86 / 329
フタガの石峰のハーピー
86.霧の精霊
しおりを挟む
フタガの岩峰、そこは幾つかの隆起した岩がそそり立つ地帯。特に大きく隆起した岩峰が2つあり、1つの頂上はハーピーが棲みかとしている。もう1つは、霧が立ち込め頂上がどうなっているかは窺い知れない。
コボルトの鉱山とは違うのは、草木などは生えていない。険しい崖だけではなく、石屑が積み重なったガレ場や、小石や砂をまいたようなザレ場などを避けるように、狭い街道が通っている。
タカオとイスイを繋ぐ街道はこの1本しかない。この街道の役割りは、タカオを街の武器や防具を運ぶ事にある。しかし狭い街道と険しい道のり為に、大量の輸送は難しい。
さらには、この街道の一部がハーピーの行動範囲に入ってしまう為に、市場に出回るタカオ産の武器や防具の流通量は少なく高価のものになってしまう。
どうしてもタカオ産の武器や防具を手に入れたい者は、この狭く険しい街道を通ってタカオの街を目指す。
ハーピーの襲撃にも怯まずに、この街道を抜けれた者はタカオ産の武器や防具を身に付ける資格があり、そしてこれがステータスとなる。
そして俺達がイスイの街へ向かうという事は、この街道を通りフタガの岩峰のハーピーに近付く事になる。
少し機嫌が良さそうなムーア。やはり様々な種族が暮らす街の中より、単独で行動をしている方が好きみたいだ。
「機嫌が良さそうだな」
『そうね、ハーピーの襲撃はあるのかしら?』
「機嫌がイイのは、そっちの理由か」
『だってトラブルがある所には、精霊がいるでしょ!』
「それって、あまり良い話ではないだろ」
『だって今までがそうなんだから仕方がないでしょ。トラブルが私達を強くするのよ♪』
そして、今のハーピーは好戦的で近くを通れば戦いになる可能性は高い。
「新しい知識や技術は、私の中の常識を覆します。これは私にとって大きな転換期になります」
トラブル万歳体質な仲間が増えてゆく事に少し頭が痛くなる。
「残念だけど、ハーピーが狙うのがイスイ側なら、すぐに襲われる可能性は少ないと思うけどな」
『ええ、そうね。だけど、すれ違う旅人がいないわね』
「そうですね、タカオの街に誰も来ないのは異常ですね」
明らかな異常を感じとり、少し興奮気味のムーアとホーソン、いや密かに闘志を燃やすソースイもいる。
フタガの岩峰がはっきりと見え、道に岩が転がり始め岩峰地帯に入ってくる。
フタガの岩峰を象徴する、2つの巨大な岩峰。霧に覆われた岩峰の足元を街道は抜ける。頂上から霧が流れ落ちてくる不思議な光景。そして所々に霧が溜まる事で、旅人がハーピーから隠れる場所を作ってくれる。
霧の中に入った瞬間にクオンが異変に気付く。
“声が聞こえる”
もちろんクオンだから気付ける声で、俺達には分からない声になる。
「どこから聞こえる?」
“多分、上の方”
上と言われれば、岩峰を登るしかない。今の俺は、リズとリタの翼で簡単に頂上まで行く事は出来る。
『確かめましょう♪』
「そう言うと思ったよ。今回は目立つとハーピーに見つかるから、ソースイとホーソンは留守番だけどな!」
悲しそうな目をする2人だが、時間に余裕は無い。これ以上は相手していると、本当の異変に対応出来なくなる。
ハーピーの棲む岩峰の死角になる位置まで移動して、純白の翼で一気に頂上を目指す。
そして頂上行く程に、もっと深い霧が立ち込めている。クオンと俺の探知がなければ、先に進む事は出来ない。
そして探知スキルで頂上に到達した事を確認した瞬間、立ち込めていた霧が割れる。
「何っ?」
しかし、探知スキルでは何も感じ取る事は出来ない。
目の前の霧が晴れ、開けた空間に再び白いモヤがかかる。白いモヤは次第に1ヵ所へ集まり、濃くなってゆく。そして徐々にヒトのような形となり、頭や手足がハッキリと見え出す。
最初はヒト型となり、そこから耳が尖りエルフ型、次は耳や尻尾が生え獣人型と、次々と姿形を変える。
『挨拶なら許してあげるけど、ウチのカショウを勝手に誘惑しないでくれるかしら?』
白いモヤは最終的には、エルフの形で落ち着く。
「好みの形になった方が助けてくれる可能性が高くなるでしょ」
「もしかして、精霊なのか?」
「はじめまして。私は霧の精霊よ。私を助けてくれれば、あなたの理想の形になってあげるわ」
そう言うと、頭にケモミミが出てくる。
「どうかしら、ケモミミエルフよ♪」
コボルトの鉱山とは違うのは、草木などは生えていない。険しい崖だけではなく、石屑が積み重なったガレ場や、小石や砂をまいたようなザレ場などを避けるように、狭い街道が通っている。
タカオとイスイを繋ぐ街道はこの1本しかない。この街道の役割りは、タカオを街の武器や防具を運ぶ事にある。しかし狭い街道と険しい道のり為に、大量の輸送は難しい。
さらには、この街道の一部がハーピーの行動範囲に入ってしまう為に、市場に出回るタカオ産の武器や防具の流通量は少なく高価のものになってしまう。
どうしてもタカオ産の武器や防具を手に入れたい者は、この狭く険しい街道を通ってタカオの街を目指す。
ハーピーの襲撃にも怯まずに、この街道を抜けれた者はタカオ産の武器や防具を身に付ける資格があり、そしてこれがステータスとなる。
そして俺達がイスイの街へ向かうという事は、この街道を通りフタガの岩峰のハーピーに近付く事になる。
少し機嫌が良さそうなムーア。やはり様々な種族が暮らす街の中より、単独で行動をしている方が好きみたいだ。
「機嫌が良さそうだな」
『そうね、ハーピーの襲撃はあるのかしら?』
「機嫌がイイのは、そっちの理由か」
『だってトラブルがある所には、精霊がいるでしょ!』
「それって、あまり良い話ではないだろ」
『だって今までがそうなんだから仕方がないでしょ。トラブルが私達を強くするのよ♪』
そして、今のハーピーは好戦的で近くを通れば戦いになる可能性は高い。
「新しい知識や技術は、私の中の常識を覆します。これは私にとって大きな転換期になります」
トラブル万歳体質な仲間が増えてゆく事に少し頭が痛くなる。
「残念だけど、ハーピーが狙うのがイスイ側なら、すぐに襲われる可能性は少ないと思うけどな」
『ええ、そうね。だけど、すれ違う旅人がいないわね』
「そうですね、タカオの街に誰も来ないのは異常ですね」
明らかな異常を感じとり、少し興奮気味のムーアとホーソン、いや密かに闘志を燃やすソースイもいる。
フタガの岩峰がはっきりと見え、道に岩が転がり始め岩峰地帯に入ってくる。
フタガの岩峰を象徴する、2つの巨大な岩峰。霧に覆われた岩峰の足元を街道は抜ける。頂上から霧が流れ落ちてくる不思議な光景。そして所々に霧が溜まる事で、旅人がハーピーから隠れる場所を作ってくれる。
霧の中に入った瞬間にクオンが異変に気付く。
“声が聞こえる”
もちろんクオンだから気付ける声で、俺達には分からない声になる。
「どこから聞こえる?」
“多分、上の方”
上と言われれば、岩峰を登るしかない。今の俺は、リズとリタの翼で簡単に頂上まで行く事は出来る。
『確かめましょう♪』
「そう言うと思ったよ。今回は目立つとハーピーに見つかるから、ソースイとホーソンは留守番だけどな!」
悲しそうな目をする2人だが、時間に余裕は無い。これ以上は相手していると、本当の異変に対応出来なくなる。
ハーピーの棲む岩峰の死角になる位置まで移動して、純白の翼で一気に頂上を目指す。
そして頂上行く程に、もっと深い霧が立ち込めている。クオンと俺の探知がなければ、先に進む事は出来ない。
そして探知スキルで頂上に到達した事を確認した瞬間、立ち込めていた霧が割れる。
「何っ?」
しかし、探知スキルでは何も感じ取る事は出来ない。
目の前の霧が晴れ、開けた空間に再び白いモヤがかかる。白いモヤは次第に1ヵ所へ集まり、濃くなってゆく。そして徐々にヒトのような形となり、頭や手足がハッキリと見え出す。
最初はヒト型となり、そこから耳が尖りエルフ型、次は耳や尻尾が生え獣人型と、次々と姿形を変える。
『挨拶なら許してあげるけど、ウチのカショウを勝手に誘惑しないでくれるかしら?』
白いモヤは最終的には、エルフの形で落ち着く。
「好みの形になった方が助けてくれる可能性が高くなるでしょ」
「もしかして、精霊なのか?」
「はじめまして。私は霧の精霊よ。私を助けてくれれば、あなたの理想の形になってあげるわ」
そう言うと、頭にケモミミが出てくる。
「どうかしら、ケモミミエルフよ♪」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
★★★★★★六つ星ユニークスキル【ダウジング】は伝説級~雑魚だと追放されたので、もふもふ白虎と自由気ままなスローライフ~
いぬがみとうま
ファンタジー
■あらすじ
主人公ライカは、この国始まって以来、史上初の六つ星ユニークスキル『ダウジング』を授かる。しかし、使い方がわからずに、西の地を治める大貴族である、ホワイトス公爵家を追放されてしまう。
森で魔獣に襲われている猫を助けた主人公。実は、この猫はこの地を守護する伝説の四聖獣『白虎』であった。
この白虎にダウジングの使い方を教わり、自由気ままなスローライフを求めてる。しかし、待ち構えていたのは、度重なり降りかかる災難。それは、ライカがダウジングで無双していく日々の始まりであった。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
異世界転移したら……。~色々あって、エルフに転生してしまった~
伊織愁
恋愛
前世で勇者召喚に巻き込まれ、友人たち共に異世界転移を果たした小鳥遊優斗。 友人たちと従魔と力を合わせ、魔王候補を倒し、魔王の覚醒を防いだ。 寿命を全うし、人生を終えた優斗だったが、前世で知らずに転生の薬を飲まされていて、エルフとして転生してしまった。 再び、主さまに呼ばれ、優斗の新たな人生が始まる。
『【改訂版】異世界転移したら……。』『【本編完結】異世界転移したら……。~瑠衣はこういう奴である~』を宜しければ、参照してくださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる