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オヤの街のハーフリングとオーク
209.草原の異臭
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ホビットはラーキの花畑の中で気配を感じたが、この草原の主役であるはずのオークが、今のところ姿を見せない。
コアにしてもムーアにしても、他者の話であったり遠い過去の話であって、この草原で直接オークの姿を見てはいない。草原が全てラーキによって囲まれているわけでなければ、すでに他の場所へと移動したのかもしれないとも思えてくる。
『草以外には何もない、代わり映えしない景色よね』
「もう飽きたのか?まだ半日しか経ってないぞ」
『だって全く同じ景色よ。遠くに見える山だって大きすぎて、全く見え方すら変わらないのよ』
「今までだって、ヒッソリと暮らしてきたんだろ。それと比べたら半日なんて短すぎる時間じゃないか?」
『だからよ!我慢の限界が来たからこそ、拒否反応が出てるのよ』
「んっ、何の臭いだ?」
草むらから微かにツンとくるような刺激臭がする。よく見れば草むらの一部が少しだけ押し退けられたような跡が付いているのが分かる。
周囲に気配は感じないので、それなりに時間が経っているはずなのに臭いは残っている。
『簡単ね、この臭いを辿ればオークが見つかるわよ!』
「簡単って言うけど、誰が臭いを嗅ぐと思ってんだ?大分臭いは落ちてるけど刺激臭なんだぞ!」
『臭いが数字とか記号みたいに見えるんでしょ!それなら、どんな臭いでも関係ないじゃない』
「誰も分からないような微かに臭いでも判別出来るだけで、臭いは嗅がないとスキルは発動しないだぞ」
『だけど、それが一番効率がイイわよ。あなたは、効率悪いのは嫌いでしょ』
渋々と臭いを辿っていくと、所々で地面に抉れたよな跡がある。そして、そこに残る臭いは特に強く、まともに吸い込むとむせ返ってしまいそうになる。
「ここで何をしていたんだ。長時間ここに居たみたいだけど、地下に秘密があるのか?」
『地下となればホビット族しかいないわね』
俺とムーアの会話に、ブロッサが入ってくる。
「単に食事していたダケネ。魔力を多く蓄積した草を食べていたノヨ」
「オークって、草を食べるのか?」
違う方向に進みかけた判断を、直ぐにブロッサが軌道修正してくれる。魔力を糧としている魔物でも食事はする。
地下から涌き出した魔力は、大気中を漂っている。それを、どんな生物や植物、魔物や精霊であっても、空気のように吸い込み体内に蓄積する。蓄積する量が多ければ、保有魔力量が多いという事になるし、時間が経てば魔力が回復するのは、大気中に漂った魔力を吸収しているからになる。
普通であれば魔力を糧とする魔物は、大気中を漂う魔力だけで生命を維持出来るので食事をする必要はない。しかし、魔力を多く取り込んで進化したり、スキルや魔法を行使して失った魔力を回復させる場合は、大気中から取り込む魔力だけでは十分な量を確保出来ない。
だから、魔物がより多くの魔力を確保したい場合には食事をする。全てのものは、魔力を吸収している。動物も植物も魔力を蓄積するので、それを食べる事で蓄積された魔力を効率良く吸収出来る。
「オークは魔力を取り込んで、分裂して増えるんだろ。繁殖しようとしているのか?」
「それは違うウワ。全てを食べている訳じゃなイノ。臭いの始まった場所にも魔力を多く取り込んだ草があったけど、それには手を出していナイ。あることだけを確認して、そこで引き返しタノ」
「という事は、増殖じゃなくて失った魔力を回復させようとしているのか?」
「恐らく、そうだと思ウワ。私の知っていてオークとは変わってイル。手当たり次第に食べて増殖しようとする単純なオークではなくなっテル」
「この草原には草しかないから、その環境がオークを変えたのかもしれないな」
ブロッサの推測が正しいならば、それは爺エルフの話とは少し違う気もする。オークは進化していないが、過去よりは成長している。そんな気がするが、後は実際に見てみるしかない。
再び、オークの臭いを辿り進み出始めると次第に臭いは強くなる。それは草に残った臭いでなく、風で運ばれてくる臭い。それでも辺りにオークの姿は見えない。
「かなり臭いが強くなってるぞ。チェン、何も見えないのか?」
「この先は湿地帯になってやす。それ以外にに変化はないっすね。オークの姿なんて見えやしないっすけど、まだ進みやすか?かなりの臭いで、これ以上先は危険ですぜっ」
そう報告してくるチェンの顔は、かなり歪んでいる。
コアにしてもムーアにしても、他者の話であったり遠い過去の話であって、この草原で直接オークの姿を見てはいない。草原が全てラーキによって囲まれているわけでなければ、すでに他の場所へと移動したのかもしれないとも思えてくる。
『草以外には何もない、代わり映えしない景色よね』
「もう飽きたのか?まだ半日しか経ってないぞ」
『だって全く同じ景色よ。遠くに見える山だって大きすぎて、全く見え方すら変わらないのよ』
「今までだって、ヒッソリと暮らしてきたんだろ。それと比べたら半日なんて短すぎる時間じゃないか?」
『だからよ!我慢の限界が来たからこそ、拒否反応が出てるのよ』
「んっ、何の臭いだ?」
草むらから微かにツンとくるような刺激臭がする。よく見れば草むらの一部が少しだけ押し退けられたような跡が付いているのが分かる。
周囲に気配は感じないので、それなりに時間が経っているはずなのに臭いは残っている。
『簡単ね、この臭いを辿ればオークが見つかるわよ!』
「簡単って言うけど、誰が臭いを嗅ぐと思ってんだ?大分臭いは落ちてるけど刺激臭なんだぞ!」
『臭いが数字とか記号みたいに見えるんでしょ!それなら、どんな臭いでも関係ないじゃない』
「誰も分からないような微かに臭いでも判別出来るだけで、臭いは嗅がないとスキルは発動しないだぞ」
『だけど、それが一番効率がイイわよ。あなたは、効率悪いのは嫌いでしょ』
渋々と臭いを辿っていくと、所々で地面に抉れたよな跡がある。そして、そこに残る臭いは特に強く、まともに吸い込むとむせ返ってしまいそうになる。
「ここで何をしていたんだ。長時間ここに居たみたいだけど、地下に秘密があるのか?」
『地下となればホビット族しかいないわね』
俺とムーアの会話に、ブロッサが入ってくる。
「単に食事していたダケネ。魔力を多く蓄積した草を食べていたノヨ」
「オークって、草を食べるのか?」
違う方向に進みかけた判断を、直ぐにブロッサが軌道修正してくれる。魔力を糧としている魔物でも食事はする。
地下から涌き出した魔力は、大気中を漂っている。それを、どんな生物や植物、魔物や精霊であっても、空気のように吸い込み体内に蓄積する。蓄積する量が多ければ、保有魔力量が多いという事になるし、時間が経てば魔力が回復するのは、大気中に漂った魔力を吸収しているからになる。
普通であれば魔力を糧とする魔物は、大気中を漂う魔力だけで生命を維持出来るので食事をする必要はない。しかし、魔力を多く取り込んで進化したり、スキルや魔法を行使して失った魔力を回復させる場合は、大気中から取り込む魔力だけでは十分な量を確保出来ない。
だから、魔物がより多くの魔力を確保したい場合には食事をする。全てのものは、魔力を吸収している。動物も植物も魔力を蓄積するので、それを食べる事で蓄積された魔力を効率良く吸収出来る。
「オークは魔力を取り込んで、分裂して増えるんだろ。繁殖しようとしているのか?」
「それは違うウワ。全てを食べている訳じゃなイノ。臭いの始まった場所にも魔力を多く取り込んだ草があったけど、それには手を出していナイ。あることだけを確認して、そこで引き返しタノ」
「という事は、増殖じゃなくて失った魔力を回復させようとしているのか?」
「恐らく、そうだと思ウワ。私の知っていてオークとは変わってイル。手当たり次第に食べて増殖しようとする単純なオークではなくなっテル」
「この草原には草しかないから、その環境がオークを変えたのかもしれないな」
ブロッサの推測が正しいならば、それは爺エルフの話とは少し違う気もする。オークは進化していないが、過去よりは成長している。そんな気がするが、後は実際に見てみるしかない。
再び、オークの臭いを辿り進み出始めると次第に臭いは強くなる。それは草に残った臭いでなく、風で運ばれてくる臭い。それでも辺りにオークの姿は見えない。
「かなり臭いが強くなってるぞ。チェン、何も見えないのか?」
「この先は湿地帯になってやす。それ以外にに変化はないっすね。オークの姿なんて見えやしないっすけど、まだ進みやすか?かなりの臭いで、これ以上先は危険ですぜっ」
そう報告してくるチェンの顔は、かなり歪んでいる。
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