94 / 329
フタガの石峰のハーピー
94.蟲人チェン
しおりを挟む
光る玉2個を、蟲人のチェンに渡す。まだ襲われたりする可能性がある為、どちらか1つでもイスイの街に届けば良い。
チェンは後ろの2人に1つずつ渡して何か指示を出している。そして、それぞれが違う方向へと飛び立ち、俺達と一緒にそれを見送る。
「これから、どうするんで?」
さもここに居ることが当たり前のように聞いてくるチェン。
「何故、ここに残ってるんだ?俺達とは関係ないだろ」
「だって迷い人のあんさんを巻き込んでおいて、当事者の蟲人族が何もしないなんて許されんでしょ!」
その言葉とは違い、顔はにやけ何かが起こることを期待している。
「ホーソンと一緒で、楽しそうと思ってないか?」
「そっ、そっ、そんな訳ないでさぁ。ホーソンが楽しそうにしてるなんて、まっ、まっ、全く気にしちゃいやせん!ぜっ、ぜっ、絶対に違いやす!」
ホーソンの顔を見ると、少し気まずそうにしている。この短い時間の中で、きっと今までの事やこれからの事をチェンに自慢していたに違いない。
「悪い奴ではないんで、今回は一緒に行動させてやってもらえませんか。腕は立ちますし、きっと役に立ちます」
「一応イスイの街の警護隊なんだろ。勝手に俺達と行動して大丈夫なのか?」
「戻っても除隊になるだけでさぁ」
そう言うと、2本の大鎌を見せる。ホーソンが渋い顔をして、俺に説明する。
「チェンの上官は、カマキリ族なんです」
その言葉をだけで何となく状況は掴めた。確かカマキリもトンボも肉食だったはず。どう戦うかで変わるかもしれないが、カマキリが捕食する事が多い。しかし、トンボ族のチェンが大鎌を持っているという事も、何となく察しがつく。
「トンボ族への当たりが強くて、少しやっちまいましてね。ちゃんとした決闘だったんですが、恐らくあっしの言葉は届きやせん」
「それでも除隊になってないだろ」
「あっしの任務は、岩峰のハーピーと戦えと命令されましてね。結果が出るまでは帰ってくるなって訳でさぁ」
「どうしろという方法までは、指示されていないという事か?」
「そういう事でさぁ。だから、あんさん達とご一緒させてもらっても問題はありあせん!」
「悪いがこっちの方法は最悪なんだ。自分を囮にしてハーピーを誘き寄せる事になるから、もっと酷い事になる。諦めた方がイイと思うぞ」
「それなら蟲人は適任じゃありやせんか!ハーピーの好物は蟲人ですぜ」
命懸けになっても、引き下がるつもりはないらしい。それにホーソンも頭を下げてくる。
精霊だけでなく、ソースイにホーソンと急激に仲間が増える。ここで一時的にでもチェンを仲間に入れると、上手く連携であったり統制が取れるかは自信がない
「ムーア、どう思う?」
『死んでも大丈夫って言ってるなら問題ないでしょ。私達の秘密は守ってもらうから、それなりの契約はさせてもらわ』
「チェン、そいう訳だ。一緒に行動するなら、契約してもらう。破った場合は、死ぬ方が楽だと思う事になるが、それでも契約するか」
「もちろんでさぁ!」
即答した事で、ムーアが契約を済ませる。内容とては、ソースイやホーソンと同じ内容の契約になる。
チェンの強さはハーピー達に囲まれて無傷でいた事で証明されているが、改めてトンボ族の身体能力の高さを知る。
飛行は羽や翅を持つものの中では、トップクラスの性能。ホバリングや後ろ方向に飛んだり、その名の通りトンボ返りしたりと自由に飛ぶ事が出来る。そして目の良さは、俺達の中では間違いなく1番。
ここまではトンボという事から想像はしていたが、驚きだったのが風と水の魔法が使え、得意なのは水魔法だという事。中級までの回復魔法が使える事が大きい。
チェンの能力を知ると前線で戦えと命令された事自体が、適切な評価や役割を与えられなかった事を肯定している。
「これから、どうするんで?」
チェンが笑顔で同じ質問を繰り返してくる。
「まず他のハーピーが岩峰地帯から出ていないかを調べる。出ていないなら、岩峰地帯に戻りハーピーと戦う。目的は、ハーピーをポップアップさせる結界を破壊する事と、ハーピーの上位種を潰す事かな」
「了解しやした」
話をしながらでも、周囲の小さな動きまでしっかりと見えているようで、そう言うとチェンはリッター達がいない方向へと飛び立って行く。
チェンは後ろの2人に1つずつ渡して何か指示を出している。そして、それぞれが違う方向へと飛び立ち、俺達と一緒にそれを見送る。
「これから、どうするんで?」
さもここに居ることが当たり前のように聞いてくるチェン。
「何故、ここに残ってるんだ?俺達とは関係ないだろ」
「だって迷い人のあんさんを巻き込んでおいて、当事者の蟲人族が何もしないなんて許されんでしょ!」
その言葉とは違い、顔はにやけ何かが起こることを期待している。
「ホーソンと一緒で、楽しそうと思ってないか?」
「そっ、そっ、そんな訳ないでさぁ。ホーソンが楽しそうにしてるなんて、まっ、まっ、全く気にしちゃいやせん!ぜっ、ぜっ、絶対に違いやす!」
ホーソンの顔を見ると、少し気まずそうにしている。この短い時間の中で、きっと今までの事やこれからの事をチェンに自慢していたに違いない。
「悪い奴ではないんで、今回は一緒に行動させてやってもらえませんか。腕は立ちますし、きっと役に立ちます」
「一応イスイの街の警護隊なんだろ。勝手に俺達と行動して大丈夫なのか?」
「戻っても除隊になるだけでさぁ」
そう言うと、2本の大鎌を見せる。ホーソンが渋い顔をして、俺に説明する。
「チェンの上官は、カマキリ族なんです」
その言葉をだけで何となく状況は掴めた。確かカマキリもトンボも肉食だったはず。どう戦うかで変わるかもしれないが、カマキリが捕食する事が多い。しかし、トンボ族のチェンが大鎌を持っているという事も、何となく察しがつく。
「トンボ族への当たりが強くて、少しやっちまいましてね。ちゃんとした決闘だったんですが、恐らくあっしの言葉は届きやせん」
「それでも除隊になってないだろ」
「あっしの任務は、岩峰のハーピーと戦えと命令されましてね。結果が出るまでは帰ってくるなって訳でさぁ」
「どうしろという方法までは、指示されていないという事か?」
「そういう事でさぁ。だから、あんさん達とご一緒させてもらっても問題はありあせん!」
「悪いがこっちの方法は最悪なんだ。自分を囮にしてハーピーを誘き寄せる事になるから、もっと酷い事になる。諦めた方がイイと思うぞ」
「それなら蟲人は適任じゃありやせんか!ハーピーの好物は蟲人ですぜ」
命懸けになっても、引き下がるつもりはないらしい。それにホーソンも頭を下げてくる。
精霊だけでなく、ソースイにホーソンと急激に仲間が増える。ここで一時的にでもチェンを仲間に入れると、上手く連携であったり統制が取れるかは自信がない
「ムーア、どう思う?」
『死んでも大丈夫って言ってるなら問題ないでしょ。私達の秘密は守ってもらうから、それなりの契約はさせてもらわ』
「チェン、そいう訳だ。一緒に行動するなら、契約してもらう。破った場合は、死ぬ方が楽だと思う事になるが、それでも契約するか」
「もちろんでさぁ!」
即答した事で、ムーアが契約を済ませる。内容とては、ソースイやホーソンと同じ内容の契約になる。
チェンの強さはハーピー達に囲まれて無傷でいた事で証明されているが、改めてトンボ族の身体能力の高さを知る。
飛行は羽や翅を持つものの中では、トップクラスの性能。ホバリングや後ろ方向に飛んだり、その名の通りトンボ返りしたりと自由に飛ぶ事が出来る。そして目の良さは、俺達の中では間違いなく1番。
ここまではトンボという事から想像はしていたが、驚きだったのが風と水の魔法が使え、得意なのは水魔法だという事。中級までの回復魔法が使える事が大きい。
チェンの能力を知ると前線で戦えと命令された事自体が、適切な評価や役割を与えられなかった事を肯定している。
「これから、どうするんで?」
チェンが笑顔で同じ質問を繰り返してくる。
「まず他のハーピーが岩峰地帯から出ていないかを調べる。出ていないなら、岩峰地帯に戻りハーピーと戦う。目的は、ハーピーをポップアップさせる結界を破壊する事と、ハーピーの上位種を潰す事かな」
「了解しやした」
話をしながらでも、周囲の小さな動きまでしっかりと見えているようで、そう言うとチェンはリッター達がいない方向へと飛び立って行く。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!
クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』
自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。
最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした
犬型大
ファンタジー
世界が滅びるその時に聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声だった。
人類は敗北した。
99個のゲートをクリアせよという不思議な声と共に平和だった世界はモンスターが現れる危険なものへと変わってしまった。
覚醒者と呼ばれるモンスターと戦う力を持った者が必死に戦ったけれど人類は邪竜の前に滅ぼされてしまったのである。
たった一人を除いて。
愛染寅成(アイゼントモナリ)は人類最後の一人となった。
けれどトモナリもモンスターの攻撃によって下半身が消し飛んでいて、魔道具の効果でわずかな時間生きながらえているに過ぎなかった。
そんな時に新たなスキルが覚醒した。
戦いに使えないし、下半身が消し飛んだ状況をどうにかすることもできないようなスキルだった。
けれどスキルのおかげで不思議な声を聞いた。
人類が滅びたことを嘆くような声。
この世界に存在しているのはトモナリと邪竜だけ。
声の主人は邪竜だった。
邪竜は意外と悪いやつじゃなかった。
トモナリは嘆くような邪竜の声に気まぐれに邪竜に返事した。
気まぐれによって生まれた不思議な交流によってトモナリと邪竜は友達となった。
トモナリは邪竜にヒカリという名前を授けて短い会話を交わした。
けれども邪竜と友達になった直後にトモナリは魔道具の効果が切れて死んでしまう。
死んだのだ。
そう思ってトモナリが目を覚ましたらなんと信じられないことに中学校の時の自分に戻っていた。
側には見覚えのない黒い卵。
友といたい。
そんな邪竜の願いがトモナリを過去へと戻した。
次こそ人類を救えるかもしれない。
やり直す機会を与えられたトモナリは立ち上がる。
卵から生まれた元邪竜のヒカリと共に世界を救う。
「ヒカリと一緒なら」
「トモナリと一緒なら」
「「きっと世界は救える」」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる