199 / 329
再構築
199.個と集団
しおりを挟む
自信のあった攻撃が完全に防がれた事で、レーシーの動揺は隠しきれない。
「これ以外のスキルはないし、これ以上の事は出来ないよ。だって元はボクの身体のなんだからね」
レーシーは、魔力やスキルの扱いに長けている。だから、寄生して取り込んだヘカトンケイルの能力やスキルを十二分に扱う事は出来るが、下位魔法が中位魔法へとランクアップするわけではない。
そして今のナルキの腕は、蔓で作られた翼のような格好となり所々にダミアの実を付けている。攻守ともに可能な形態をとっているだけでなく、レーシーにこちらが上位であると見せつけている。
「そうか、お前のせいか?何か秘密があるんだな!素直に教えれば、消滅させないでやる」
「消滅させなくても、もう一度寄生して乗っ取るつもりでしょ。寄生されるくらいなら、消滅した方がマシだね」
「じゃあ、コイツらがどうなってもイイのか?同じ身体だった、元の仲間達なんだろ!」
「ボクが消滅した方がマシだって思うなら、他の仲間達も皆同じだよ。それじゃなきゃ、1つの身体になる事は出来ない」
「じゃあ、こうなっても大丈夫なんだな!」
そう言うと、切れかけていた腕の1本を捩じ切って、これ見よがしに見せつけてくる。
「さあ、どうする?お前の仲間が苦しんでいるぞ!」
ナルキが翼のようになった両腕を振り抜き、レーシーにダミアの実を投げつける。レーシーもそれに反応して、蔦を張り巡らせて障壁を作り出す。
パパパッ、パパパッ、パパパパンッ
レーシーの蔦の障壁は、ダミアの実を受け止めたように見えた。しかし、そこに遅れて飛んできたダミアの実がぶつかる。衝撃を受けたダミアの実は爆竹のような音を鳴らして弾け飛び、弾けた欠片がさらに他のダミアの実を破裂させる。
そして弾けた細かい破片は、蔦の障壁の小さな隙間を抜けてレーシーへと襲いかかる。
全身を破片に襲われて、身体からオレンジ色の樹液のようなものを流したレーシーが立ち尽くしている。
「どうなっても知らんぞ!」
「赤い目になった時点で元の精霊の姿に戻る事は出来ない。救う為には消滅して、ゼロから再生するしかない!」
「という事だそうだ。それで、次はどうする?借り物のスキルじゃなくて、自分のスキルで勝負するのか?」
今度はレーシーがうつ伏せとなって腕を上に向けると魔力を流し始める。防御は一切お構い無しで、一斉攻撃をするつもりだろう。
沢山の腕にそれぞれに魔力を流す。しかしそれだけでなく、それぞれに何をするかを指示しスキルの実行を命令をしなければならない。それなりに能力の高いレーシーだからこそ、この数の腕を操る事が出来る芸当であり、俺には絶対に真似出来ない。
しかし、今回は負ける気がしない。レーシーと宿主、俺と精霊の関係性は大きく異なる。
レーシーに完全に支配されれば、命令は絶対であり逆らう事は出来ない。言い換えれば、命令がない限りは動くことはない指示待ち君の集まり。
そして、その中でもレーシーは効率良く成果を求める傾向にある。だから、魔力を流した順番にスキルも発動させる。決して魔力を込めた後に放置はしない、それが効率を求めるレーシーの絶対でもあり癖でもある。
そして常に1人で判断する者は、それに気付く事は出来ないだろう。
しかし、俺と精霊達の関係性は大きく異なる。個の役割の中で判断し自由に動く事を是とした俺達は、複数の判断を並行して行い実行出来る。多少重複し効率が悪くなる時もあるが、それは集団の中では必ず発生する。その事を否定してしまえば、集団の力は十分に発揮出来ない。
ヘカトンケイルを宿主としたがレーシーとの相性は悪かった。そして集団で戦う俺達は、個で戦うレーシーより圧倒的に有利な状況にある。
「ウオォォォォーーーッ」
レーシーの叫び声が響く。スキルが発動出来たのは最初だけで、魔力を流した腕が次々と狙われてスキルを発動する間もなく破壊されてゆく。ナルキが遠慮なく攻撃するのだから、他の精霊達も手を抜くことはしない。
そして数が減れば、もう考える必要はない。攻撃が重複しようが効率が悪かろうが関係ない。勝負を一気に決める為に、一瞬たりとも隙は与えはしない。
そして止めは、ソースイが黒剣を天へと突き上げて大声で叫ぶ。
「召喚、ハンソ!」
「これ以外のスキルはないし、これ以上の事は出来ないよ。だって元はボクの身体のなんだからね」
レーシーは、魔力やスキルの扱いに長けている。だから、寄生して取り込んだヘカトンケイルの能力やスキルを十二分に扱う事は出来るが、下位魔法が中位魔法へとランクアップするわけではない。
そして今のナルキの腕は、蔓で作られた翼のような格好となり所々にダミアの実を付けている。攻守ともに可能な形態をとっているだけでなく、レーシーにこちらが上位であると見せつけている。
「そうか、お前のせいか?何か秘密があるんだな!素直に教えれば、消滅させないでやる」
「消滅させなくても、もう一度寄生して乗っ取るつもりでしょ。寄生されるくらいなら、消滅した方がマシだね」
「じゃあ、コイツらがどうなってもイイのか?同じ身体だった、元の仲間達なんだろ!」
「ボクが消滅した方がマシだって思うなら、他の仲間達も皆同じだよ。それじゃなきゃ、1つの身体になる事は出来ない」
「じゃあ、こうなっても大丈夫なんだな!」
そう言うと、切れかけていた腕の1本を捩じ切って、これ見よがしに見せつけてくる。
「さあ、どうする?お前の仲間が苦しんでいるぞ!」
ナルキが翼のようになった両腕を振り抜き、レーシーにダミアの実を投げつける。レーシーもそれに反応して、蔦を張り巡らせて障壁を作り出す。
パパパッ、パパパッ、パパパパンッ
レーシーの蔦の障壁は、ダミアの実を受け止めたように見えた。しかし、そこに遅れて飛んできたダミアの実がぶつかる。衝撃を受けたダミアの実は爆竹のような音を鳴らして弾け飛び、弾けた欠片がさらに他のダミアの実を破裂させる。
そして弾けた細かい破片は、蔦の障壁の小さな隙間を抜けてレーシーへと襲いかかる。
全身を破片に襲われて、身体からオレンジ色の樹液のようなものを流したレーシーが立ち尽くしている。
「どうなっても知らんぞ!」
「赤い目になった時点で元の精霊の姿に戻る事は出来ない。救う為には消滅して、ゼロから再生するしかない!」
「という事だそうだ。それで、次はどうする?借り物のスキルじゃなくて、自分のスキルで勝負するのか?」
今度はレーシーがうつ伏せとなって腕を上に向けると魔力を流し始める。防御は一切お構い無しで、一斉攻撃をするつもりだろう。
沢山の腕にそれぞれに魔力を流す。しかしそれだけでなく、それぞれに何をするかを指示しスキルの実行を命令をしなければならない。それなりに能力の高いレーシーだからこそ、この数の腕を操る事が出来る芸当であり、俺には絶対に真似出来ない。
しかし、今回は負ける気がしない。レーシーと宿主、俺と精霊の関係性は大きく異なる。
レーシーに完全に支配されれば、命令は絶対であり逆らう事は出来ない。言い換えれば、命令がない限りは動くことはない指示待ち君の集まり。
そして、その中でもレーシーは効率良く成果を求める傾向にある。だから、魔力を流した順番にスキルも発動させる。決して魔力を込めた後に放置はしない、それが効率を求めるレーシーの絶対でもあり癖でもある。
そして常に1人で判断する者は、それに気付く事は出来ないだろう。
しかし、俺と精霊達の関係性は大きく異なる。個の役割の中で判断し自由に動く事を是とした俺達は、複数の判断を並行して行い実行出来る。多少重複し効率が悪くなる時もあるが、それは集団の中では必ず発生する。その事を否定してしまえば、集団の力は十分に発揮出来ない。
ヘカトンケイルを宿主としたがレーシーとの相性は悪かった。そして集団で戦う俺達は、個で戦うレーシーより圧倒的に有利な状況にある。
「ウオォォォォーーーッ」
レーシーの叫び声が響く。スキルが発動出来たのは最初だけで、魔力を流した腕が次々と狙われてスキルを発動する間もなく破壊されてゆく。ナルキが遠慮なく攻撃するのだから、他の精霊達も手を抜くことはしない。
そして数が減れば、もう考える必要はない。攻撃が重複しようが効率が悪かろうが関係ない。勝負を一気に決める為に、一瞬たりとも隙は与えはしない。
そして止めは、ソースイが黒剣を天へと突き上げて大声で叫ぶ。
「召喚、ハンソ!」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
騎士団に入る事になりました
セイラ
恋愛
私の名前はレイラ・エバーガーデン。前世の記憶を持っている。生まれは子爵家で、家庭を支える為に騎士団に入る事に。
小さい頃から、師匠に鍛えられていたレイラ。マイペースで無自覚な性格だが、悪戯を企む時も。
しかし、周りから溺愛される少女の物語。
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
ダンジョンマスター先輩!!(冒険に)付き合ってあげるからオカルト研究会の存続に協力してください 2!! ~闇乃宮と涙怨の巫女~
千両文士
ファンタジー
関東地方の豊かな自然に囲まれた某地方都市、迷処町(まよいがまち)。
運命のいたずらによりこの地に蘇った五武神の試練・マヨイガの儀に5人の高校生男女が挑んでから20数年後・・・それぞれの道を歩んでいた5人は新たな宿命に引き寄せられるようにマヨイガダンジョンに帰結する。神紋もののふ、六武神、眷族魔物&式神、マヨイガ三勢力連合チームが新たに挑みしは突如神域に現れた謎多き『闇乃宮』!? そこで待ち受ける新たな試練とは……!?
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ
ひるま(マテチ)
SF
空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。
それは王位継承戦に持ち出されたチェスゲームの中で、駒が取られると同事に現れたモンスターをモチーフとしたロボット兵”盤上戦騎”またの名を”ディザスター”と呼ばれる者。
彼ら盤上戦騎たちはレーダーにもカメラにも映らない、さらに人の記憶からもすぐさま消え去ってしまう、もはや反則レベル。
チェスの駒のマスターを望まれた“鈴木くれは”だったが、彼女は戦わずにただ傍観するのみ。
だけど、兵士の駒"ベルタ”のマスターとなり戦場へと赴いたのは、彼女の想い人であり幼馴染みの高砂・飛遊午。
異世界から来た連中のために戦えないくれは。
一方、戦う飛遊午。
ふたりの、それぞれの想いは交錯するのか・・・。
*この作品は、「小説家になろう」でも同時連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる