精霊のジレンマ

さんが

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フタガの石峰のハーピー

94.蟲人チェン

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光る玉2個を、蟲人のチェンに渡す。まだ襲われたりする可能性がある為、どちらか1つでもイスイの街に届けば良い。
チェンは後ろの2人に1つずつ渡して何か指示を出している。そして、それぞれが違う方向へと飛び立ち、俺達と一緒にそれを見送る。

「これから、どうするんで?」

さもここに居ることが当たり前のように聞いてくるチェン。

「何故、ここに残ってるんだ?俺達とは関係ないだろ」

「だって迷い人のあんさんを巻き込んでおいて、当事者の蟲人族が何もしないなんて許されんでしょ!」

その言葉とは違い、顔はにやけ何かが起こることを期待している。

「ホーソンと一緒で、楽しそうと思ってないか?」

「そっ、そっ、そんな訳ないでさぁ。ホーソンが楽しそうにしてるなんて、まっ、まっ、全く気にしちゃいやせん!ぜっ、ぜっ、絶対に違いやす!」

ホーソンの顔を見ると、少し気まずそうにしている。この短い時間の中で、きっと今までの事やこれからの事をチェンに自慢していたに違いない。

「悪い奴ではないんで、今回は一緒に行動させてやってもらえませんか。腕は立ちますし、きっと役に立ちます」

「一応イスイの街の警護隊なんだろ。勝手に俺達と行動して大丈夫なのか?」

「戻っても除隊になるだけでさぁ」

そう言うと、2本の大鎌を見せる。ホーソンが渋い顔をして、俺に説明する。

「チェンの上官は、カマキリ族なんです」

その言葉をだけで何となく状況は掴めた。確かカマキリもトンボも肉食だったはず。どう戦うかで変わるかもしれないが、カマキリが捕食する事が多い。しかし、トンボ族のチェンが大鎌を持っているという事も、何となく察しがつく。

「トンボ族への当たりが強くて、少しやっちまいましてね。ちゃんとした決闘だったんですが、恐らくあっしの言葉は届きやせん」

「それでも除隊になってないだろ」

「あっしの任務は、岩峰のハーピーと戦えと命令されましてね。結果が出るまでは帰ってくるなって訳でさぁ」

「どうしろという方法までは、指示されていないという事か?」

「そういう事でさぁ。だから、あんさん達とご一緒させてもらっても問題はありあせん!」

「悪いがこっちの方法は最悪なんだ。自分を囮にしてハーピーを誘き寄せる事になるから、もっと酷い事になる。諦めた方がイイと思うぞ」

「それなら蟲人は適任じゃありやせんか!ハーピーの好物は蟲人ですぜ」

命懸けになっても、引き下がるつもりはないらしい。それにホーソンも頭を下げてくる。
精霊だけでなく、ソースイにホーソンと急激に仲間が増える。ここで一時的にでもチェンを仲間に入れると、上手く連携であったり統制が取れるかは自信がない

「ムーア、どう思う?」

『死んでも大丈夫って言ってるなら問題ないでしょ。私達の秘密は守ってもらうから、それなりの契約はさせてもらわ』

「チェン、そいう訳だ。一緒に行動するなら、契約してもらう。破った場合は、死ぬ方が楽だと思う事になるが、それでも契約するか」

「もちろんでさぁ!」

即答した事で、ムーアが契約を済ませる。内容とては、ソースイやホーソンと同じ内容の契約になる。

チェンの強さはハーピー達に囲まれて無傷でいた事で証明されているが、改めてトンボ族の身体能力の高さを知る。
飛行は羽や翅を持つものの中では、トップクラスの性能。ホバリングや後ろ方向に飛んだり、その名の通りトンボ返りしたりと自由に飛ぶ事が出来る。そして目の良さは、俺達の中では間違いなく1番。
ここまではトンボという事から想像はしていたが、驚きだったのが風と水の魔法が使え、得意なのは水魔法だという事。中級までの回復魔法が使える事が大きい。

チェンの能力を知ると前線で戦えと命令された事自体が、適切な評価や役割を与えられなかった事を肯定している。

「これから、どうするんで?」

チェンが笑顔で同じ質問を繰り返してくる。

「まず他のハーピーが岩峰地帯から出ていないかを調べる。出ていないなら、岩峰地帯に戻りハーピーと戦う。目的は、ハーピーをポップアップさせる結界を破壊する事と、ハーピーの上位種を潰す事かな」

「了解しやした」

話をしながらでも、周囲の小さな動きまでしっかりと見えているようで、そう言うとチェンはリッター達がいない方向へと飛び立って行く。
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