精霊のジレンマ

さんが

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オヤの街のハーフリングとオーク

238.再現①

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 草原を移動しているが、ハーフリング族が後をつけてくる気配はない。その代わりに草原の所々に潜んで、こちらを監視している気配を感じる。幾ら動かずに身を潜めていても、鼓動や脈拍までを消さない限りはクオンの聴覚スキルから逃れる事は出来ない。
 俺の聴覚スキルでは潜んでいるハーフリングの感情は聞こえてこないので、今のスキルの範囲は会話をして聞き取れる程度の範囲だろう。強い感情は大きな声で離れていても聞こえるし、弱い感情は囁くような声近付いていも中々聞き取れない。

「やっぱり、この草原一帯には地下通路が広がっていそうだな」

『本当にケイヌは嘘ばっかりね。監視しているだけでも、どれだけの人数のハーフリングがいるのかしら。とてもじゃないけど、小さな街の少数部族規模じゃないわね』

 商人以外の仕事には手を掛けたくないといっていたが、想像以上に組織の規模は大きい。ジェネラル以下のオークは、地下で捕えられて強制的に魔石を産み出す道具になっているのであれば、さらに街の規模は大きい。

「オリジナルもいつまで、大人しくしているんだろうな?」

『大人しくしているって、どういう事なの?』

「ムーアも言ってただろ。ゴブリンだって、ハーピーだってロードは超武闘派だって!」

『それは、当てずっぽうの話よ。何の根拠もないわよ』

「でも共通する事は多い気がする。ゴブリンもハーピーも、種族の繋がりが強いんだ。このまま黙って、今の状態を受け入れ続けるとは思えない」

 ゴブリンキングは、自身のミイラのような体を回復させずにゴブリン達の核を探していた。ハーピー達は、種族が生き延びる為なら自身をクイーンの糧として差し出す。どの魔物も種族の繋がりが強い。

『仮にそうだとしても、それはハーフリング族が引き起こした事で、私達が口を挟める話じゃないわ。それに他所の心配をしているよりも、まずあなた自身の事よ』

「ああ、分かってるつもりだ」

 それでも頭の中には、ハーピーロードの魔石を吸収した時に見た記憶が甦る。魔物は、最初から憎むべき魔物としてアシスに存在していたのだろうか?でも、今はそれを言葉にはしない。



 “居る、守護者”

 クオンが湿地帯の異変に気付く。最初にロードが現れ遅れてキングが現れる。

「さて、再現しに行きますか!」

 腰に付けた瓶を取り出して前方へと投げると同時に、瓶に向けてウィンドカッターを放つ。瓶が割れると、中に入った消臭剤が一気に拡散される。

 瓶のパリンッ割れる音が合図となって、ウィプス達はサンダーボルトを一斉に放つ。今回は中位魔法のサンダーストームでなく、下位魔法のサンダーボルトを連射している。
 目的は接近戦を狙う俺をアシストする為であり、勿論手足を狙って動きを止めようとはしているが、適度に顔面に向けて威力の高いサンダーボルトを放っている。ロードもそれに釣られて威力の高い魔法吸収を優先し、手足に当たるサンダーボルトは気にもしていない。

 そして、カンテがサムズアップしてくる。この状態になれば、ロードは魔法吸収を優先し、近付く俺の存在は気にも留めない。腰に差した光るだけのオルキャンの短剣を確認すると、一気にロードとの距離を詰める。

「カショウ、口臭ブレスが来るよ。ソースイも予定通りね!」

 そして、ロードの後ろに隠れたキングの動向はナレッジが教えてくれる。接近戦になれば、キングは近付けまいと口臭ブレスを放ってくる。これを抜けなければ、ロードに近付くことは出来ない。

 パリンッ、パリンッ、パリンッ、パリンッ

 そして俺を追い越すように、ソースイ達がスリングで消臭剤の入った瓶を次々と投げこんでくる。瓶が割れると消臭剤が広がり、ロードへと続く道をつくってくれる。
 そこにキングの放った口臭ブレスが到達するが、完全に口臭ブレスを消し去ってくれるわけではない。ロードへと辿り着く為の道に、僅かな通れそうな空間をつくってくれるだけになる。

 少しだけ我慢出来ればイイ。少しでも消臭剤を身に纏えるように、体勢を低くする。地面とスレスレの空間を、草むらに埋もれるようにして走り抜ける。

 ロードとの距離が縮まり、背丈の低い草むらの間からでもオークの顔がハッキリと見える。そして体勢が浮き上がってくると、ロードは俺の右手に握られている光るだけのオルキャンの短剣を見て、薄らと笑みを浮かべる。
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