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オヤの街のハーフリングとオーク
242.契約の力
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『ヒケンの森·タカオの街·イスイの街の安全の保障と、光る短剣と消臭剤の交換でイイわね。もし、ハーフリング族が契約を損なう行動を取れば、その代償はウッダの命とする』
「ちょっと待ってください。対象が“ハーフリング族が”なんですか?」
『もちろん、そうよ。契約を対等なものにするには、“ハーフリング族”になるわ。これだけの人数で私たちを包囲しているんですもの。それくらいの事は簡単でしょ。それに、短剣と消臭剤にそれだけの価値があることは分かっているのよ。契約の精霊の力を見くびっていたかしら?』
「そんなことはありませんが、私は商人です。自身の目でみたものしか信用しません。そこまでの契約をするであれば、光る短剣が本物である証拠を見せて下さい」
『契約の精霊をも疑るのね。イイわよ、証明してあげる。カショウ、魔石をウッダの目の前で砕いてみせて!』
ムーアの目が悪戯っぽく笑っている。魔石を砕けば、俺がキングのスキルを吸収してしまう。
「ムーア、でもケイヌとの約束があるだろう。ここで魔石を砕いてしまえば、もう取引は出来なくなる」
『ええ、ケイヌは取引不成立を望んでいるのよね、ウッダ?』
「···」
しかし、ウッダからは何の返事も返ってこない。
『契約の精霊の前で、迂闊に喋らないのは正解よ。カショウ、もうケイヌとの取引はないわ』
諦めてオークキングの魔石を取り出すと、地面に置く。まずは魔石が本物であることの証明をする。
「ソースイ、思いっきりやってくれ!」
「カショウ様、宜しいのですか?」
黒剣を持つソースイが、聞き返してくる。黒剣の全ての力を解放出来てはいないが、魔石に傷を付ける可能性がある。それに万が一という可能性は否定出来ない。
「構わない、思いっきりやってくれ。これで砕けるならば、守護者を倒すための新たな手段となるから心配する必要はない」
ソースイが、魔石目掛けて黒剣を大きく振り下ろす。真っ二つにするというよりは、叩きつけて粉砕するというような打撃に近い攻撃で、地面からは大きく土埃が舞い上がる。
しかし土埃の中からは、無傷の魔石が浮かび上がってくる。その魔石を拾い上げて、ウッダへと放り投げる。
ソースイの攻撃ですら傷一つ付かないのだから、落としたくらいで壊れるわけがない。それでもウッダは、突然放り投げられた魔石を、脆いガラス細工でもあるかのうように、体全体を使って受け止めにくる。
そして、まじまじと魔石に傷がないかを確かめている。これから破壊する魔石だが、それは商人としての本能のようなものなのかもしれない。
「傷一つないだろ」
「ええ、細かな傷もないです」
「しっかりと掴んでろよ。動くと手を傷付ける」
光る短剣を抜き、ウッダの胸の前にある魔石へと突き出す。
「ヒャアァァーーッ」
ウッダの甲高い悲鳴が上がり、体は硬直し目は閉じてしまっている。
パキンッという感触と共に、ロードの魔石は砕け散る。しかし魔石が降りかかっても、ウッダが魔石を吸収することはなく、俺だけが魔石を吸収してしまう。
改めて俺の体は特殊なのだと思いしらされるが、まだ目を閉ざして体を硬直させているウッダには気付くことが出来ない。
「おい、終わったぞ。そろそろ目を開けたらどうだ。折角魔石を砕いたのに、見ていなかったは通用しないぞ」
俺の言葉で、ウッダは慌てて目を開ける。手には魔石の重みがなくなっているが、改めて確認をする。
「どうだ?納得したか!」
「はい、確かに私どもの求めている短剣で間違いございません。しかし契約をした後に、短剣を奪うようなことはないでしょうな?」
『そんなことは出来ないわ。契約を破った代償は、カショウも同じよ!』
「それは、あなた達と捉えて大丈夫でしょうな?」
『ここに居るカショウと繋がりのある者は、オニ族であれ精霊であれ同じよ』
「それは、契約の精霊である貴女様も?」
『そうよ、一切の例外はない。契約の精霊の力を軽く見ないでもらえるかしら!』
「それは失礼しました。命を懸けるのですから、それくらいの確認は必要かと」
『カショウ、短剣とポーションを渡せば契約成立よ』
ウッダに短剣とポーションを手渡す。特に契約書を交わしたり何かの紋様が刻まれたりする事もなく、それだけで契約は終わってしまう。
「これで終わりだな。もう俺達に用はないだろ」
しかし、ハーフリング族の包囲は緩むこともないし、感じられる気配は厚みを増している。
「ちょっと待ってください。対象が“ハーフリング族が”なんですか?」
『もちろん、そうよ。契約を対等なものにするには、“ハーフリング族”になるわ。これだけの人数で私たちを包囲しているんですもの。それくらいの事は簡単でしょ。それに、短剣と消臭剤にそれだけの価値があることは分かっているのよ。契約の精霊の力を見くびっていたかしら?』
「そんなことはありませんが、私は商人です。自身の目でみたものしか信用しません。そこまでの契約をするであれば、光る短剣が本物である証拠を見せて下さい」
『契約の精霊をも疑るのね。イイわよ、証明してあげる。カショウ、魔石をウッダの目の前で砕いてみせて!』
ムーアの目が悪戯っぽく笑っている。魔石を砕けば、俺がキングのスキルを吸収してしまう。
「ムーア、でもケイヌとの約束があるだろう。ここで魔石を砕いてしまえば、もう取引は出来なくなる」
『ええ、ケイヌは取引不成立を望んでいるのよね、ウッダ?』
「···」
しかし、ウッダからは何の返事も返ってこない。
『契約の精霊の前で、迂闊に喋らないのは正解よ。カショウ、もうケイヌとの取引はないわ』
諦めてオークキングの魔石を取り出すと、地面に置く。まずは魔石が本物であることの証明をする。
「ソースイ、思いっきりやってくれ!」
「カショウ様、宜しいのですか?」
黒剣を持つソースイが、聞き返してくる。黒剣の全ての力を解放出来てはいないが、魔石に傷を付ける可能性がある。それに万が一という可能性は否定出来ない。
「構わない、思いっきりやってくれ。これで砕けるならば、守護者を倒すための新たな手段となるから心配する必要はない」
ソースイが、魔石目掛けて黒剣を大きく振り下ろす。真っ二つにするというよりは、叩きつけて粉砕するというような打撃に近い攻撃で、地面からは大きく土埃が舞い上がる。
しかし土埃の中からは、無傷の魔石が浮かび上がってくる。その魔石を拾い上げて、ウッダへと放り投げる。
ソースイの攻撃ですら傷一つ付かないのだから、落としたくらいで壊れるわけがない。それでもウッダは、突然放り投げられた魔石を、脆いガラス細工でもあるかのうように、体全体を使って受け止めにくる。
そして、まじまじと魔石に傷がないかを確かめている。これから破壊する魔石だが、それは商人としての本能のようなものなのかもしれない。
「傷一つないだろ」
「ええ、細かな傷もないです」
「しっかりと掴んでろよ。動くと手を傷付ける」
光る短剣を抜き、ウッダの胸の前にある魔石へと突き出す。
「ヒャアァァーーッ」
ウッダの甲高い悲鳴が上がり、体は硬直し目は閉じてしまっている。
パキンッという感触と共に、ロードの魔石は砕け散る。しかし魔石が降りかかっても、ウッダが魔石を吸収することはなく、俺だけが魔石を吸収してしまう。
改めて俺の体は特殊なのだと思いしらされるが、まだ目を閉ざして体を硬直させているウッダには気付くことが出来ない。
「おい、終わったぞ。そろそろ目を開けたらどうだ。折角魔石を砕いたのに、見ていなかったは通用しないぞ」
俺の言葉で、ウッダは慌てて目を開ける。手には魔石の重みがなくなっているが、改めて確認をする。
「どうだ?納得したか!」
「はい、確かに私どもの求めている短剣で間違いございません。しかし契約をした後に、短剣を奪うようなことはないでしょうな?」
『そんなことは出来ないわ。契約を破った代償は、カショウも同じよ!』
「それは、あなた達と捉えて大丈夫でしょうな?」
『ここに居るカショウと繋がりのある者は、オニ族であれ精霊であれ同じよ』
「それは、契約の精霊である貴女様も?」
『そうよ、一切の例外はない。契約の精霊の力を軽く見ないでもらえるかしら!』
「それは失礼しました。命を懸けるのですから、それくらいの確認は必要かと」
『カショウ、短剣とポーションを渡せば契約成立よ』
ウッダに短剣とポーションを手渡す。特に契約書を交わしたり何かの紋様が刻まれたりする事もなく、それだけで契約は終わってしまう。
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