141 / 329
クオカの洞穴の死霊
141.クオカの森
しおりを挟む
迷いの樹の内側に入ると、ダビデの移動速度が上がる。
慣れた森を進んでいるだけではなく、動きそのものが違う。俺達にとっては少し濃い程度の魔力だが、ダビデにとっては結界が何らかの影響を与えているのだろう。
そして止まることなく、もう2時間は走り続けている。
「ダビデ、どこまで走るんだ?」
「そうですね。そろそろ、少しだけ休憩を取りますね」
「このペースで進んで1週間かかるのか?」
「仮眠は2時間程とれるので安心して下さい」
言葉は丁寧だが、あまり休憩はとらないと宣言してくる。もちろん、それに俺達も付き合う事になるが、ダビデは全く気にしていない。
そして、ダビデは短い休憩時間の間も、世話しなく何かをしている。イロイロな方向を向いて手をかざしたり、しゃがんで土を触ったりしている。
特に魔力が変化したり動いてもいないし魔法を行使しているわけではないし、精霊の気配や匂いも感じない。
「ムーア、何をしてるか分かるか?」
『さあね?あなたのスキルで何も感じられないなら、私に分かるわけがないわ』
「ホーソンなら分かるか?」
「何かしらのマジックアイテムが関係しているかもしれませんが、魔力の流れが無いのであれば解りませんね」
俺の魔力探知スキルも、まだ使い始めたばかりで完璧と呼べるには程遠いが、それでもスキルである以上は仲間達よりも魔力を感じとる事が出来る。
最初から全てが上手く行くわけではないし、これから何かが分かる事もあるだろうが、今は何も分からない。
残るは結界の外と中の空気の質感の違いになるが、何かが混ざっているのであればブロッサなら分かるかはず。しかし、肝心のブロッサは影の中から出てこない。いつもなら、珍しい薬草などを収集する為に外に出てくるはずだが、今は影ではなくブレスレットの中に籠って出てこない。
「ブロッサ、大丈夫か?」
「ウン、大丈夫。アノ毒ハ手強イカラ、少シダケ時間必要。ブレスレットノ中ナラ問題無イ!」
一度は返事をしたが、その後は呼び掛けても返事が返ってこない。契約関係にあるので、ムーアの存在は確かである事は感じれるが、状態までは把握出来ない。
「ムーア、ブロッサは大丈夫なのか?」
『苦しんだりはしていないから大丈夫よ。恐らく進化する前兆だから、後は楽しみに待ってて』
何が関係するのかは分からないが、1つの事が切っ掛けとなって大きく成長したり世界観が変わることはある。後はブロッサが何を願って進化したのかを楽しみに待つしかない。
結局、ダビデは休憩の度に同じ動作を繰り返しているが、何をしているかまでは分からなかった。この森の中にずっと居るわけではないので、知り過ぎるのは危険な行為にも思える。
それに、2日目になると走り続けるのにも飽きてきた。全くといって景色が変わらず、同じパターンの光景が明らかにループしているしている事に気付く。
進んだ距離は、見える迷いの樹の大きさで分かる。しかし、全部で32本の迷いの樹がほぼ等間隔で囲むように配置され、これは自然に出来たものではない。恐らくはドライアドやトレントによって意図してつくられた配置になるのだろう。
変則的に位置を変える太陽もあり、1度方向を間違えれば修正する事は出来ないだろう。そして、ダビデも位置を特定させない為に、この森を走り続けているように思える。
「結界の中も、迷いの森になっているって事か」
「そうよっ、木々を避けるように見せて、少しずつ曲がって進んでるわっ」
自慢気に現れるベルだが、その位置感覚はGPS並みの高精度を誇る。もしかすると、クオンと同じで俺達の中でも、秘匿したいスキルになるかもしれない。
「ベルが位置が分かるのは、精霊としてのスキルなのか?」
「えっ、それはっ、とにかく私が凄いって事なのよっ」
精霊としてのスキルじゃない事が分かると、精霊としての力が低いと感じたのか誤魔化そうとし始めるベル。
「やっぱり鳥型である事のスキルなのか。音の精霊としてのスキルと相性抜群だと思うぞ」
「そうよっ、私は凄いのよっ!」
クオカの森の謎解きが終わる頃になって、クオカの町が見えてくる。
森の木々を利用し屋根を作ったり、家自体が木の上にあったりと住居らしきものが見えてくる。町を囲む外壁はなく、迷いの樹の結界が破られる事はない絶対の自信も伺える。
「着きました、ここがクオカの町」
慣れた森を進んでいるだけではなく、動きそのものが違う。俺達にとっては少し濃い程度の魔力だが、ダビデにとっては結界が何らかの影響を与えているのだろう。
そして止まることなく、もう2時間は走り続けている。
「ダビデ、どこまで走るんだ?」
「そうですね。そろそろ、少しだけ休憩を取りますね」
「このペースで進んで1週間かかるのか?」
「仮眠は2時間程とれるので安心して下さい」
言葉は丁寧だが、あまり休憩はとらないと宣言してくる。もちろん、それに俺達も付き合う事になるが、ダビデは全く気にしていない。
そして、ダビデは短い休憩時間の間も、世話しなく何かをしている。イロイロな方向を向いて手をかざしたり、しゃがんで土を触ったりしている。
特に魔力が変化したり動いてもいないし魔法を行使しているわけではないし、精霊の気配や匂いも感じない。
「ムーア、何をしてるか分かるか?」
『さあね?あなたのスキルで何も感じられないなら、私に分かるわけがないわ』
「ホーソンなら分かるか?」
「何かしらのマジックアイテムが関係しているかもしれませんが、魔力の流れが無いのであれば解りませんね」
俺の魔力探知スキルも、まだ使い始めたばかりで完璧と呼べるには程遠いが、それでもスキルである以上は仲間達よりも魔力を感じとる事が出来る。
最初から全てが上手く行くわけではないし、これから何かが分かる事もあるだろうが、今は何も分からない。
残るは結界の外と中の空気の質感の違いになるが、何かが混ざっているのであればブロッサなら分かるかはず。しかし、肝心のブロッサは影の中から出てこない。いつもなら、珍しい薬草などを収集する為に外に出てくるはずだが、今は影ではなくブレスレットの中に籠って出てこない。
「ブロッサ、大丈夫か?」
「ウン、大丈夫。アノ毒ハ手強イカラ、少シダケ時間必要。ブレスレットノ中ナラ問題無イ!」
一度は返事をしたが、その後は呼び掛けても返事が返ってこない。契約関係にあるので、ムーアの存在は確かである事は感じれるが、状態までは把握出来ない。
「ムーア、ブロッサは大丈夫なのか?」
『苦しんだりはしていないから大丈夫よ。恐らく進化する前兆だから、後は楽しみに待ってて』
何が関係するのかは分からないが、1つの事が切っ掛けとなって大きく成長したり世界観が変わることはある。後はブロッサが何を願って進化したのかを楽しみに待つしかない。
結局、ダビデは休憩の度に同じ動作を繰り返しているが、何をしているかまでは分からなかった。この森の中にずっと居るわけではないので、知り過ぎるのは危険な行為にも思える。
それに、2日目になると走り続けるのにも飽きてきた。全くといって景色が変わらず、同じパターンの光景が明らかにループしているしている事に気付く。
進んだ距離は、見える迷いの樹の大きさで分かる。しかし、全部で32本の迷いの樹がほぼ等間隔で囲むように配置され、これは自然に出来たものではない。恐らくはドライアドやトレントによって意図してつくられた配置になるのだろう。
変則的に位置を変える太陽もあり、1度方向を間違えれば修正する事は出来ないだろう。そして、ダビデも位置を特定させない為に、この森を走り続けているように思える。
「結界の中も、迷いの森になっているって事か」
「そうよっ、木々を避けるように見せて、少しずつ曲がって進んでるわっ」
自慢気に現れるベルだが、その位置感覚はGPS並みの高精度を誇る。もしかすると、クオンと同じで俺達の中でも、秘匿したいスキルになるかもしれない。
「ベルが位置が分かるのは、精霊としてのスキルなのか?」
「えっ、それはっ、とにかく私が凄いって事なのよっ」
精霊としてのスキルじゃない事が分かると、精霊としての力が低いと感じたのか誤魔化そうとし始めるベル。
「やっぱり鳥型である事のスキルなのか。音の精霊としてのスキルと相性抜群だと思うぞ」
「そうよっ、私は凄いのよっ!」
クオカの森の謎解きが終わる頃になって、クオカの町が見えてくる。
森の木々を利用し屋根を作ったり、家自体が木の上にあったりと住居らしきものが見えてくる。町を囲む外壁はなく、迷いの樹の結界が破られる事はない絶対の自信も伺える。
「着きました、ここがクオカの町」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
最弱の英雄譚|才能にも環境にも恵まれなかった底辺の少年が3人の女冒険者と出会い、努力友情勝利で英雄へと成り上がる痛快大逆転冒険ファンタジー!
オニオン太郎
ファンタジー
ステータスが存在するファンタジー世界。それはステータスの高さで地位が決まる、苛烈な競争社会であった。そんな情勢の中、『どれだけレベルを上げてもステータスが上昇しない』という特性を背負った底辺の少年、ルース・マゾースキーは、ある日いつものようにいじめられている所を3人の女冒険者のパーティーに助けられる。
家無し、金無し、才能無しの最底辺のルースは、彼女らとの出会いをきっかけに、ステータス至上主義の競争社会の中で、最低値のステータスのまま、知恵と勇気と仲間の絆で、弱肉強食の残酷な世界を勝ちあがり、英雄へと昇りつめていく。
『努力は才能や環境の差を超えられないのか?』
『結局、人生の10割は運なのか?』
現代なら誰もが抱くこの大きな問いをテーマに、最弱の少年の痛快な逆転劇が始まる!
※なろうとか色々なサイトでも載っけてるよ!
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
騎士団に入る事になりました
セイラ
恋愛
私の名前はレイラ・エバーガーデン。前世の記憶を持っている。生まれは子爵家で、家庭を支える為に騎士団に入る事に。
小さい頃から、師匠に鍛えられていたレイラ。マイペースで無自覚な性格だが、悪戯を企む時も。
しかし、周りから溺愛される少女の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる