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第9話 第13ダンジョンの最深部

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「いや~っ、やっぱ先輩は来てくれると思ってましたよ。それに、まさかのまさかの、ダンジョンマスターがブランシュさんだなんて。きっと、このダンジョンは人気出ること間違いないっすね。冒険者からも天使からも!」

 第6ダンジョンの熾天使フジーコには悪口・陰口ばかりのマリクが、新たなダンジョンを褒め称え、饒舌に1人で喋り続けている。

 いきなり現れた陽キャに、長い間ぼっちだったラナとの相性を心配したが、ラナはキラキラした目でマリクのことを見て、そばから離れようとしない。

「ブランシュ、もしかしてラナは……」

「レヴィン、それは違うの。好意の対象ではあるけど、少し方向が違うのよ」

 マリクの魔力を吸収してつくりだした、金色の幸運のサプリ。

 ラナが魔力を吸収して、つくり出されるサプリに決まりがある。戦士や剣士からは、力や体力のサプリ。魔法使いからは、賢さや魔力のサプリ。
 しかし金色の幸運のサプリだけは、その人が産まれた時から持っているギフト。鍛えようと思って伸ばせる能力じゃない。

「もしかして……、マリクを幸運のサプリとダブらせているのか」

「ええっ、そういうことね。マリクの方も、ラナを相手に楽しそうに遊んでるから、今はそっとしておきましょう」

「まあ、仲良きこと美しきかな、だな」

 いつの間にか、マリクがラナを肩車している。ラナは進む方向を木の棒を指し示し、それに向かってマリクが走りだす。
 俺たちが向かっているのは、ダンジョンの最深部。ブランシュのリボーン・ダンジョンの魔法で、3階層までしかなかった廃墟のダンジョンは、5階層までに拡張されている。

 まずは、ダンジョンの最深部にあるダンジョンコアを確認しなければならない。俺達の一番の使命は、ダンジョンコアを守ること。ダンジョンコアが破壊されても、ダンジョンの外に持ち出されても、ダンジョンは死んでしまう。
 巧妙に隠しトラップを仕掛け、魔物を配置するのも、全てはダンジョンコアを守る為。そして、そここそが俺達の拠点となる場所でもある。

「マリク隊員、あっちに進むのであります」

「隊長、了解であります。マリク、索敵開始します」

 そんなことは微塵も感じさせない、ダンジョンの探索ごっこが繰り広げられている。




「トラップもないダンジョン。そろそろ辿りついてもイイ頃なんだけどな」

「出来たばかりのダンジョンにしては、意外と広いっすね。1階層の広さだけなら、第6ダンジョン比べても引けを取らないっすよ」

 気がつけば、遊び疲れたラナはブランシュに抱っこされて眠っている。マリクは、本来の黒子天使の業務へと戻っている。

「マッピングによれば、まだ行っていない場所は、この先だけ。そこが最深部で間違いないっす」

 マリクの言う通りに、通路の奥から明かりが見えてくる。恐らくは、ダンジョンコアが発する光で間違いない。

「んっ、少し違うな」

「そうっすね。ブランシュさんっぽくない色っすよね。てっきり、白か暖色系の光かと思ったんすけど」

「いや、あの光はもしかして……転移魔法陣」

 次第に鮮明になる緑の光。地面に描かれた紋様から放たれる光は、間違いなく何度も見たことのある転移魔法陣の光。

「これって、やっぱりっすか、先輩」

「ああ座標は、第6ダンジョンで間違いなさそうだな。他に見落としている場所は?」

「いやっ、オレっちがそんな初歩的なミスなんてしないっすよ」

 マリクがマッピング魔法で、ダンジョンの地図をホログラムにして映し出す。

「確かに、見落としはないな」

「そうっすよ。それに、ここが最深部で間違いないっすもん」

「でも、そんな事ってあり得るのか?」

「オレっちにそんな事聞かれても、ダンジョンが出来るのを見たことなんてないっすよ」

「そうだな、俺も初めて見た。確かにダンジョンコアは、このダンジョンに吸い込まれるようにして消えた。ダンジョンの最深部を目指して……やっぱりか」

「何が、やっぱりなんすか、先輩」

「第6ダンジョンは、まだ健在なんだよ」
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