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【7】やっかみと反感と攻撃 その1
しおりを挟む二つの目玉のベーコンエッグにサラダにトースト。
ウォーダンに誘われた朝食はごくごく普通だった。
プリンスの塔での食堂。もちろんこちらにも普段使いの食堂と晩餐用の食堂があるそうだ。朝食の席はもちろん普段使いの食堂だ。
まっ白な皿にのった料理に「ほっ」と息をついたら「どうした?」とウォーダンに問われた。
「ベーコンエッグだと思って」
「嫌いなのか?」
「違います! 好きです……というか、ずらずらナイフとフォークが並んでいる料理だったらどうしようか? と考えていて」
「朝からコース料理は食べないし、普段の食事もそんな大仰なものではないさ。学園の行事のあとの賓客を招いての晩餐会ならともかく」
晩餐会、やっぱりあるんだと思う。
「食べながらでいいから聞いてくれ。まずはプリンスとプリンセスについてだ」
ウォーダンの言葉にうなずく。トーストにバターをぬって、イチゴのジャムをのせてかじる。バターも極上のものだし、ジャムもスプーンですくった時点でわかっていたけど、粒がそのまま残っているものですごく美味しい。
パンもたしかに極上の小麦にバターを使ったものだとわかったけど、ヨハンの作ったもののほうが好きだった。毎日食べていたせいかもしれないけど。
「プリンスとプリンセスは、将来のキングとクイーン、つまりはこの学園の学園長と副学園長となる。このブリューゲル学園は学園と名乗っているけれど、学舎があるタワーに街のシティがあるこの島全体が一つの国だ。
学園長と副学園長は、国を預かる国主と副国主でもあるということだ。それにセンチネルギルドのグランドマスターとグランドサブマスターでもある」
そうブリューゲル学園は学園だけど国であり、それから二つの大陸に広がるギルドも統括していた。そしてすべてのセンチネルとガイドはこのギルドに所属している。
学園長と副学園長は学園を預かるだけではない。一つの国の国主で、この世界に広がるセンチネルギルドを預かるもの。それはこの世界のすべてのセンチネルとガイドも保護し導かねばならないことも現している。
プリンスとプリンセスは将来、そうなる立場だ。
よく考えなくても、落ちこぼれの自分にはとんでもなく荷が重くないか? と思う。
「俺達はプリンスとプリンセスではあるけれど、同時にこの学園の生徒だ。だから勉学が本分ではあるけれど、折々の行事での“社交”も重要な役割だ。現在のキングとクイーンが、滅多にお出ましにならない分だけ、その代わりも務めなければならない」
現在のキングとクイークは公の場に姿を現さない謎の人物だ。実際、入学式でも生徒会長でプリンスであるウォーダンが代表で新入生に挨拶していたし。
「“社交”ってどんなことするんですか? 晩餐会は聞きましたけど。どんな人と会うんです?」
「そうだな。晩餐会の他に、各種行事の列席や挨拶、茶会に夜会といったところか。近いところでは中間試験のあと、専科と修士科の生徒達全員参加のパーティ。そこに招かれる賓客の接待も俺達の役目だな。
招待客はこの学園の支援者、つまりは各国の王侯に貴族達や大きな商会の主ということになる」
うわ~王族の方々に貴族に金持ちのプルジョアなんて、フェリックスはいままで話をするどころか、見たこともない人種だ。そんな人達を相手にするのかと、思わず引きつった顔となる。
「そうだ。言い忘れていたがプリンセスはかなりの重責だ。だから選ばれたとしても断ることも“一応”出来る」
「え? 出来るんですか?」
フェリックスは思わず大きな声をあげてしまった。将来副学園長になるとか国を背負うとか、ギルドのグランドサブマスターとしてすべてのセンチネルとガイドを束ねるなんて、想像もつかないぐらい大変だと思うけど。
なにより王様とか王子様とか、公爵様とか伯爵様とか、とんでもないお金持ちを相手にするなんてのが、すごく苦手に思えたのだ。
逃げられるのならば……と思ってしまったって、仕方ないだろう。
なのにウォーダンが次の瞬間ニヤリと笑って。
「ただし、君はプリンセスの役目からは逃げられない」
「え? 断れるっていったじゃないですか?」
「“一応”と断っただろう? 単に俺と相性のよい優秀なガイドならば、代わりは見つかるかもしれない。だけど君は俺の運命のボンドだ。この世界で唯一の相手を俺は離すつもりはない」
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