黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~

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第46話 迷いの森のピクニック

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 迷いの森の捜索は、マリアナを警戒させない為に、俺とブランシュにザキーサ、カシューとローゼと少人数の編成となる。そして、ちゃっかりとマリクも準備をしている。

「マリク、何してる」

「えっ、先輩の居るところにマリクあり! 悪さしないか見張りが必要っす」

「お前は留守番に決まってるだろ。ダンジョンでトラブルが起きたら誰が対処するんだ」

「大丈夫っ、シーマが居るっしょ」

「それはダメじゃ。シーマは連れて行く」

 それに待ったをかけたのはザキーサ。迷いの森が、マジックアイテムで守られているなら、マジックアイテムの専門家を連れて行く。マジックアイテムのトラップを破るのではなく後学のためで、直接見て感じることが重要らしい。

「それなら、こっちも同じっすよ。後学のために付いていくっす」

「我儘を言うな、お前は今日から司令官代理だ。俺の居ない間、ダンジョンはお前に任せる。ブラックアウトを起こせば、お前にも災厄が訪れると思え」

「えっ、それって横暴っすよ」

「頼んだわよ、司令官代理さん」

 しかし、ブランシュに頼まれれば、マリクは断ることが出来ない。そして、サンドイッチの入ったバスケットを、ザキーサはアイテムボックスに入れる。マリクに気付かないように。




 迷いの森といっても、見た目は何も変わらない。程よく陽の光が射し込み、特別暗いわけでもなく迷わせるような要素はない。

 魔導士タイプのマリクが、俺達の前を先導して歩いていたが、突然歩みが止まる。両手を広げ目を閉じると、森に漂う魔力の流れを感じ取っている。

「レヴィン、ここからが迷いの森だね。マリク達じゃ、まず突破は不可能だよ」

「マリクなら、行けそうか?」

「いや、ボクじゃあ難しいかな。見張られているのは分かるけど、人の気配も感じないしマジックアイテムの存在すら分からない。でも、試してみたいことはあるよ」

 マリクが右手を上げると、指先に鳥が現れる。それは、マリクの使い魔ベル。俺達の中でもマリクは特に、スキルに特化した使い魔を好んで使う。そして、使い魔ベルは探知スキルに特化している。

「ベル、マジックアイテムを探すんだ」

 ダンジョンの中で働く使い魔にとっても、久しぶりの地上は嬉しいらしく、マリクの頭上で一回りすると、森の中を猛スピードで飛んで行く。あっという間に姿は見えなくなるが、再び現れたのは俺達の後ろから。

「どうだい、何か見つかった?」

 しかし、ベルは頭を左右に振ると、再び姿を消してしまう。

「やっぱり、無理だったね。ベルが見つけれないなら、誰にも無理だよ」

 マジックアイテムの仕業だと分かっても、どこに隠してあるが分からなければ、手の出しようがない。

「ふんっ、勉強になったか。サージ様を守る為に作ったマジックアイテムの無限ループじゃ。お主らが束になってかかったとて、どうにもならん代物よ。まあ、ベルとやらは少し見込みがありそうだがの」

「それは分かったけど、どうやって進むんだ?ザキさんなら、簡単に出来るんだろ」

「無理に決まっておろう。破壊なくして、先に進むことなぞ出来ん」

 ザキーサは、悪びれずに堂々と言い放つと、アイテムボックスの中からバスケットを取り出す。

「ザキさん、何をするつもりだ?」

 バスケットの蓋が開くと、サンドイッチの良い香りが森の中に広がる。さらに水筒を取り出すと、珈琲の良い香りが合わさり、皆の食欲をそそる。

「何をおかしなことを言う。食べるに決まっておろう。眺めたいなら眺めておれ。余はお主達の分も遠慮なく頂くぞ」

 ハッキリとそう言われてしまえば、どうすることも出来ない。それにローゼが作ったサンドイッチはブランシュ直伝。食べることを拒否すれば、両方ともに機嫌を損ねる可能性が高い。

 迷いの森の探索のはずが、本当にピクニックになってしまう。これで、何の結果も出なければ、マリクに何を言われても言い返せないと、最悪の想像をしながらもサンドイッチに手を伸ばせば、俺の手は空振りしてしまう。

「ほう、もう来たか。大分飢えておるようじゃな」

「ザキさん、何があったんだ?」

「しっかりと、守りを固めておけ。そうでないと全てやられてしまうぞ」
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