精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
上 下
238 / 329
オヤの街のハーフリングとオーク

238.再現①

しおりを挟む
 草原を移動しているが、ハーフリング族が後をつけてくる気配はない。その代わりに草原の所々に潜んで、こちらを監視している気配を感じる。幾ら動かずに身を潜めていても、鼓動や脈拍までを消さない限りはクオンの聴覚スキルから逃れる事は出来ない。
 俺の聴覚スキルでは潜んでいるハーフリングの感情は聞こえてこないので、今のスキルの範囲は会話をして聞き取れる程度の範囲だろう。強い感情は大きな声で離れていても聞こえるし、弱い感情は囁くような声近付いていも中々聞き取れない。

「やっぱり、この草原一帯には地下通路が広がっていそうだな」

『本当にケイヌは嘘ばっかりね。監視しているだけでも、どれだけの人数のハーフリングがいるのかしら。とてもじゃないけど、小さな街の少数部族規模じゃないわね』

 商人以外の仕事には手を掛けたくないといっていたが、想像以上に組織の規模は大きい。ジェネラル以下のオークは、地下で捕えられて強制的に魔石を産み出す道具になっているのであれば、さらに街の規模は大きい。

「オリジナルもいつまで、大人しくしているんだろうな?」

『大人しくしているって、どういう事なの?』

「ムーアも言ってただろ。ゴブリンだって、ハーピーだってロードは超武闘派だって!」

『それは、当てずっぽうの話よ。何の根拠もないわよ』

「でも共通する事は多い気がする。ゴブリンもハーピーも、種族の繋がりが強いんだ。このまま黙って、今の状態を受け入れ続けるとは思えない」

 ゴブリンキングは、自身のミイラのような体を回復させずにゴブリン達の核を探していた。ハーピー達は、種族が生き延びる為なら自身をクイーンの糧として差し出す。どの魔物も種族の繋がりが強い。

『仮にそうだとしても、それはハーフリング族が引き起こした事で、私達が口を挟める話じゃないわ。それに他所の心配をしているよりも、まずあなた自身の事よ』

「ああ、分かってるつもりだ」

 それでも頭の中には、ハーピーロードの魔石を吸収した時に見た記憶が甦る。魔物は、最初から憎むべき魔物としてアシスに存在していたのだろうか?でも、今はそれを言葉にはしない。



 “居る、守護者”

 クオンが湿地帯の異変に気付く。最初にロードが現れ遅れてキングが現れる。

「さて、再現しに行きますか!」

 腰に付けた瓶を取り出して前方へと投げると同時に、瓶に向けてウィンドカッターを放つ。瓶が割れると、中に入った消臭剤が一気に拡散される。

 瓶のパリンッ割れる音が合図となって、ウィプス達はサンダーボルトを一斉に放つ。今回は中位魔法のサンダーストームでなく、下位魔法のサンダーボルトを連射している。
 目的は接近戦を狙う俺をアシストする為であり、勿論手足を狙って動きを止めようとはしているが、適度に顔面に向けて威力の高いサンダーボルトを放っている。ロードもそれに釣られて威力の高い魔法吸収を優先し、手足に当たるサンダーボルトは気にもしていない。

 そして、カンテがサムズアップしてくる。この状態になれば、ロードは魔法吸収を優先し、近付く俺の存在は気にも留めない。腰に差した光るだけのオルキャンの短剣を確認すると、一気にロードとの距離を詰める。

「カショウ、口臭ブレスが来るよ。ソースイも予定通りね!」

 そして、ロードの後ろに隠れたキングの動向はナレッジが教えてくれる。接近戦になれば、キングは近付けまいと口臭ブレスを放ってくる。これを抜けなければ、ロードに近付くことは出来ない。

 パリンッ、パリンッ、パリンッ、パリンッ

 そして俺を追い越すように、ソースイ達がスリングで消臭剤の入った瓶を次々と投げこんでくる。瓶が割れると消臭剤が広がり、ロードへと続く道をつくってくれる。
 そこにキングの放った口臭ブレスが到達するが、完全に口臭ブレスを消し去ってくれるわけではない。ロードへと辿り着く為の道に、僅かな通れそうな空間をつくってくれるだけになる。

 少しだけ我慢出来ればイイ。少しでも消臭剤を身に纏えるように、体勢を低くする。地面とスレスレの空間を、草むらに埋もれるようにして走り抜ける。

 ロードとの距離が縮まり、背丈の低い草むらの間からでもオークの顔がハッキリと見える。そして体勢が浮き上がってくると、ロードは俺の右手に握られている光るだけのオルキャンの短剣を見て、薄らと笑みを浮かべる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...