精霊のジレンマ

さんが

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オヤの街のハーフリングとオーク

261.オニの正体

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 オニ族の目は紅く輝き、額には魔物の魔石を埋め込まれている。もうオルキャンと同じで体は魔物化してしまい、オニ族とは呼べない。

「もう心も死んでしまっているのだろうな。機械的に目の前にあるものを襲っているだけの道具でしかないな」

 そして額の魔石が一瞬だけ輝きを増すと、再びロードへと襲いかかる。オニの動きは、その体格に似合わず素早い。駆け引きや様子見をすることはせずに最短距離を詰めるように動くと、右手に持つ金棒と左手に持つハンドアックスを交互にロードへと叩きつける。
 体格はオークの方が上だが、2m弱はある金棒を小枝であるかのように振り回す攻撃は、ロードでも受け止めきることが出来ずに徐々に圧されている。

「どうする?」

 オニに協力してロードを倒すか、このまま静観するか、それともロードと協力してオニを倒すか?

『共倒れが一番よね。でも、それを許してはくれないかもしれないわ』

 地面に倒れている者の大半は、ロードの槍で切られたり突かれていない。どちらかと言えば、オニの金棒によって吹き飛ばされたように見える。近付くものは全て敵になるのか、それとも最初から全てが敵になるのかもしれない。

 さらにロードが圧され始め、金棒やハンドアックスがロードの体を掠め始める。

「このまま様子見は難しいな?」

「あのオニを倒しましょう!」

 俺とムーアの会話に、珍しくソースイが割り込んでくる。普段は寡黙で話を振られない限りは、滅多に会話に入ってくることはない。それに、自分の感情をあまり表に出さないソースイだが、顔には怒りの表情が滲み出て声は震えている。必死に感情を抑えようとしているせいか、黒剣を握る手には力が込められている。

 仲間達の過去に何があったかは知らないし、俺自体が不明な存在でなのだから、過去を聞こうとも思わない。それに、ソースイだけでなくコアにも踏み込んではいけないし、触れられたくない領域はある。
 だからといって、感情だけを行動指針とするわけにはいかない。俺の迷いが少しの沈黙の時間をつくり、その短い時間をソースイの言葉が埋めてくる。

「恐らくは、私の父です」

「恐らくって、父親を知らないのか?」

「私が産まれる前に父は行方不明となりました。ただ三本角で岩の属性を持ち、オヤの草原で行方知れずとなったオニ族。そんな特徴を持つ者は少ないでしょう」

「ムーアは知っているのか?」

『そんな話は聞いたことがあるわよ』

 ヒケンの森のオニ族は種族としての力が衰退してゆく中で、新しい御神酒を造ることに活路を見出だした。新しい御神酒となる水を探して、様々な場所を捜索したが見つかる事はなく、最後に残された場所となるのが、未開の地でもあるヒケンの森とオヤの湿原。
 もちろん未開の地であれば、無事に帰ってくる可能性は低い。そして移り住む為には、その場所に行くことが出来るという確認も必要になる。しかし、オヤの湿原から帰ってくる者は誰一人いなかった。そして、身寄りの無くなった子供は、領主であるソーギョクが引き取り面倒を見ている。

『その一人が、ソースイであることは間違いないわ』

「私は父にも母に捨てられた名無しの忌み子です」

「それは、俺達が倒すべき理由ではないだろ」

「ここに残された武器や防具は、必ず役に立ちましょう」

「剥ぎ取りか?」

「どう使うかは自由です。この草原に来た者の中には、国や種族を代表した者も多くいます。持ち主の家族や国に返してやれる物もあるかもしれません」

「カショウ殿、それは決して悪いことではありません。そうやって受け継がれてきた、武器や防具は沢山あります。それに状況に合わせた武器や防具が必要なのは実感しているではありませんか!」

「ホーソンを巻き込むか。まあ正直じゃないけど、理由としては悪くはないか」


 ドゴーーーンッ

 その時、ロードとオニの拮抗が崩れる。防戦一方だったロードを大きく弾き飛ばすと、オニはこちらに向き直る。
 正面から見ると、さらにオニの異様さが増す。埋め込まれた魔石は額の1つではない。腕や脚の至る所に魔石が埋め込まれているのが分かる。もともと体格に優れているオニ族だが、オークを圧倒出来るだけの力は持っていない。その秘密が、体に埋め込まれた魔石なのは間違いない。

「どうやら、次の敵と認識されたようだな」 
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