精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
上 下
73 / 329
タカオの街のドワーフ

73.最奥での戦い③

しおりを挟む
「ライトニング・メテオ」

オルキャンの発した魔法に驚き身構えるが、その時は既に閃光に包まれている。

眩しい・・・しかない。他に何も変わらない。ここが既に天国というわけでもない。
これが、ライトニング・メテオになるのか?光の流星による広範囲の攻撃魔法で、光属性でも上位魔法になるはず。

「なぜ効かないのだ、お前達は何者だ!」

オルキャンの髪の毛が逆立ち、目が見開かれ、額の魔石が輝き始める。

「ライトニング・メテオ」

もう1度オルキャンが呪文を唱えるが、やはり前と結果は同じ。効果音を付けるなら、“パシャリ”。カメラのフラッシュ程度の光が出ただけ。

「ギョオオオオッッッーーー!」

咆哮ではなく叫び声なのか?オルキャンの顔が歪み、苦しみ始める。

ライトニング・メテオには少し拍子抜けしたが、この変化に危険を感じる。

俺が合図を送ると同時に、ウィプス達がサンダーボルトをオルキャンの顔面に向けて放つ。

オルキャンの顔面が弾け、後方に吹き飛ぶ。神剣はオルキャンから解放され、オルキャンから逃げるかのようにと更に後方へ落ちる。

吹き飛ばされたオルキャンは、顔面の火傷やキズよりも神剣が無いことに慌てふためいている。
サンダーボルトが直撃した事で、目が見えているかどうかも分からないが、顔の火傷やキズの痛みも気にせずに手探りで音のした方向に這いつくばっていく。

俺達に背を向ける事に何の迷いも感じられない。そしてオルキャンの背中に見えるのは・・・。
羽織った金色のマントには、オルキャンの顔がでかでかと刺繍されている。

『精神的ダメージの方が大きいわ』

「キット、コレガ狙イヨ!」

ムーアとブロッサの追撃を止めたから、確かにマントの効果はあった事になるが、それには付き合わない。

「ファイヤーボール」

オルキャンの背中が燃え上がる。それにも気付かないのかオルキャンの動きは止まらない。意地で神剣まで辿り着くと、再び神剣を手にする。
そして振り向いたその顔は、オルキャンの面影はどこにもない。皮膚が崩れ落ちコボルトのような顔付きになり、魔石の輝きが増している。

「我はコボルトの王、魔石を壊してくれ」

「余はオルキャン、この世界を支配する者」

「コボルトに安寧を!」

「余はオルキャン、この世界の全てを手に入れる者」

オルキャンと、別人格が交互に現れる。
コボルトの王は本物なのか?上位種は存在したという事なのか?

「余、オルギャ、世界、シハ、モノ」

額の魔石の魔力がオルキャンに流れだす。所々で身体が魔力に耐えきれずに弾ける。瞳が紅く輝き、あまりの異様さに思わず後退りしてしまう。

「ムーア、完全に人格が壊れてる。このまま放っておいても自滅するんじゃないか?」

『オルキャンが暴走すると不味いわ。大部屋を崩落させようしたのが魔法によるものだったら・・・』

「どうなる?」

『ここは崩落するわ!』

「それは、早く言ってくれっ!」

キングクラスの魔石なら、破壊するには俺のをマジックソードしかない。ローブに魔力が流れ、純白の翼が現れる。ウィプス達は、サンダーボルトで先制攻撃をかける。

ゴブリンキングの時と違うのは、マジックソードの1本はダークが操る事。どちらかが魔石を捉えれば問題ない。

純白の翼が俺を加速させ、オルキャンは“神剣”という名の鋼鉄の光る剣を構える。

ダークのマジックソードが先に動き、オルキャンの神剣が襲いかかってくる。ダークの技量があっても、ほぼ重量の無いマジックソードではオルキャンの鋼鉄の剣を受け止めるのは難しい。

「ミスト」

ダークが俺のをマジックソードを霧状に分解する。俺のリーフでは霧状にする事は不可能。これは単に俺のスキル不足ではなく、ヴァンパイアの特性と複合した結果になる。

ミスト化したマジックソードは、オルキャンの振るう鋼鉄の剣に目掛けてぶつかっていく。

1つのミストが刃先にぶつかり破壊される度に、刃先に衝撃が走る。1つ1つは小さな衝撃であるが、非常に小さな面積にピンポイントでの衝撃。
鋼鉄の剣には、見えない程度の凹みや穴が開き、それが次第に大きくなっていく。

オルキャンが鋼鉄の剣を振り切る前に、剣は半ばで折れてしまう。

そして隙の出来たオルキャンの額の魔石に目掛けて、俺の持つマジックソードを付き出す。

ゴブリンキングの時と同じ、パリンという魔石が割れる軽い感触が伝わってくる。そして、オルキャンの身体が消滅を始める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蟻喜多利奈のありきたりな日常

あさまる
ライト文芸
※予約投稿にて最終話まで投稿済です。 ※この作品には女性同士の恋愛描写(GL、百合描写)が含まれます。 苦手な方はご遠慮下さい。 この物語は、自称平凡な女子高生蟻喜多利奈の日常の風景を切り取ったものです。 ※この話はフィクションであり、実在する団体や人物等とは一切関係ありません。 誤字脱字等ありましたら、お手数かと存じますが、近況ボードの『誤字脱字等について』のページに記載して頂けると幸いです。

欲しいものはガチャで引け!~異世界召喚されましたが自由に生きます~

シリウス
ファンタジー
身体能力、頭脳はかなりのものであり、顔も中の上くらい。負け組とは言えなそうな生徒、藤田陸斗には一つのマイナス点があった。それは運であった。その不運さ故に彼は苦しい生活を強いられていた。そんなある日、彼はクラスごと異世界転移された。しかし、彼はステ振りで幸運に全てを振ったためその他のステータスはクラスで最弱となってしまった。 しかし、そのステ振りこそが彼が持っていたスキルを最大限生かすことになったのだった。(軽い復讐要素、内政チートあります。そういうのが嫌いなお方にはお勧めしません)初作品なので更新はかなり不定期になってしまうかもしれませんがよろしくお願いします。

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

キスから始まる主従契約

毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。 ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。 しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。 ◯ それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。 (全48話・毎日12時に更新)

処理中です...