精霊のジレンマ

さんが

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191.コアピタンスの笑み

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「俺様には違いが分かるぞ!」

「イッショ、何が違うんだ?」

「あのエルフの魔力が、コピーの方へ移ったのが分からないか?それに、エルフ耳には魔力が感じられん!」

魔法に対する防御をイッショにお願いすれば、自主的に魔力探知を発動させている。何か仕事を振れば、嫌そうな言葉を返してくるのにコツコツと努力している。努力している姿を見られたくないか、勉強していないよと言って勉強しているタイプだなと思う。

改めて魔力探知で感じると、確かにエルフ耳のあった場所には魔力を感じない。それだけではなく、逆に作り物だったはずのネコ耳の方には少し魔力を感じるのが気になる。

「コアピタンス、ネコ耳に変化はないか?」

慌ててネコ耳カチューシャを触るコアピタンスの表情が変わる。そして外そうとしているのか、イロイロと触っているが何も変わらない。

「取れませんの···」

ここで俺がコアピタンスのネコ耳を触りにいくのはマズい事は分かる。間違いなく変態認定されるだろうし、“やっぱりな”という声も聞こえてるような気がする。

そして俺以上にネコ耳にこだわりのあるクオンが耐えきれなくなったのか、再びコアピタンスのネコ耳を触り始める。
さっきも念入りにコアピタンスのネコ耳を触っていたクオンなら、何かの変化に気付けるはず。

「クオン、コアピタンスのネコ耳に変化はあったのか?」

「うん、生えてる。まだまだだけど本物よ!だけど、ここれは始まりで、先は長く険しいわ」

「はいっ、先生に付いて行きます」

そして、クオンとコアピタンスが抱き合って喜びだすと、コアピタンスを影の中へと連れていってしまう。

「あっ···」

制止する間もなく消えてしまい、コピーされたコアピタンスだけが残され、それをコピーがウンウンと頷きながら見ている。

「勝手に現れて、何してくれてんだよ!」

思わずコピーコアピタンスに突っ込みを入れると、急に胸に両手を当ててワナワナと震えだす。ガクッと両膝をつき手の平を見て驚きの表情を見せると、両手を上に挙げるようにして前のめりに倒れる。そしてチュニックから伸びた糸は切れてしまう。

良く意味は分からないが、“私はやられました”と言いたいのだろう。目の前のコピーの倒れている姿は本物と見分けが付かないほどソックリで、微かに感じられる魔力は弱っている感じに見える。

「コアピタンスを連れていけって言いたいのか?」

そしてコピーはウンウンと頷き、今度は完全に動きを止める。

『あなたと融合している精霊が必要だと感じたんでしょう。あなたの体の半分は精霊のものなんだから!』

「それなら、少しくらい話を聞かせてくれてもイイだろ。何故俺を助けたのか?聞きたいことは沢山あるのに!」

心の中で精霊に話しかけてみるが、返ってくる答えもないし、再びチュニックが光る事もない。

『少しだけ力を行使したんだから、あなたの体も悪くなっていない証拠で、この方法が1番の近道なのかもしれないわ。それにクオンも喜んでいるでしょ!』

俺と融合している精霊は、クオンの行動を予測したのかもしれない。そして予測通りに、クオンは師弟関係だと言いながらネコ耳仲間が増えた事を喜んでいる。しかし、コアピタンスは本当にネコ耳を求めていたのだろうか?

「ムーア、コアピタンスと契約をしよう」

『やっと、連れていく気になったのね』

「俺達の事を、ここまで知ってしまったら連れていくしかないだろ」

『クオン、カショウの気が変わらないうちに、コアピタンスを連れてきて』


クオンに連れられてきたコアピタンスは目を輝かせている。

少女に見えるといってもエルフ族であり、俺よりも遥かに長く生きている。それに族長という事もあって契約魔法についての知識と理解は深く、制約やそれに反した場合のペナルティも分かっている。
そしてコアピタンスの影響力を考えると、制約は厳しくなる。エルフ耳が見えなくなってネコ耳が付いてるといっても、顔も姿も変わらない。知った者であれば、コアピタンス本人と疑いもするだろうし、変な噂がたってもマズい。

「コアピタンス、悪いけどソースイ達とは違って制約は厳しくなる。俺と一緒に行動している事がバレてしまってはマズいんだ。だから、影の中に隠れている事が多くなる。それでも契約を受け入れるか?」

俺はかなり深刻に伝えたつもだったが、コアピタンスは破顔する。

「はい、ご主人様。よろしくお願いいたします。それから、私の事はコアとお呼び下さいませ」
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