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【3】魂のシンクロ その4
しおりを挟む「そんな! 今まで三人がかりでもウォーダンの共感は六割の緑がギリギリだったのに」
ピエリックが呆然とつぶやく。
青ならばガイドとして最優とされる七割以上、それもすべての表示が青で満たされているということは。
「オールブルー」と誰かがつぶやいた。エンパス率100。センチネルとガイドの心と魂が一つなるなんて、めったにあり得ないことだった。
それこそ、運命のボンドでもなけば。
「一体誰が?」
戸惑いの声はもっともだった。ウォーダンを担当していた三人のガイドとの繋がりは切れている。
部屋の喧騒をよそにチィオを抱いたままのフェリックスは、外へと飛び出していた。
【来て、俺の元へ。顔を見せて、俺もすぐ行くから】
【うん、僕もすぐに行くね】
彼が呼んでいる。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
大演習場の地上部分が凍りついたと思うと、ぴきりとビビが走り、がらがらと崩れた大穴からロンユンの背に立ったままのウォーダンが浮上する。
建物から出て、遠くに見えるその姿にフェリックスは息を切らして駆けた。だが、それよりも早くロンユンが滑るように地上を滑空して、フェリックスの前へとくる。
ロンユンの背からウォーダンが飛び降りる。彼の手が伸びてぐいと抱き寄せられた。
彼の端正な顔が近づくのに素直に目を閉じた。
【やっと会えた。俺のボンド】
【うん、会えたね。僕も会えて、うれしい】
唇が重なり合う。
フェリックスが抱いていたために二人のあいだに挟まれる形になったチィオが、「ピィ」と鳴いてジタバタともがいたが、すぐに頭上で行われる口づけの激しさにあてられたようにくったりとする。
カチカチと音を立てるフェリックスの顔にかかっていた大きな眼鏡。
【邪魔!】
【あ……】
ウォーダンが乱暴にとりさる。再び二人の唇が重なりあう。
ウォーダンが地上に出てきたのをモニターで確認した人々も彼を追ったが、いきなり繰り広げられはじめた激しい抱擁に遠巻きに呆然とするしかない。「あれ、舌からんでないか?」なんて言ってる者もいる。
「ウォーダン」
声をかけたのはハートリーだ。センチネルの講師である彼は、この“事故”の処理に現場を駆け回って、ようやく地上に出たウォーダンに追いついたのだ。
そして抱きあう二人に大声でいった。
「欠片でも理性が残っているなら、自分の“巣”にその子を連れて行け! ここでおっぱじめるつもりか?」
いつもセンチネルと思えないほど柔らかな物腰のロワイが“おっぱじめる”なんて言葉を使ったのに、生徒達がざわめく。赤面している者もいる。
ぴくりと肩を揺らしたウォーダンが、激しいキスに肩で息をついているフェリックスを横抱きにして、ロンユンの背に再び飛び乗る。
命ぜられなくとも、主人の意思を読んだようにロンユンは空へと舞い上がる、真っ直ぐに学園の中心にある尖塔の一つ。プリンスの塔へと向かう。そこがプリンスであるウォーダンの住まいだ。
「プリンスはどうしちゃったんですか? どうして、あんな冴えない新入生にいきなりキスなんて!」
ロワイにピンク頭のマルディーヌが必死の形相で訊ねる。彼の気持ちを表すように、彼のアニマルであるピンクのオウムも「ドウシテ? ドウシテ?」と騒ぐ。
「パーフェクトマッチが起こったのだろう?」
マルディーヌに答えず、ロワイがメディにたずねる。メディがうなずく。
「エンパス率100なんて初めて見たよ」
センチネルとガイドのエンパス率が完全に重なることをパーフェクトマッチという。違う二つの魂が完全に融合したということだ。それはすなわち。
「唯一のボンドなんて伝説だと思っていた。長年講師を務めている私だって見たことはないが、魂が融合すると相手のなにもかも欲しくなるっていうのは本当らしいな」
淡々と語るロワイの言葉に、では今頃のあの二人は……と想像した生徒達が赤面する。そこに「う、嘘、プリンスがあんな冴えない眼鏡と!」というマルディーヌの泣きわめく声が響いた。
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