落ちこぼれが王子様の運命のガイドになりました~おとぎの国のセンチネルバース~

志麻友紀

文字の大きさ
12 / 62

【3】魂のシンクロ その4

しおりを挟む



「そんな! 今まで三人がかりでもウォーダンの共感は六割の緑がギリギリだったのに」

 ピエリックが呆然とつぶやく。
 青ならばガイドとして最優とされる七割以上、それもすべての表示が青で満たされているということは。
 「オールブルー」と誰かがつぶやいた。エンパス率100。センチネルとガイドの心と魂が一つなるなんて、めったにあり得ないことだった。
 それこそ、運命のボンドでもなけば。

「一体誰が?」

 戸惑いの声はもっともだった。ウォーダンを担当していた三人のガイドとの繋がりは切れている。
 部屋の喧騒をよそにチィオを抱いたままのフェリックスは、外へと飛び出していた。



【来て、俺の元へ。顔を見せて、俺もすぐ行くから】
【うん、僕もすぐに行くね】



 彼が呼んでいる。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



 大演習場の地上部分が凍りついたと思うと、ぴきりとビビが走り、がらがらと崩れた大穴からロンユンの背に立ったままのウォーダンが浮上する。
 建物から出て、遠くに見えるその姿にフェリックスは息を切らして駆けた。だが、それよりも早くロンユンが滑るように地上を滑空して、フェリックスの前へとくる。
 ロンユンの背からウォーダンが飛び降りる。彼の手が伸びてぐいと抱き寄せられた。
 彼の端正な顔が近づくのに素直に目を閉じた。



【やっと会えた。俺のボンド唯一
【うん、会えたね。僕も会えて、うれしい】



 唇が重なり合う。
 フェリックスが抱いていたために二人のあいだに挟まれる形になったチィオが、「ピィ」と鳴いてジタバタともがいたが、すぐに頭上で行われる口づけの激しさにあてられたようにくったりとする。
 カチカチと音を立てるフェリックスの顔にかかっていた大きな眼鏡。



【邪魔!】
【あ……】



 ウォーダンが乱暴にとりさる。再び二人の唇が重なりあう。
 ウォーダンが地上に出てきたのをモニターで確認した人々も彼を追ったが、いきなり繰り広げられはじめた激しい抱擁に遠巻きに呆然とするしかない。「あれ、舌からんでないか?」なんて言ってる者もいる。

「ウォーダン」

 声をかけたのはハートリーだ。センチネルの講師である彼は、この“事故”の処理に現場を駆け回って、ようやく地上に出たウォーダンに追いついたのだ。
 そして抱きあう二人に大声でいった。

「欠片でも理性が残っているなら、自分の“巣”にその子を連れて行け! ここでおっぱじめるつもりか?」

 いつもセンチネルと思えないほど柔らかな物腰のロワイが“おっぱじめる”なんて言葉を使ったのに、生徒達がざわめく。赤面している者もいる。
 ぴくりと肩を揺らしたウォーダンが、激しいキスに肩で息をついているフェリックスを横抱きにして、ロンユンの背に再び飛び乗る。
 命ぜられなくとも、主人の意思を読んだようにロンユンは空へと舞い上がる、真っ直ぐに学園の中心にある尖塔の一つ。プリンスの塔へと向かう。そこがプリンスであるウォーダンの住まいだ。

「プリンスはどうしちゃったんですか? どうして、あんな冴えない新入生にいきなりキスなんて!」

 ロワイにピンク頭のマルディーヌが必死の形相で訊ねる。彼の気持ちを表すように、彼のアニマルであるピンクのオウムも「ドウシテ? ドウシテ?」と騒ぐ。

「パーフェクトマッチが起こったのだろう?」

 マルディーヌに答えず、ロワイがメディにたずねる。メディがうなずく。

「エンパス率100なんて初めて見たよ」

 センチネルとガイドのエンパス率が完全に重なることをパーフェクトマッチという。違う二つの魂が完全に融合したということだ。それはすなわち。

「唯一のボンドなんて伝説だと思っていた。長年講師を務めている私だって見たことはないが、魂が融合すると相手のなにもかも欲しくなるっていうのは本当らしいな」

 淡々と語るロワイの言葉に、では今頃のあの二人は……と想像した生徒達が赤面する。そこに「う、嘘、プリンスがあんな冴えない眼鏡と!」というマルディーヌの泣きわめく声が響いた。





しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

親友と一緒に異世界転生したら俺だけ神獣だった件 ~伝説の召喚術師になったあいつの溺愛が物理的に重すぎます~

たら昆布
BL
親友と異世界転生したら召喚獣になっていた話 一部完結

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...