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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【1】おじさんのなんでもやります課 その1
しおりを挟むフォートリオン王国の王都ザーラ。王国のほぼ中央に王都は位置し、都の中心には白亜の女神の大神殿。北に翼を広げた形の王宮がある。
ここ近年の魔法技術の発達によって、日が暮れてもその大通りには魔石灯の明かりが真昼のように輝き、深夜になっても人通りが途絶えることはない。 中央の広場には大きな映し鏡が設置されて、国からの知らせや各新聞社の報道、商品の宣伝などが動く絵として魔道通信で流れ、その前に人だかりが出来ている。
この国に生まれたならば、一度はおとずれてみたい華やかなりし都。それが王都ザーラだ。
馬車や人々が行き交う大通りを一本入れば、そこには市井の人々の暮らしがある。石畳の道に、風にゆれる緑の街路。そして、そのてっぺんには……。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「お~い、子猫ちゃ~ん、コッチにおいで。そうそう、いいもんあげるからさ~」
まさしく猫なで声で、コウジは片手に猫じゃらしをふりふり、そろりそろりと木の上の子猫へと迫る。
小さな身体に毛をぶわりと逆立てた子猫に、うっすら無精髭に三白眼、目の下にクマに痩せぎすの細い手足。口にはくわえ煙草。くたびれた黒いスーツにゆるくしめたぶらぶらのネクタイのおじさんが迫る光景は、ほのぼのなのか? それともシュールなのか?
「コウジさ~ん、あんまり枝の先にいくと危ないですよ~!」
下からマイアが声をかける。たんぽぽ色の髪に瞳の魔法少女。災厄を倒した現在は黄色のミニドレスではなく、ちょっといいところのお嬢さんのようなブラウスに長いスカート姿だ。
「大丈夫、おじさんは痩せてるからなあ~腹の出たおっさんとはちが…う……わぁっと!」
「コウジさん!」とマイアの悲鳴が響いたのは、枝の先で威嚇していた子猫が、ついにコウジに飛びかかったからだ。小さいがなかなか気概のあるヤツだ。
その勢いで枝はばっきり折れて、飛びついてきた子猫を抱えたコウジは、そのまま落下する。
かなりの高さの木だったが、石畳に激突ということにはならなかった。
その前に黒い軍服に包まれた力強い腕が、痩せた背中と細い足をしっかり受けとめたからだ。
いわゆる“お姫様抱っこ”の体勢でコウジは、自分を抱く王子様を見上げた。
鏡のような銀の短髪を後ろになでつけている。白皙の額に一筋かかった髪が、男の色気ってヤツがましましだ。前髪をあげていると大人の男に見えるが、夜に下ろすと二十の年相応の若者だと、コウジは知っている。
切れ長の剃刀色の瞳。通った鼻梁に、酷薄そうな薄い唇。精悍な頬のラインにすっと長いけれどしっかりした首にそこから続く広い肩幅に厚い胸板。コウジを抱くほどよく筋肉がついたたくましい腕に、なが~い足。その完璧な肉体を包むのは、黒に銀の飾りの軍服だ。ふわりと片方の肩にかけたマントが風になびく形さえ、完璧に計算されたように見える超絶美形だ。
今日も俺の王子様はカッコいいぜとコウジは思う。
「よう、ジーク。お仕事終わったのか?」
「午後の執務は終わった。あなたが街に出たと聞いたので追いかけたら、木から落ちるのが見えた」
淡々と語る口調であるが、その剃刀色の瞳にとがめる色が見えた。
「俺も木から落っこちるときに、お前の姿が見えたんで、そのまま受けとめてもらったんだ」
もしジークがいなかったなら、煙草の煙で結界でも張って、自分と子猫の身体を受けとめてもらったさと……と言外に告げる。
なにしろコウジは横で「よかったです~」と声をあげるマイアと同じ“魔法少女”なので。いや、この場合、魔法おじさんになるのか?
コウジの腕の中から子猫はピョンと飛び出して、飼い主の少年のもとへと駆け寄って抱きしめられていた。後ろにいた母親が「ありがとうございます。コウジ様」と礼を言う。
コウジはジークの腕の中からひらひらと手をふった。
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