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第40話 創造神ゼノの晩餐とラーミウの憂鬱

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「ラーミウ様、ゼノ様がお呼びです」

「来たか、イーフ直ぐに支度をしろ」

 何の予告もなく、ラーミウの元へと現れたのはゼノの使いの天使。呼び出しを告げられた、第1ダンジョン司令官のイーフの顔は青ざめている。
 常に熾天使から神々へと報告が行われ、基本的に神々から呼び出されることはあり得ない。それだけに、今が異常事態であることを告げている。

「イーフ、何をビビっておる。死ぬわけでもなかろう」

「でも、そのっ前任者は……」

 数多居る神々の中でも、ゼノはキョードーの世界を創った神の一人。キョードーの世界では絶対的な力を持ち、逆らうことの許されない存在。好好爺に見えて、性格は冷酷そのもの。笑みを浮かべたまま、残忍な命令を平気で下す。

「お前は余計なことは話すな。黙っておれば問題ない」

 そして急用であるらしく、迎えの天使によってゼノの執務室へと強制転移させられる。

 そこは、とても執務室とは思えない空間。間接照明が多く、部屋の中は少し薄暗い。エグゼクティブデスクではなく、バーカウンターがあり棚には幾つもの酒瓶が並べられている。

「待っておったぞ、ラーミウよ」

「急なお呼び出しで、どのようなご用件でしょうか?」

「分かっておろう。そろそろアマソンを解禁してもイイのではないか?キョードーの世界の食べ物は、どれも口に合わん」

「ゼノ様、期限の3ヶ月まで後1週間。もう少しお待ちください」

 ゼノが求めているのは、異世界のお取り寄せグルメの解禁。召喚魔法アマソンを使えば、異世界の物を何でも取り寄せることが出来る。
 ただ問題なのは、消費する魔力が尋常じゃないくらいに大きい。1つ召喚するだけでも、最上位魔法の数百倍の魔力を消費する。だから、神々は魔力を多く集めようとしている。

「後1週間で約束の3ヶ月なのだぞ。目処はついておるのだろうな。当初の計画と狂いが生じておると噂になっておるぞ」

「ご心配なく、低能な者どもが騒いでおるだけに過ぎません。幾つもの選択肢がある中の、確率の低かった1つになっただけ。全てが想定内で、予定通り進んでおります」

「では、第13ダンジョンは上手くいっておるのだな」

 第6と第7ダンジョンのブラックアウトで生じた魔力損失は約5%。その穴埋めをする為に生まれたのが第13ダンジョン。
 しかし、魔力取得量は第1ダンジョンが約50%と大半を占めている。第2~4ダンジョンを合わせても約30%で、残りの20%が第5~12ダンジョンとなっている。
 そこに、滅びたダンジョンを中途半端に再生させても、損失分を補うことは出来ない。最初から、第13ダンジョンは失った魔力を補填するための目的ではなかった。

 当初の計画は再度ブラックアウトを起こさせ、余剰となった黒子天使を処分すること。もちろんダンジョンの数が減るのだから、その分魔物も処分出来る。魔力を消費するだけの邪魔者を、都合良く処分しようとした。

「これをご覧下さい。魔力の収支には問題ありません」

 ラーミウの見せた資料は、取得魔力と消費魔力についてまとめられた報告書。取得魔力は減ったままだが、計画通りに消費魔力も抑えられている。

「第13ダンジョンで何が起こっているか、詳しい調査が必要ではありますが、今の所計画通り。」

「その調査は可能なのか?」

 ダンジョンの権限は、ダンジョンマスターである熾天使にある。ブラックアウトの被害が他に及ばない為の方法であり、熾天使筆頭であっても神々であっても手を出すことも口を挟むことも許されない。

「フジーコにやらせます。意のままに操ることは簡単かと」

「それなら、もう1つダンジョンを復活させるが早かろう。あやつなら、簡単にブラックアウトを起こす。それならば、予定を少し早めることくらい問題なかろう。もうレンチンは飽きたし、在庫も3日分しか無いのだ」

「食事だけは問題ありませんが、お酒だけは控えて頂きたい」

「それでは、3日だけ待ってやる。それ以上はならん」

「はっ、仰せのままに」

 こうして秘密裏に、14番目のダンジョンの再生計画が立てられた。そして、物語は大きく動き出す。
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