだ。
表向きはコウジが新しく作った課の視察ということだが、突然の来訪に別の理由があるのはあきらかだった。
王宮内とはいえ、フィルナンドは最低限の側近しか連れてこなかった。一人の侍従が応接セットの椅子に座るフィルナンドの後ろに立ち、部屋の入り口を二人の近衛騎士が固める。
おそらくはこれから二人でする話を、家具のようにたたずんで聞かないふりをし、外に漏らすことも絶対にない信頼出来る人物達だろう。
「なんでもやるとは、また奇抜な役職だな」
「役職と言っても、俺一人しか職員はいませんよ。時々マイアちゃん……マイア嬢が手伝いにきてくれますけどね」
さらにシオンが怒鳴りこんでくるとは、言わなくてもいいことだろう。
「仕事ははかどっておるかね?」
「まあ、ぽちぽち」
コウジは懐に手をやって煙草をくわえようとして止めた。さすがに王様の前ではな……と思ったが。
「別に構わんよ。君のその煙草は魔道具の一つ。いわば騎士の剣のようなものだろう」
「ああ、どうも」
王様から許可はでたのだからと、遠慮なく……とコウジは口にくわえる。ライターがなくとも、自分の意思一つでぽっと先に火がつくうえに、スーツだろうと軍服だろうと、そのふところの内ポケットから煙草が湧くのだから、便利なものだ。
ちなみに銘柄は不明……なのは当時中二病で本当の中学生だった自分に、わかるわけもないのだから。ただ煙草カッコいい……で。
「災厄をうち払い国を救ってくれた君への感謝の印としてな。卿の称号を与えたいと思う」
フィルナンドの言葉にコウジは軽く目を見開いた。そう呼ばれるようになれば、コウジも貴族の仲間入りということだ。
「それは一代限りということですか?」
「君を高級官吏の法服貴族と一緒にするつもりなどないよ。なにしろ救国の英雄である王子の盟友だ。もちろん永代であり、いずれはしかるべき爵位を与えたいとも思っている。君が望むならば美しい配偶者も」
貴族といっても、フィルナンドが口にした高級役人や国に貢献した名士にあたえられる一代限りの名誉としての称号と、その子孫代々まで相続することが出来る永代のものがある。
王はコウジにその永代の称号をくれるという。それも爵位つきときた。
爵位がつけば国からの年金のほかに、領地まで授けられるということだ。
これには当然裏があるぞと、コウジが「それは光栄ですと申し上げるべきなんでしょうが」と無精髭をざらりと撫でる。
「なにか裏があります?」
「相変わらず率直だね」
「人払いまでしてあるんだ。まだるっこしい話は抜きで早く進めましょう。陛下もお忙しい身だ」
コウジがくわえ煙草の煙をくゆらせば、部屋には完全な防音の結界がかかった。これでこの部屋での会話が外に漏れる心配はない。
「ジーク・ロゥと君との噂は私の耳にも入っている」
どんな噂かなんて聞かずともコウジにもわかった。フィルナンドは続ける。
「もちろん私は君が英雄の盟友であるとわかっている。が、君達がいつまでも同じ屋敷に暮らしていると、馬鹿な勘ぐりをする者達もいる」
「それで俺にロードの称号を与えて、ジークの家を出ろと? ついでにいうなら、陛下がご紹介くださる爵位持ちのご婦人と結婚して、貴族として悠々自適な暮らしも保証すると?」
ロードの称号をコウジに与え、さらには王から下賜された邸宅に、これもまた王が選んだ爵位つきの貴婦人との結婚と、異世界からやって来ずとも、なにも持たない男には大変な名誉と保証された生活には違いないが。
「時期がよろしくありませんな」
お断りしますとはハッキリ言わず、コウジはそう口にした。今度はフィルナンドが軽く目を見開く。
「よくないかね?」
「今は三王子以外の、序列から外された王子達の“整理”の真っ最中でしょう?」
先の災厄との戦いで一度は死んだ四十一人の王子達。コウジとアルタナ女神との取引で彼らは生き返った。
フィルナンド王は災厄に惑わされた結果とはいえ、この多すぎる王子達が、後の王位継承争いの禍根とならないように、その“処置”に着手したばかりだった。
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