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迷いの森の精霊
115.不確かな約束
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俺に腕を上げる動作で、ユニコーン達は攻撃されると勘違いして、凄い勢いで逃げ去ってしまう。
角が切り落とされたユニコーンも起き上がると同じく逃げ出すが、仲間達とは別方向へと逃げてしまった。それが、必死で逃げたからなのか、それとも角が無い事が影響しているのかは分からない。しかし、出来損ないのユニコーンの扱われ方を見ていると、これからの未来が大変である事は想像出来る。
俺達が森に入って、精霊を叩きのめしただけの存在になると少し気まずくなる。悪いことをしたとは思わないが、今後は精霊達から避けられたり警戒される事は想像出来る。
まだ精霊達の匂いは感じるし、近くで見ていると事は分かる。残された警戒されない為の手段は、目の前にいるペガサス。
俺と契約しないでも、少しの間だけでも一緒に居てくれれば、この森の精霊達からの印象が変わるはず。
そして、ペガサスは俺達に警戒する素振りも見せずに、逆に近寄ってきて観察するように色々な角度から俺を見てくる。
「貴女は別の世界のヒト族?」
「ああ、そうだけど分かるのか?」
「何となくだけど分かる。翼がある変わったヒト族。貴女の隠している翼を見せて?」
俺はリズとリタの純白の翼を出す。ブレスレットの中で回復し力を取り戻し、一回りも大きくなった翼はペガサスの翼と比べても見劣りしない。
「それは精霊の翼。貴女の翼はそれじゃないはず」
間髪を入れず返してくる事で、ペガサスは俺がもう1つの翼が在ることを分かっている。
どうしようか悩みムーアの方を見ると、頷いて返してくる。
この森の中でハーピーロードの翼を見せれば、どうなるかは簡単に想像がつく。間違いなく、周りにいる精霊達は魔物の翼を感じ取り逃げてしまうだろう。近寄ってこないだけでなく、下手をすれば敵と見なされるかもしれない。
しかし俺の精霊達がそれでも構わないと判断するなら、俺はそれを信用して実行するだけ。
俺が翼をイメージすると、純白の翼の下に黒翼が現れる。それと共に、微かに感じていたこの森の精霊達の匂いが薄くなり消えてしまう。精霊達の反応は分かってはいたが、それでも少し凹んだ気持ちになるのは仕方がない。
「力強くて、真っ直ぐな翼。私は嫌いじゃない」
「この森の精霊達みたいに嫌われなくて良かったよ」
何とか気持ちを持ち直しペガサスに返事するが、翼を例えるにしては違和感がある表現が気になる。もしかすると、翼からハーピーロードの事が見えているのかもしれないと考えていたら、再びムーアがペガサスを勧誘し始める。
『どう、私達と一緒に来ない?退屈はしないと思うわよ』
「この世界は恐ろしい。それは魔物だけじゃなくて精霊も一緒。ただ、沢山の中に居れば少しは不安が無くなる。そうあって欲しいと思った」
ポツリポツリとペガサスが自身の事を語り出す。なぜ本当の姿を隠していたのか。ニコーン達に虐げられても一緒に居たのか。そして知性というより直感のような感覚で、見えない何かを感じ取っている。
「だけど、違う世界があるかもしれない。私を、あの人の世界に連れていってくれる?」
『そんな事でいいの。それなら決まりね!だけど、行くのは皆一緒になるわよ』
「ちょっと待ってくれ。俺は元の世界に弾かれてアシスに来た存在で、戻り方なんて知らないぞ」
『別にイイんじゃない。戻り方が分かったら連れていってあげればイイでしょ!私達も行ってみたいし♪』
「そんな詐欺みたいなやり方ダメだろ。戻れる可能性なんて無いに等しいだろ」
『知性を司る精霊を見くびっちゃダメよ。そんな事くらい分かって言ってる。それでも何かの可能性を感じているのよ。私の事が信用出来ないなら、直接聞いてみたら?』
そのペガサスは、ぶつぶつと何かを呟いている。
「ガーラ、ガーラかな?うん、ガーラがイイ!」
もしかして、それって名前を言ってるのか?気になってペガサスの顔を覗き込むが、真剣になっていて気付かない。
「その繰り返している言葉は、名前なのか?」
ペガサスは何を言ってるのといった顔をして、首をかしげる。どうなのかは分からないが、恐る恐ると声に出してみる。
「ガーラ」
その瞬間、ペガサスはブレスレットに吸い込まれる。
「ムーア、こんなので大丈夫なのか?」
『それは、どの話をしてるの?元の世界に行く話、それとも名付けの話?』
「両方だよ」
角が切り落とされたユニコーンも起き上がると同じく逃げ出すが、仲間達とは別方向へと逃げてしまった。それが、必死で逃げたからなのか、それとも角が無い事が影響しているのかは分からない。しかし、出来損ないのユニコーンの扱われ方を見ていると、これからの未来が大変である事は想像出来る。
俺達が森に入って、精霊を叩きのめしただけの存在になると少し気まずくなる。悪いことをしたとは思わないが、今後は精霊達から避けられたり警戒される事は想像出来る。
まだ精霊達の匂いは感じるし、近くで見ていると事は分かる。残された警戒されない為の手段は、目の前にいるペガサス。
俺と契約しないでも、少しの間だけでも一緒に居てくれれば、この森の精霊達からの印象が変わるはず。
そして、ペガサスは俺達に警戒する素振りも見せずに、逆に近寄ってきて観察するように色々な角度から俺を見てくる。
「貴女は別の世界のヒト族?」
「ああ、そうだけど分かるのか?」
「何となくだけど分かる。翼がある変わったヒト族。貴女の隠している翼を見せて?」
俺はリズとリタの純白の翼を出す。ブレスレットの中で回復し力を取り戻し、一回りも大きくなった翼はペガサスの翼と比べても見劣りしない。
「それは精霊の翼。貴女の翼はそれじゃないはず」
間髪を入れず返してくる事で、ペガサスは俺がもう1つの翼が在ることを分かっている。
どうしようか悩みムーアの方を見ると、頷いて返してくる。
この森の中でハーピーロードの翼を見せれば、どうなるかは簡単に想像がつく。間違いなく、周りにいる精霊達は魔物の翼を感じ取り逃げてしまうだろう。近寄ってこないだけでなく、下手をすれば敵と見なされるかもしれない。
しかし俺の精霊達がそれでも構わないと判断するなら、俺はそれを信用して実行するだけ。
俺が翼をイメージすると、純白の翼の下に黒翼が現れる。それと共に、微かに感じていたこの森の精霊達の匂いが薄くなり消えてしまう。精霊達の反応は分かってはいたが、それでも少し凹んだ気持ちになるのは仕方がない。
「力強くて、真っ直ぐな翼。私は嫌いじゃない」
「この森の精霊達みたいに嫌われなくて良かったよ」
何とか気持ちを持ち直しペガサスに返事するが、翼を例えるにしては違和感がある表現が気になる。もしかすると、翼からハーピーロードの事が見えているのかもしれないと考えていたら、再びムーアがペガサスを勧誘し始める。
『どう、私達と一緒に来ない?退屈はしないと思うわよ』
「この世界は恐ろしい。それは魔物だけじゃなくて精霊も一緒。ただ、沢山の中に居れば少しは不安が無くなる。そうあって欲しいと思った」
ポツリポツリとペガサスが自身の事を語り出す。なぜ本当の姿を隠していたのか。ニコーン達に虐げられても一緒に居たのか。そして知性というより直感のような感覚で、見えない何かを感じ取っている。
「だけど、違う世界があるかもしれない。私を、あの人の世界に連れていってくれる?」
『そんな事でいいの。それなら決まりね!だけど、行くのは皆一緒になるわよ』
「ちょっと待ってくれ。俺は元の世界に弾かれてアシスに来た存在で、戻り方なんて知らないぞ」
『別にイイんじゃない。戻り方が分かったら連れていってあげればイイでしょ!私達も行ってみたいし♪』
「そんな詐欺みたいなやり方ダメだろ。戻れる可能性なんて無いに等しいだろ」
『知性を司る精霊を見くびっちゃダメよ。そんな事くらい分かって言ってる。それでも何かの可能性を感じているのよ。私の事が信用出来ないなら、直接聞いてみたら?』
そのペガサスは、ぶつぶつと何かを呟いている。
「ガーラ、ガーラかな?うん、ガーラがイイ!」
もしかして、それって名前を言ってるのか?気になってペガサスの顔を覗き込むが、真剣になっていて気付かない。
「その繰り返している言葉は、名前なのか?」
ペガサスは何を言ってるのといった顔をして、首をかしげる。どうなのかは分からないが、恐る恐ると声に出してみる。
「ガーラ」
その瞬間、ペガサスはブレスレットに吸い込まれる。
「ムーア、こんなので大丈夫なのか?」
『それは、どの話をしてるの?元の世界に行く話、それとも名付けの話?』
「両方だよ」
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