精霊のジレンマ

さんが

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ヒケンの森のオニ族

15.動向と奇襲作戦

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太陽が沈み暗くなる。
森の中は暗くなるが、草むらは思ったより明るい。月が3つあるアシスでは、少し暗めの街灯がある感じの明るさ。

ゴブリンなら草むらに潜めば隠れれるが、近オニは丸分かりだろう。

ルーク達も障害物がない上、自らが光るウィプスは目立ってしまう。草むらに潜めば上方からの優位性は失われる。
またゴブリンは濃い緑色の体。草むらと同化して見つけるのは困難といえる。

だがクオンの探知があれば、ゴブリンクラスなら隠れる事の意味はない。
まるでゲームをしているような俯瞰的な視野で分かってしまう。局所的な場合に限定すれば、チートに近い性能だと思う。

クオンの探知では、ゴブリンは全部で15体。3体のグループが5つの合計15体。
湖の側に毒の原因となっている何かがあり、そこに3体のゴブリン。それを4つのグループが囲んでいるが、南から東側に3グループ、北側に1グループの配置。


もう過ぎてしまった事だが、逃げたゴブリンが気になる。東に向かって逃げたが、クオンの探知でもその後に方向を変えた気配ない。

なりふり構わず逃げたのか、それとも合流先があるのか?合流先があるとしたら、ソーギョク達は非常に危険な状況になると思う。

ここは戻って早く知らせた方がイイな。

そこにムーアが現れる。

『どうするの?ゴブリンだけなら倒してしまうのはどうかしら?』

召還しては無いけど、出てくるムーア。

「召還してないんだけどな・・・」

『契約内容をしっかり詰めておかない、貴方が悪いのよ♪』

「契約内容の変更は出来るのか?」

『致しません!これからも、好きな時に出入りするわ。もちろん、その場の空気は読んで出入りしてあげる!』

「これ以上言っても無理だろうな」

ムーアの満面の笑顔が、“諦めなさい”と肯定している。

「あっちは15体で、こっちはルーク達を入れて4人。普通なら無い選択だろう?」

『湖の毒だけど、精霊が関係しているとしたら、どうする?』

「何か知ってるだろ?知っていて悪い方向に誘導するなら、今後の事は考え直すけど!」

『誘導は誤解ね、貴方は自分達の力を過小評価しすぎだと思うわ』

そして、ムーアの顔が少し真剣な顔に変わる。

『この近くに昔から毒の精霊が居るんだけど、その精霊が絡んでいると思うの。性格は悪いけどオニ族がこの湖の水で酒造りをしているのは知っているし、毒を流すような事はしないわ。捕らわれてる可能性が高いと思うの』

俺とムーアの険悪になりかけた話に、クオンが割り込む。

“中央のゴブリン達から鳥が飛んでいくわ、東に向かって真っ直ぐ”

「という事は、湖の東側にもゴブリンが居ると見た方がイイかな?」

『たぶんフクロウを使役して連絡を取っているみたいね。やっぱり相手はただのゴブリンじゃないみたい。ソーギョク達も罠に嵌まったって事ね』

「ここのゴブリンが残ってれば、挟撃は成功って所だろうな。だけど、ここのゴブリンはまだ俺たちの事を知らない。オニ達だけと思ってるなら、奇襲が成功する可能性はあるな」

『それじゃあ、助けてくれるの?』

「助けて欲しいんだろ。しっかり協力はしてもらうけどな!」

『分かったわ。それで、どうするの?』

「酔眼朦朧って言ってたけど、どこまで使えるんだ?」


全員を集めて作戦会議をする。といっても俺が一方的に話をする形になる。
たぶんクオンは俺の意見に反対しない。ルーク達は話する事は出来ないし、今は動きや光の明滅の意思表示のみ。
ムーアが喋らなければ作戦会議する必要は無いけど、反対意見や違う意見は大切にしようとは思う。

流されたり誘導される事には注意が必要だが、全て自分が正しいとは思わない。ただ失敗するとしても、自分の判断で失敗したいだけ。

作戦は単純、北側から攻める。
北側の3体は、ムーアの酔眼朦朧で戦闘不能。位置が分かれば3体くらいは、泥酔状態。こちらに気付くことは無く、一気にウィプス達で中央を狙う。

一番の目的は、毒の精霊を解放する事。オニ達には悪いけど、ゴブリンを殲滅するつもりは無い。あくまでも、努力目標であって必達目標ではない。
この時点で計画に狂いがでるなら、退路がある内に撤退する。

「ムーア、無理はしない。これで大丈夫だな!」

『貴方の決定には従うわよ。毒の精霊を助ければ結界を戻せるし、状況も変わると思うわ。』

後は状況に合わせて幾つかの作戦を合わせた俺たちは、ゆっくりと北側に向かう。
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