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第5話 廃墟のドライアド
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「3ヶ月か……」
「そうよ、たったの3ヶ月。私の心配していたことが、少しかは分かってもらえたかしら?」
新しく誕生したダンジョンではなく、忌まわしき呪いが解けただけでの、再利用ダンジョン。廃墟が一新されたわけではなく、姿形は何も変わっていない。
「片付けるのも大変そうだな」
「あら、それは黒子の天使の仕事なんでしょ」
ダンジョンに冒険者を集めるのが熾天使の仕事ならば、ダンジョンの運営管理をするのが黒子天使仕事。
朽ち果てた宮殿と、その地下に広がる迷宮。木々の根や蔦や蔓に侵食さ、通れる道といえば第6ダンジョンに繋がっていた3階層の転移陣まで。
安全な下層へと繋がる道を教え、しかも途中にはトラップや魔物も何も存在しない。
「とりあえずは、先にダンジョンの全貌を確認するしか。それから無事ならば、マリク達を呼ぼう」
その時、後ろで何か動いた気配がする。しかし、ここには何もないはず。小さな虫の気配だって、黒子天使の気配探知からは逃れれない。
後ろにあるのは、木の根が張り付いた不気味な壁。それは、今でも変わらない。
「気の所為だよな」
「違うわ」
振り替えると、最初に影が現れ、そこから徐々に人の姿が浮かび上がる。ブランシュのハロの光に照らしだされて、姿を現したのは小さな女の子。だが、髪は蔓や蔦で、所々に白く小さな花の飾りが着いている。
ダンジョンを管理することに特化し、鑑定眼やダンジョン管理に関係するスキルに特化したせいで、ハロの力を失った黒子天使の俺には見えない。2対4翼の熾天使の力を持つブランシュだからこそなせる業でもある。
ブランシュは、女の子の前でしゃがむと目線を合わせて話しかける。
「こんにちは、精霊さん。あなたはドライアドね」
ブランシュの言葉に、女の子は小さく頷く。
「どうしたらイイのかしら? 助けて欲しいんでしょ」
「うん。姫様を助けて。この下には、姫様が眠ってるの」
「それは無理だ。破綻したダンジョン。例え精霊であっても生き残っているはずはない」
「違う、生きてるもん。森は死んでない。それが証拠だもん」
「でもな、ダンジョンは穴を掘るみたいに簡単には大きく出来ないんだぞ」
ドライアドの女の子は、プイッとレヴィンから顔を背けてしまう。
「レヴィンは、相変わらず分かってないわね。私が話を聞くわ」
「まずは、私はブランシュ。ここに新しくダンジョンを作ったの。今日から、ここが私のお家。それは、大丈夫かしら?」
ブランシュの言葉に、ドライアドの女の子は黙って頷く。
「ありがとう。それじゃあ、あなたのお名前は? 私よりも長く生きる精霊様なのでしょ」
「ラナ。姫様は、わたしのことをラナって呼んでた」
「ラナ、良い名ね。ラナっ呼んでもイイかしら」
「うんっ、いいよ」
名を褒められたのが嬉しいのか、固い表情だった女の子の表情が和らぐ。
「ありがとう。でもね、私達は2人しかいないの。ダンジョンを深くするには、ここに沢山の人を呼ばないといけないの」
「知ってる。ラナもやってたもん」
「えっ、やってたって……。始まりのダンジョンに住んでたのかしら?」
「始まりのダンジョンなんて、知らない。でもラナ、ここで姫様と一緒に、沢山サプリつくってたの」
「サプリ……。レヴィン知ってる?」
「俺は、サプリなんんて聞いたことがないな」
もちろん俺も知らなければ、天界にずっと暮らしてきたブランシュが「サプリ」を知っているはずがない。
「ラナ、サプリっ何なのかしら?」
「これっ」
ラナが差し出した手には、白い小さな粒状の塊が乗っている。それを、ブランシュが手に取る。
「見たことないわ。レヴィンはどう?」
「まあ見たことが無くても、黒子天使なら大抵のものは鑑定出来るかなら」
ブランシュから受け取った「サプリ」に俺は驚愕するしかなかった。それは、この世界の価値観を変えてしまうかもしれない魅惑的なアイテム。
「魔力量が増えるって、そんな馬鹿な」
「そうよ、たったの3ヶ月。私の心配していたことが、少しかは分かってもらえたかしら?」
新しく誕生したダンジョンではなく、忌まわしき呪いが解けただけでの、再利用ダンジョン。廃墟が一新されたわけではなく、姿形は何も変わっていない。
「片付けるのも大変そうだな」
「あら、それは黒子の天使の仕事なんでしょ」
ダンジョンに冒険者を集めるのが熾天使の仕事ならば、ダンジョンの運営管理をするのが黒子天使仕事。
朽ち果てた宮殿と、その地下に広がる迷宮。木々の根や蔦や蔓に侵食さ、通れる道といえば第6ダンジョンに繋がっていた3階層の転移陣まで。
安全な下層へと繋がる道を教え、しかも途中にはトラップや魔物も何も存在しない。
「とりあえずは、先にダンジョンの全貌を確認するしか。それから無事ならば、マリク達を呼ぼう」
その時、後ろで何か動いた気配がする。しかし、ここには何もないはず。小さな虫の気配だって、黒子天使の気配探知からは逃れれない。
後ろにあるのは、木の根が張り付いた不気味な壁。それは、今でも変わらない。
「気の所為だよな」
「違うわ」
振り替えると、最初に影が現れ、そこから徐々に人の姿が浮かび上がる。ブランシュのハロの光に照らしだされて、姿を現したのは小さな女の子。だが、髪は蔓や蔦で、所々に白く小さな花の飾りが着いている。
ダンジョンを管理することに特化し、鑑定眼やダンジョン管理に関係するスキルに特化したせいで、ハロの力を失った黒子天使の俺には見えない。2対4翼の熾天使の力を持つブランシュだからこそなせる業でもある。
ブランシュは、女の子の前でしゃがむと目線を合わせて話しかける。
「こんにちは、精霊さん。あなたはドライアドね」
ブランシュの言葉に、女の子は小さく頷く。
「どうしたらイイのかしら? 助けて欲しいんでしょ」
「うん。姫様を助けて。この下には、姫様が眠ってるの」
「それは無理だ。破綻したダンジョン。例え精霊であっても生き残っているはずはない」
「違う、生きてるもん。森は死んでない。それが証拠だもん」
「でもな、ダンジョンは穴を掘るみたいに簡単には大きく出来ないんだぞ」
ドライアドの女の子は、プイッとレヴィンから顔を背けてしまう。
「レヴィンは、相変わらず分かってないわね。私が話を聞くわ」
「まずは、私はブランシュ。ここに新しくダンジョンを作ったの。今日から、ここが私のお家。それは、大丈夫かしら?」
ブランシュの言葉に、ドライアドの女の子は黙って頷く。
「ありがとう。それじゃあ、あなたのお名前は? 私よりも長く生きる精霊様なのでしょ」
「ラナ。姫様は、わたしのことをラナって呼んでた」
「ラナ、良い名ね。ラナっ呼んでもイイかしら」
「うんっ、いいよ」
名を褒められたのが嬉しいのか、固い表情だった女の子の表情が和らぐ。
「ありがとう。でもね、私達は2人しかいないの。ダンジョンを深くするには、ここに沢山の人を呼ばないといけないの」
「知ってる。ラナもやってたもん」
「えっ、やってたって……。始まりのダンジョンに住んでたのかしら?」
「始まりのダンジョンなんて、知らない。でもラナ、ここで姫様と一緒に、沢山サプリつくってたの」
「サプリ……。レヴィン知ってる?」
「俺は、サプリなんんて聞いたことがないな」
もちろん俺も知らなければ、天界にずっと暮らしてきたブランシュが「サプリ」を知っているはずがない。
「ラナ、サプリっ何なのかしら?」
「これっ」
ラナが差し出した手には、白い小さな粒状の塊が乗っている。それを、ブランシュが手に取る。
「見たことないわ。レヴィンはどう?」
「まあ見たことが無くても、黒子天使なら大抵のものは鑑定出来るかなら」
ブランシュから受け取った「サプリ」に俺は驚愕するしかなかった。それは、この世界の価値観を変えてしまうかもしれない魅惑的なアイテム。
「魔力量が増えるって、そんな馬鹿な」
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