精霊のジレンマ

さんが

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ヒケンの森のオニ族

17.それぞれの思惑と覚悟

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「ヨロシクオネガイ・・・デ・・・ス」

『誰が性悪女なわけ!恩を仇で返すつもり?』

ムーアがブロッサの頭の皮を掴み、体を持ち上げる。ブロッサの足がバタバタと動く。

「カショウト契約。性悪女トハシテナイ」

「時間が勿体ない。ソーギョクの所へ戻るぞ!」

ムーアとブロッサの漫才を止める。行きと違い戻りは、湖岸の草むらに沿って戻る為、移動は早い。

クオンが俺を先導し、ルークが先行して偵察、メーンは上空からの監視、カンテは情報の中継。そして、お決まりの俺は無属性魔法の訓練。

左手は2枚のマジックシールドを操って足場をつくり、そこを歩いている。

右手はマジックソードを操る。今回の件で、マジックソードで切り裂いたり打撃を与える事は諦めた。どうしても重量が無いと難しいし、扱える技能も無い。
今はマジックシールドと同様で、体から離し宙に浮かせた状態で制御し、刺突の攻撃に切り替えた。
ライが物質化魔法は、髪の毛と一緒と思えば気にならないと言っていたが、何となく無意識で扱えるようにはなってきている。まだ手や指を動かして操作を意識する必要はある。

これが移動中の基本パターンとなっている。
ムーアとブロッサは、中に入って出てこない。

ブロッサは召還しないと出てこないが、蛙のブロッサは移動に関しては不向き。常時召還して、魔力を消費するのが一番だけど今は足を引っ張ってしまう。

ムーアに関しては性格的な問題で面倒くさいからだろう。
パーティーバランスも関係してくるが、これからの役割分担は落ち着いてから考えようと思う。
仕事の集中や不満といったものは、精霊でもあるのだろうか?

色々と考えてい内に、オニ族の野営地が近付いてくる。ファイヤーボールの合図は伝わってくれたようで、斥候に出ていたソーイが迎えに来る。
というより、俺を待っていたのかもしれない。

「カショウ殿、ご無事で何よりです。ソーギョク様がお待ちですので」

「湖の東にゴブリンが居る。何かは変化はないか?」

「哨戒に出ていますが、今のところ変化はありません」

大まかな確認をしながら、ソーギョクのテントに向かう。
ソーギョクのテントからは、ソーキの大きい声が響いてくる。

「お見苦しいところをお見せしますが、申し訳ありません」

「どこの世界でも1人は居るんだな。ソーイが謝っても、どうにもならないだろ」

苦笑いしながらのテント中に入る。

「カショウ様をお連れしました」

「ムーアを呼んだ方が良いかな?」

「わ、わ、儂は失礼する」

逃げるように去っていくソーキ。

「いらない気を遣わせたな。感謝する」

テントの中に居たのは、ソーギョク、ソーショウ、側近2人の4人。
ソーサは東側の哨戒で、ソーイは西側の哨戒の役割。
一応ルーク達はテントの外で哨戒。クオンの事は企業秘密にする。

そこに俺とムーアが加わるが、ムーアが先に話し出す。

『先に言っておくけど私はこれ以上、オニ族には関わらないわよ。私とオニ族は支配する関係ではないし、今は契約主はカショウ。情報は教えてあげるけど、あくまでも判断は自分達でしてね!』

「それで大丈夫なのか?」

『ええ、私の契約主はあなたよ。あなたの不益になる事はしないし出来ない。益になると思う事は言わせてもらうけどね!』

「それで構わない。毒の原因は解決してもらったなら、やりようはある」

「なんだ、もう話は付いてたのか?」

「毒の問題を解決しなければ、オニ族の村の結界は弱まり、近い内に破られてしまう。私が出る予定だったが、運良くカショウ殿に出会う事が出来た」

『私の目的はブロッサを助けたかっただけよ。私には戦うスキルは無いわ。それだけよ』

クオンが急を告げてくる。

“ゴブリン達が来てる、100は居る”

「時間切れみたいだな。ゴブリン達が来るぞ。100体は居るけど、想定内かな?」

「多いな、正直に言うと想定外の数。ゴブリン相手でも、3倍の数は難しい。今は逃げの一手で、東の森に逃げ込む」

「ソーギョク様、東の森はトラの縄張り。踏み込めば、ただでは帰れません。全滅の可能性もあります」

「それはゴブリンも同じ。西に下がれば、包囲されるだけ。下がってはならん」

「それではカショウ殿にお力添えいただけないでしょうか?探知のスキルは、我らとは比較になりません!」

「それはならん、今回は分が悪い。一旦進めば戻る道はない。巻き込んではならん!」

「俺の目の前で勝手に話するのは止めてもらえるかな。こっちはこっちの都合があるんでな!」

ソーギョクとソーショウに釘を刺し、ムーアを見る。若干、ムーアの表情が固くなる。

「ムーア、俺は西にから来たけど精霊には出会わなかった。北の湖西に向かったけど同じ。次はどこに向かったら精霊に出会う可能性がある?」

『東には行った事がないから、可能性はあるのかしら・・・』

「じゃあ、決まりだ。時間が勿体ない、直ぐに出るぞ!」
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