精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
上 下
17 / 329
ヒケンの森のオニ族

17.それぞれの思惑と覚悟

しおりを挟む
「ヨロシクオネガイ・・・デ・・・ス」

『誰が性悪女なわけ!恩を仇で返すつもり?』

ムーアがブロッサの頭の皮を掴み、体を持ち上げる。ブロッサの足がバタバタと動く。

「カショウト契約。性悪女トハシテナイ」

「時間が勿体ない。ソーギョクの所へ戻るぞ!」

ムーアとブロッサの漫才を止める。行きと違い戻りは、湖岸の草むらに沿って戻る為、移動は早い。

クオンが俺を先導し、ルークが先行して偵察、メーンは上空からの監視、カンテは情報の中継。そして、お決まりの俺は無属性魔法の訓練。

左手は2枚のマジックシールドを操って足場をつくり、そこを歩いている。

右手はマジックソードを操る。今回の件で、マジックソードで切り裂いたり打撃を与える事は諦めた。どうしても重量が無いと難しいし、扱える技能も無い。
今はマジックシールドと同様で、体から離し宙に浮かせた状態で制御し、刺突の攻撃に切り替えた。
ライが物質化魔法は、髪の毛と一緒と思えば気にならないと言っていたが、何となく無意識で扱えるようにはなってきている。まだ手や指を動かして操作を意識する必要はある。

これが移動中の基本パターンとなっている。
ムーアとブロッサは、中に入って出てこない。

ブロッサは召還しないと出てこないが、蛙のブロッサは移動に関しては不向き。常時召還して、魔力を消費するのが一番だけど今は足を引っ張ってしまう。

ムーアに関しては性格的な問題で面倒くさいからだろう。
パーティーバランスも関係してくるが、これからの役割分担は落ち着いてから考えようと思う。
仕事の集中や不満といったものは、精霊でもあるのだろうか?

色々と考えてい内に、オニ族の野営地が近付いてくる。ファイヤーボールの合図は伝わってくれたようで、斥候に出ていたソーイが迎えに来る。
というより、俺を待っていたのかもしれない。

「カショウ殿、ご無事で何よりです。ソーギョク様がお待ちですので」

「湖の東にゴブリンが居る。何かは変化はないか?」

「哨戒に出ていますが、今のところ変化はありません」

大まかな確認をしながら、ソーギョクのテントに向かう。
ソーギョクのテントからは、ソーキの大きい声が響いてくる。

「お見苦しいところをお見せしますが、申し訳ありません」

「どこの世界でも1人は居るんだな。ソーイが謝っても、どうにもならないだろ」

苦笑いしながらのテント中に入る。

「カショウ様をお連れしました」

「ムーアを呼んだ方が良いかな?」

「わ、わ、儂は失礼する」

逃げるように去っていくソーキ。

「いらない気を遣わせたな。感謝する」

テントの中に居たのは、ソーギョク、ソーショウ、側近2人の4人。
ソーサは東側の哨戒で、ソーイは西側の哨戒の役割。
一応ルーク達はテントの外で哨戒。クオンの事は企業秘密にする。

そこに俺とムーアが加わるが、ムーアが先に話し出す。

『先に言っておくけど私はこれ以上、オニ族には関わらないわよ。私とオニ族は支配する関係ではないし、今は契約主はカショウ。情報は教えてあげるけど、あくまでも判断は自分達でしてね!』

「それで大丈夫なのか?」

『ええ、私の契約主はあなたよ。あなたの不益になる事はしないし出来ない。益になると思う事は言わせてもらうけどね!』

「それで構わない。毒の原因は解決してもらったなら、やりようはある」

「なんだ、もう話は付いてたのか?」

「毒の問題を解決しなければ、オニ族の村の結界は弱まり、近い内に破られてしまう。私が出る予定だったが、運良くカショウ殿に出会う事が出来た」

『私の目的はブロッサを助けたかっただけよ。私には戦うスキルは無いわ。それだけよ』

クオンが急を告げてくる。

“ゴブリン達が来てる、100は居る”

「時間切れみたいだな。ゴブリン達が来るぞ。100体は居るけど、想定内かな?」

「多いな、正直に言うと想定外の数。ゴブリン相手でも、3倍の数は難しい。今は逃げの一手で、東の森に逃げ込む」

「ソーギョク様、東の森はトラの縄張り。踏み込めば、ただでは帰れません。全滅の可能性もあります」

「それはゴブリンも同じ。西に下がれば、包囲されるだけ。下がってはならん」

「それではカショウ殿にお力添えいただけないでしょうか?探知のスキルは、我らとは比較になりません!」

「それはならん、今回は分が悪い。一旦進めば戻る道はない。巻き込んではならん!」

「俺の目の前で勝手に話するのは止めてもらえるかな。こっちはこっちの都合があるんでな!」

ソーギョクとソーショウに釘を刺し、ムーアを見る。若干、ムーアの表情が固くなる。

「ムーア、俺は西にから来たけど精霊には出会わなかった。北の湖西に向かったけど同じ。次はどこに向かったら精霊に出会う可能性がある?」

『東には行った事がないから、可能性はあるのかしら・・・』

「じゃあ、決まりだ。時間が勿体ない、直ぐに出るぞ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...