34 / 53
第34話 白銀の翼の再戦
しおりを挟む
『報告します。白銀の翼が、ヒケンの森に現れました』
「来たか、モニターに映してくれ」
モニターに映し出される白銀の翼は、10日前までとは大きく変わり、装備が一新されている。
先頭を歩いている戦士のアルベルトの持つ武器は、戦斧から十文字槍に変わっている。それに続く盗賊リジェネは身軽さを殺してしまう大盾を持ち、最後尾の僧侶ペンネにいたってはアルベルトの戦斧よりも巨大は鎚を担いでいる。
確かに、ガルグイユから受けるダメージが小さいのは盗賊リジェネで、ガルグイユに与えるダメージが大きかったのは僧侶ペンネだった。
「ほらね、心配しなくても大丈夫だったでしょ。私の言った通りよ」
報告を受けたブランシュが、エプロン姿で駆けつけてくる。ダンジョンとは掛け離れた、緊張感のない格好には中々見慣れず、未だに少し戸惑ってしまう。
「どうしたの?惚れ直した?」
俺が惚れているのが前提の、カップルのような会話に、周囲の黒子天使の視線が俺に突き刺さる。ブランシュの言葉も、黒子天使の視線も無視して話を進める。
「白銀の翼は大丈夫なのか?これは、ちょっと変わり過ぎだろ」
前衛だった戦士が中距離の武器を持ち、盗賊がタンク役で、僧侶が主な攻撃を担う。能力に特化したのかもしれないざ、それは脳筋的な発想で、職業やスキルの適正を一切無視してしまっている。
「私は、似合ってると思うわ。目も活き活きとしている」
しかし、ブランシュは大丈夫と断言する。熾天使は、勇者や聖女を見定めて任命する。黒子天使には鑑定眼があるように、熾天使にも何か見えるものがあるのかもしれない。
今のブランシュには任命する権限がないが、これまでの熾天使とは違った価値観があり、ラーミウやフジーコには見出だすことの出来ない何かが見えているのかもしれない。
そして、白銀の翼とガルグイユの再戦が始まった。
僧侶ペンネが、ガルグイユの前に進み出ると、自身に攻撃力上昇魔法をかけ身体能力を強化する。その後ろには全身を覆い隠す大盾の盗賊リジェネ、最後尾には戦士アルベルトが十文字槍を構える。
「さあ、行くわよ!」
僧侶ペンネの雄叫びと共に、鎚がガルグイユの頭部に振り下ろされ、轟音が響き渡る。
「マジっすか、先輩。数字通りといえば数字通りっすけど」
「力だけじゃない、鎚に対してのスキルも高いんだよ」
ペンネの初撃で、ガルグイユの生命力ゲージの2割が減っている。以前の戦闘では2割を削るのがやっとだったのに、それがたったの一撃で達成される。
だが多少のやり方を変えた程度で、劇的に結果が変わるとは思えない。それからは、泥臭い戦いが始まる。アルベルトが十文字槍で、ガルグイユの攻撃の勢いを削ぎ、弱まった攻撃をリジェネが大盾で受け止める。そして、最後はペンネの鎚による攻撃。
しかし、アルベルトの槍のスキルは未熟で十分にガルグイユの動きを押さえ込めていない。リジェネも大盾を扱う動きは鈍く、完全にガルグイユの攻撃を受け止めきれずに後ろへと弾かれる。だから、ペンネの鎚による攻撃も空振りが多く、当てれたのは結局一発のみ。
ガルグイユの生命力ゲージを半分まで削ると、ペンネが魔力切れを起こして撤退に追い込まれる。
「まあ結果は、一緒っすかね」
「でも、彼奴ら笑ってるぞ」
撤退に追い込まれたが、白銀の翼のメンバーは満足気で、勝ち誇っているようにさえ見える。
「白銀の翼にとっては、竜鱗をドロップするだけじゃないのよ。自身の能力と成長が嬉しいの」
天使の世界も、地上の世界もミッションの成功か失敗の2つでしか評価されない。
ガルグイユを倒せた冒険者と、倒せなかった冒険者。その2つの結果にどれだけの差があるかも分からず、白銀の翼は闇雲に戦ってきた。しかし、何度挑戦しても結果は同じ。それが、白銀の翼の心を折り掛けていた。
しかし、今は違う。努力や工夫が、結果としてハッキリと見える。勝てなくても、前よりも結果が出たことが喜びに変わり、さらなる試行錯誤を続け、何度でもガルグイユへの挑戦を続けさせる。
「冒険者が来たくなるようなダンジョンをつくりましょう」
こうして、第13ダンジョンの方針が決まった。
「来たか、モニターに映してくれ」
モニターに映し出される白銀の翼は、10日前までとは大きく変わり、装備が一新されている。
先頭を歩いている戦士のアルベルトの持つ武器は、戦斧から十文字槍に変わっている。それに続く盗賊リジェネは身軽さを殺してしまう大盾を持ち、最後尾の僧侶ペンネにいたってはアルベルトの戦斧よりも巨大は鎚を担いでいる。
確かに、ガルグイユから受けるダメージが小さいのは盗賊リジェネで、ガルグイユに与えるダメージが大きかったのは僧侶ペンネだった。
「ほらね、心配しなくても大丈夫だったでしょ。私の言った通りよ」
報告を受けたブランシュが、エプロン姿で駆けつけてくる。ダンジョンとは掛け離れた、緊張感のない格好には中々見慣れず、未だに少し戸惑ってしまう。
「どうしたの?惚れ直した?」
俺が惚れているのが前提の、カップルのような会話に、周囲の黒子天使の視線が俺に突き刺さる。ブランシュの言葉も、黒子天使の視線も無視して話を進める。
「白銀の翼は大丈夫なのか?これは、ちょっと変わり過ぎだろ」
前衛だった戦士が中距離の武器を持ち、盗賊がタンク役で、僧侶が主な攻撃を担う。能力に特化したのかもしれないざ、それは脳筋的な発想で、職業やスキルの適正を一切無視してしまっている。
「私は、似合ってると思うわ。目も活き活きとしている」
しかし、ブランシュは大丈夫と断言する。熾天使は、勇者や聖女を見定めて任命する。黒子天使には鑑定眼があるように、熾天使にも何か見えるものがあるのかもしれない。
今のブランシュには任命する権限がないが、これまでの熾天使とは違った価値観があり、ラーミウやフジーコには見出だすことの出来ない何かが見えているのかもしれない。
そして、白銀の翼とガルグイユの再戦が始まった。
僧侶ペンネが、ガルグイユの前に進み出ると、自身に攻撃力上昇魔法をかけ身体能力を強化する。その後ろには全身を覆い隠す大盾の盗賊リジェネ、最後尾には戦士アルベルトが十文字槍を構える。
「さあ、行くわよ!」
僧侶ペンネの雄叫びと共に、鎚がガルグイユの頭部に振り下ろされ、轟音が響き渡る。
「マジっすか、先輩。数字通りといえば数字通りっすけど」
「力だけじゃない、鎚に対してのスキルも高いんだよ」
ペンネの初撃で、ガルグイユの生命力ゲージの2割が減っている。以前の戦闘では2割を削るのがやっとだったのに、それがたったの一撃で達成される。
だが多少のやり方を変えた程度で、劇的に結果が変わるとは思えない。それからは、泥臭い戦いが始まる。アルベルトが十文字槍で、ガルグイユの攻撃の勢いを削ぎ、弱まった攻撃をリジェネが大盾で受け止める。そして、最後はペンネの鎚による攻撃。
しかし、アルベルトの槍のスキルは未熟で十分にガルグイユの動きを押さえ込めていない。リジェネも大盾を扱う動きは鈍く、完全にガルグイユの攻撃を受け止めきれずに後ろへと弾かれる。だから、ペンネの鎚による攻撃も空振りが多く、当てれたのは結局一発のみ。
ガルグイユの生命力ゲージを半分まで削ると、ペンネが魔力切れを起こして撤退に追い込まれる。
「まあ結果は、一緒っすかね」
「でも、彼奴ら笑ってるぞ」
撤退に追い込まれたが、白銀の翼のメンバーは満足気で、勝ち誇っているようにさえ見える。
「白銀の翼にとっては、竜鱗をドロップするだけじゃないのよ。自身の能力と成長が嬉しいの」
天使の世界も、地上の世界もミッションの成功か失敗の2つでしか評価されない。
ガルグイユを倒せた冒険者と、倒せなかった冒険者。その2つの結果にどれだけの差があるかも分からず、白銀の翼は闇雲に戦ってきた。しかし、何度挑戦しても結果は同じ。それが、白銀の翼の心を折り掛けていた。
しかし、今は違う。努力や工夫が、結果としてハッキリと見える。勝てなくても、前よりも結果が出たことが喜びに変わり、さらなる試行錯誤を続け、何度でもガルグイユへの挑戦を続けさせる。
「冒険者が来たくなるようなダンジョンをつくりましょう」
こうして、第13ダンジョンの方針が決まった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる