精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
上 下
22 / 329
ヒケンの森のオニ族

22.ネコ型とヒト型

しおりを挟む
私の名前はクオン。
ご主人様が付けてくれ名前を私はとても気に入っている。

ご主人様は変わった人。
面倒臭い事は嫌いだと言いながら、常に何か面倒臭い事を考えて悩んでる。そして、ちょっと理屈っぽい所がある。
トラブルは嫌だと言いながら、自らが飛び込んでしまう変な体質。
ちょっと心配しちゃうの。

だから今日はヒト型になってる。もちろん自慢のネコ耳は残ったままよ。
なぜヒト型になっているかというと、ヒト型の方が話しやすいからよ。ネコ型は、話しにくいの。

最近、私以外にも精霊のお友達が増えたの。
ルークにメーンにカンテ、ムーア、ブロッサ。こんなに沢山のお友達が出来たのは初めて。
ちょっと嬉しいけど、私はカショウの一番目の精霊。お姉さんとて、しっかりしないといけないのよ!

ご主人様には眠ってもらったの。幾ら精霊化しても、人の体に疲れが溜まると思考能力が落ちるって話したら、珍しく言うことを聞いてくれた。

だから、今日は皆でお話するチャンスなの。皆を私のお家に呼ぶの!


カショウが眠りにつくと、クオンは皆を影に引き込む。

『ここはどこ、その声はクオン?』

ムーアが初めて見るクオンの姿に驚く。

精霊は、姿形を変える事が出来る。
動物型はの場合は、身体能力が優れている。クオンの探知は影属性のスキルではなく、ネコ型の影響。
人型になった場合は、手足が自由に使えたり、思考能力が高くなる。その反面、身体能力は低くなる。

「そうよ、ここはご主人様の影の中で、私のお家よ」

ニ十畳くらいの広さで、テーブルとソファー、デスクにクローゼットが備え付けられている。

「みんな好きな所に座って」

『影の中は、こんな快適な空間になってるのね、驚いたわ』

「こんな空間は私も初めて。影の中なのに、ポカポカして暖かいの。いつもは暗くて寒いの」

『ここの部屋に私の物って置けるの?』

「大きくなければ何でも置けるし、私がいれば自由に出し入れできるわ」

『それって、アイテムボックスって事よ!凄い事よ』

「カショウが強くなれば、もっとお部屋広くなる」

『私も何か置かせてもらってもイイ?』

「お友達だもの、イイよ」

話をしていると、部屋の奥から音がする。ガシャンと音がして、何かが崩れる音がする。

『あれは何?』

そこにはクオンには似合わない、大きな槍とプレートアーマー。
2メートルくらいの大男やオニ族でなければ、身に付ける事が出来なさそうな大きさ。

「さっきのゴブリンの群れの中に居たの。カショウに、大きな槍を投げようとしていたから、やっつけたの」

『クオンがやっつけたの?』

「うん、私がやっつけたの」

『どうやって・・・やっつけたの?』

ムーア達の前から、クオンが消える。
いつの間にか、ムーアの後ろに立っているクオン。

ムーアの首筋に、クオンが手を当てる。

「こうやって」

ムーアは固まって動けない。目だけがクオンを捉えようと動く。

「すぐ首ちょんぱするから、手加減が難しいの」

『クオン、首ちょんぱって、何かしら?』

「首が、ぽーんって飛んでくの」

『クオン、真似でもあんまりやっちゃダメよ』

「うん、私はヒト型は嫌い。それに探知専門だから、やらないの。ちゃんとカショウの命令を守るの!」

後ろにいたクオンが消えたかと思ったら、元の場所に戻っている。

精霊には出ないはずの、冷や汗が流れる。
ネコ型のクオンが人型になると、身体能力が上がり、思考能力が落ちてしまうみたい。完全の逆パターンで、今までに見たことがない。
もしかして、ぼっちだった理由は・・・。

不安を振り払って、ムーアが話す。

『ゴブリンジェネラルを倒したのは、凄いわよ。クオンのお手柄ね!だけど、もっと早く教えてくれないとダメよ』

「大したことはしてない」

『だけどゴブリンが追撃出来なかったのも、クオンがジェネラルを倒したからよ。今なら安全にオニ族の村に戻れるわ!』

「わかった、次からは教える」

影からすぐに出て、ムーアが眠っていたカショウを起こす。
ゴブリンジェネラルの話をすると、すぐにオニ族の村への出発準備が始まる。


皆とお話したかったのに残念。せっかく眠れたのに起こしてしまったから、カショウは怒るかな。だけどカショウは優しいから、褒めてくれるかもしれない。
私はカショウの一番精霊。もっと頑張るの!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...