上 下
6 / 10

第6話 始まりのダンジョンの禁忌

しおりを挟む
「魔力量が増えるって、マジックポーションと違うの?」

「いやっ、違う。確かに、魔力も回復する。だが、こいつは魔力保有量の上限を増やすんだ」

 ラナが持っていたのは、魔力の上限をが増やしてくれる薬。だが規格外なのは、これを一定期間継続して飲み続ければ、効果は消えずに残り続ける。本当に魔力保有量が増やすことが出来る代物。

「この小さな一粒では微々たるものだが、継続出来れば冒険者達にとって大きな力になる」

 ブランシュと目が合う。事の重大さに気付いたブランシュも、少し顔がこわばっている。魔力の保有量には限界がある。種族によっても魔力保有量は大きく変わり、それが種族の優劣さえ決めてしまう魔法優位の世界。

「問題は数でしょ。数が確保出来てこそ貴重なアイテム。でも数がなければ、大きな変化は起こせないはずよ」

 俺とブランシュの視線が、自然とラナへと方へと向く。

「ラナ、他にもサプリは持ってるのかしら?」

「うんっ、いっぱい持ってる。姫様と、たーくさん作ったもん。ほらっ」

 ラナがポケットから、無造作に出したサプリ。白色だけでなく、赤や青、緑と様々な色のがある。

「うんとねっ、これは力が強くなるの。これは、頭が良くなるの。それでね、これは体が丈夫になるの」

「魔力だけじゃないのか……」

「うん、お家には他にまだまだ沢山あるよ。姫様が、困ったらこれを優しそうな人に見せなさいって言ってたもん」

 俺達は、凍りつくしかない。「サプリ」は子供のポケットに、お菓子のようにして持ち歩くべきものじゃない。ダンジョンの中でも、特に厳重に守られた場所で、しっかりと管理されなければならない代物。

「あっ、ダメよ」

 ラナが、サプリを口に入れて食べてしまう。

「うんっ、どうして。サプリ、美味しいよ」

 そう言うと、またポケットの中からサプリを取り出してみせる。破綻したダンジョンから発する、禍々しい魔力。それに触れても、存在が消滅しなかったのは「サプリ」のせいで間違いない。

「ねえ、他にサプリの事を知ってる人はいるのかしら?」

「うーんとね、姫様はドライアドだけの秘密だって言ってた」

 再び、俺とブランシュの目が合う。ラナは決して知られてはならない存在。始まりのダンジョンで行われていた禁忌を知ってしまった。

「ドライアドの秘密を、私に秘密を教えてくれて大丈夫なの?」

「うん、ブランシュは大丈夫! 姫様と同じ匂いがするもん」

「ブランシュ、ラナと契約をしよう。それしか方法はない」

「分かってるわ。この子は守ってみせるわ」

「ねえ、けーやくって、なーに? 痛いことされるの?」

「違うわよ。ラナは、私と一緒にダンジョンで暮らしたい」

「うん、ブランシュと一緒がいい。あっちの目つきの悪いのはギリギリ合格にしてあげる」

「そう、ありがと。でもね、私達と一緒にダンジョンで生活する時は契約っていってね、守らなければならないお約束があるの。難しくはないけど、ちょっと不便になるわよ」

「するする。ラナは、お利口。お約束守れるー!」

「お約束するとね、ダンジョンの外に出れなくなるの。それでも大丈夫?」

「何だ、かんたーん。今までもダンジョンの中でずっと暮らしてきたもん」


 ブランシュとラナ。ダンジョンマスターである熾天使と精霊の契約が成立する。ダンジョンが大地から吸収する上質で濃い魔力が、ラナの糧として供給されるされる。

 ラナの体が仄かに光を帯び始める。ブランシュのハロの光が無ければ姿が見えなかった、消滅寸前に近かい体。それが今は生気に溢れ、発する魔力も強くなる。

 そして、ラナの体にも変化が起こる。少しだけ身長が伸び、顔つきや体つきも引き締まって見える。それでもまだまだ少女で変わりないが、自身の成長を感じとったラナは嬉しそうに笑う。

「うわっ、お姉さんになった~。お仕事頑張って、いっぱいサプリつくらないと。ラナは、役に立つ精霊さんってことを証明するの」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~

さんが
ファンタジー
 3対6枚の翼を持つ熾天使。地上に降りることを許された天使であり、神の天啓を伝える。また、勇者を見定めて加護を与え、共にダンジョンの奥に潜む魔物を討つ。  そんな嘘で塗り固められた世界キョード。  本当の熾天使の姿は、ダンジョンマスター。全ての力の源となる魔力は、大地の奥深くから湧き出し、その魔力を吸い上げる為の装置がダンジョン。  ダンジョンを大きくする為の唯一の方法は、冒険者を疲弊させダメージを与え、ダンジョンに生命力を吸収させること以外にない。だからこそ、熾天使は冒険者をダンジョンの奥へと誘う。  そして、そのダンジョン管理の役目を担うのが黒子天使とよばれる、頭上に黒い輪を持つ裏方の天使達。  ただ、神々であってもダンジョンには未知が多く、禁忌事項の『需要魔力が供給魔力を超えてはならない』ということしか分かっていない。  禁忌を犯した場合の代償は大きく、原因となった者やダンジョンマスターには災厄が降りかかり、ダンジョンは崩壊する。  だから、神々は熾天使にダンジョンマスターを任せる。  そんな事は、黒子天使の俺には関係ないし、どうでも良かった。幼馴染みの熾天使ブランシュが、新設された第13ダンジョンのダンジョンマスターにされてしまうまでは!  決して表に出ることのない裏方の黒子天使の物語が、今ここに始まる。 ※ファンタジー世界の裏側は意外と現代的。大真面目だけどクスッと笑える。そんな世界観です。 なろうに追いつくまでは毎日更新。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...