精霊のジレンマ

さんが

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オヤの街のハーフリングとオーク

268.戦いのもたらすもの

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 パチパチと手を叩きながら現れるオークロードの顔には笑みが浮かび、満足げな表情をしている。岩オニに吹っ飛ばされたが、足取りも軽くダメージもない。さらには2度の戦いで十分に俺達の手の内も把握し、驚異となるものはないと感じていないのかもしれない。

「えらく余裕だな。全て計画通りってわけか」

「まだ、終わってはおらん。もう少し遊んでもらってもよかろう」

 そう言っても、捕らわれていたオークの姿は見えず、すでにロードの目的は達成している。後は、オーク達が逃げれるだけの時間を作れれば十分なのだろう。
 それにロードと距離をとって戦いたい俺達にとっても、この閉鎖された空間が分が悪いことを分かっている。こちらから発見して先手をとるつもりだったが、もうその優位性を作れることはなく、ロードと対峙している時点で距離も近い。

「遊んでる暇はないんだがな」

「暇だから、後をつけてきたんじゃなのか?」

 しかし、ロードは直ぐには襲ってこず、俺との会話を続ける。少しでも会話が続く間に、頭をフル回転させる。必ずしも戦うだけが選択肢ではなく、逃げる選択肢もある。
 捕らわれていたオークを逃がすことが目的だったならば、ロードの後ろにある穴は外に続いている。それにハーフリング族の隠し通路があってもおかしくはない。

 今は少しでも考える時間稼ぐ為に、とりあえず会話を投げ掛ける。

「最初からオークを解放することが目的だったのか?」

「古の滅びた記憶を持つ者に、今さら説明する必要もなかろうが」

「なぜ俺達を巻き込んだ?」

「お前達が巻き込まれに来たんだろ。招待したわけではないが、利用できるものは利用させてもらう」

「どうして、俺達のことを知っている?」

「時間稼ぎは、もうそれくらいでよかろう。いくら粘っても、他に方法は見つからんぞ」

 ロードは黒槍を掲げると、そこからは黒い靄が吹き出す。そして靄が天井に触れて吸収されると、パラパラと崩壊が始まる。

「早く倒さないと、ここは崩れ落ちてしまうぞ」

 そして槍を低く構えると、話は終わりとばかりに戦闘態勢をとる。

「カショウ、残念だけどロードの後ろ以外に道は見つからないね」

“ダメ、見つからない”

「辿れる臭いも他にはなさそウヨ」

 視覚や嗅覚・聴覚を使っても、抜け道が見つからなければ、もうロードの後ろを抜けるしか外に出る方法はない。

『外に出るには、結局ロードと戦うしかなさそうね』

 ムーアが諦めたように呟くと、それにロードが素早く反応する。

「まだ全てを見せてはいないだろ。本気を見せてみろ!」

 しかし、ロードの言葉と感情には違和感を感じる。明らかにロードが有利な状況であるにも関わらず、ロードからは強い覚悟を感じる。それは俺達を警戒しているような感じではない。

「なぜ、戦いを望む?魔物ならなりふり構わず、襲ってくればイイだろ」

「上位種が、そんな低能だと思っておるのか!」

「ただの戦闘狂が本当の姿なら低能だろ。計画を成功させるには、戦う必要があるんじゃないのか?戦わなければならない理由が?」

「煮え切らない奴め!この黒槍には、ここを崩壊に導くだけの力が残されている。もう下らない話は終わりだ!」

 ロードはこれ以上の会話をするつもりはなく、再び黒槍から黒い靄が溢れ出す。

「ストーンバレット」

 魔法は吸収されるが、黒槍からの靄の放出を防ぐ為には、今はそれしか方法がない。その中でもなるべく吸収されにくい魔法を放つ。

「これで、満足したか」

 攻撃を仕掛けたことで、ロードからは安堵した感情の声が聞こえる。何を望んでいるのかは分からないが、戦うとなった以上は全力で挑まねば勝てる相手ではない。

「切り札の出番だな。フォリー、頼むぞ」

「かしこまりました、ご主人様」

 影からフォリーが現れると、さらにロードは笑みを浮かべ、その一方でダークの緊張感が高まる。

 俺達の中で、ロードにダメージを与えれるのは、俺のマジックソードとダークの紫紺の刀、それにウィプス達の魔法。そしてロードに見せていないのが、切り札となるフォリーの陰魔法シェイド。

「遠慮はいらない。ロードに攻撃される前に、全力で倒しに行くぞ!」

「兄さま、失敗は許されませんよ」

 フォリーと紫紺の刀が、先陣を気ってロードへと襲いかかり、それを援護するようにウィプス達がサンダービームを放つ。

 そして、ロードは俺達の攻撃を迎え撃つ。
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