黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~

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第34話 白銀の翼の再戦

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『報告します。白銀の翼が、ヒケンの森に現れました』

「来たか、モニターに映してくれ」

 モニターに映し出される白銀の翼は、10日前までとは大きく変わり、装備が一新されている。
 先頭を歩いている戦士のアルベルトの持つ武器は、戦斧から十文字槍に変わっている。それに続く盗賊リジェネは身軽さを殺してしまう大盾を持ち、最後尾の僧侶ペンネにいたってはアルベルトの戦斧よりも巨大は鎚を担いでいる。

 確かに、ガルグイユから受けるダメージが小さいのは盗賊リジェネで、ガルグイユに与えるダメージが大きかったのは僧侶ペンネだった。

「ほらね、心配しなくても大丈夫だったでしょ。私の言った通りよ」

 報告を受けたブランシュが、エプロン姿で駆けつけてくる。ダンジョンとは掛け離れた、緊張感のない格好には中々見慣れず、未だに少し戸惑ってしまう。

「どうしたの?惚れ直した?」

 俺が惚れているのが前提の、カップルのような会話に、周囲の黒子天使の視線が俺に突き刺さる。ブランシュの言葉も、黒子天使の視線も無視して話を進める。

「白銀の翼は大丈夫なのか?これは、ちょっと変わり過ぎだろ」

 前衛だった戦士が中距離の武器を持ち、盗賊がタンク役で、僧侶が主な攻撃を担う。能力に特化したのかもしれないざ、それは脳筋的な発想で、職業やスキルの適正を一切無視してしまっている。

「私は、似合ってると思うわ。目も活き活きとしている」

 しかし、ブランシュは大丈夫と断言する。熾天使は、勇者や聖女を見定めて任命する。黒子天使には鑑定眼があるように、熾天使にも何か見えるものがあるのかもしれない。
 今のブランシュには任命する権限がないが、これまでの熾天使とは違った価値観があり、ラーミウやフジーコには見出だすことの出来ない何かが見えているのかもしれない。



 そして、白銀の翼とガルグイユの再戦が始まった。

 僧侶ペンネが、ガルグイユの前に進み出ると、自身に攻撃力上昇魔法をかけ身体能力を強化する。その後ろには全身を覆い隠す大盾の盗賊リジェネ、最後尾には戦士アルベルトが十文字槍を構える。

「さあ、行くわよ!」

 僧侶ペンネの雄叫びと共に、鎚がガルグイユの頭部に振り下ろされ、轟音が響き渡る。

「マジっすか、先輩。数字通りといえば数字通りっすけど」

「力だけじゃない、鎚に対してのスキルも高いんだよ」

 ペンネの初撃で、ガルグイユの生命力ゲージの2割が減っている。以前の戦闘では2割を削るのがやっとだったのに、それがたったの一撃で達成される。

 だが多少のやり方を変えた程度で、劇的に結果が変わるとは思えない。それからは、泥臭い戦いが始まる。アルベルトが十文字槍で、ガルグイユの攻撃の勢いを削ぎ、弱まった攻撃をリジェネが大盾で受け止める。そして、最後はペンネの鎚による攻撃。

 しかし、アルベルトの槍のスキルは未熟で十分にガルグイユの動きを押さえ込めていない。リジェネも大盾を扱う動きは鈍く、完全にガルグイユの攻撃を受け止めきれずに後ろへと弾かれる。だから、ペンネの鎚による攻撃も空振りが多く、当てれたのは結局一発のみ。
 ガルグイユの生命力ゲージを半分まで削ると、ペンネが魔力切れを起こして撤退に追い込まれる。

「まあ結果は、一緒っすかね」

「でも、彼奴ら笑ってるぞ」

 撤退に追い込まれたが、白銀の翼のメンバーは満足気で、勝ち誇っているようにさえ見える。

「白銀の翼にとっては、竜鱗をドロップするだけじゃないのよ。自身の能力と成長が嬉しいの」

 天使の世界も、地上の世界もミッションの成功か失敗の2つでしか評価されない。
 ガルグイユを倒せた冒険者と、倒せなかった冒険者。その2つの結果にどれだけの差があるかも分からず、白銀の翼は闇雲に戦ってきた。しかし、何度挑戦しても結果は同じ。それが、白銀の翼の心を折り掛けていた。

 しかし、今は違う。努力や工夫が、結果としてハッキリと見える。勝てなくても、前よりも結果が出たことが喜びに変わり、さらなる試行錯誤を続け、何度でもガルグイユへの挑戦を続けさせる。

「冒険者が来たくなるようなダンジョンをつくりましょう」

 こうして、第13ダンジョンの方針が決まった。
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