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第32話 命を大切に

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 モニターには、先日見た3人の冒険者がガルグイユの石像と対峙している。

「白銀の翼、所定の位置に到着しました」
「僧侶ペンネの攻撃力上昇魔法発動確認」
「戦士アルベルトの攻撃力上昇確認」
「ガルグイユ発動に必要な攻撃力に到達」

「先輩、生命力ゲージはいつでもいけるっすよ」

「よしっ、生命力ゲージ発動」

「幻影発動後に、生命力ゲージ実行」

「了解、幻影発動します」

 ブランシュの幻影が映し出されると、無数の羽根が舞い落ちる。



 戦士アルベルトが戦斧を構え、大きく振りかぶるが、突然現れて消えた熾天使に動きが止まってしまう。

「何が起こった……何だ、あの青いのは?」

 ガルグイユに一定のダメージを与えれば、石像が動き出す。それは、ガルグイユが動き出す前に攻撃出来る絶好の機会であり、大半の冒険者は少しで大きなダメージを与える為に頭を狙う。
 そして、狙おうとしていたガルグイユの頭の上には、青い帯状のゲージが浮かんでいる。今までに無かったことに驚き戸惑うが、現れたのが熾天使であれば悪いことが起こったとは考えにくい。

 後ろの盗賊リジェネの方を振り返れば、リジェネの頭の上にも青いゲージが浮かんでいる。

「リジェネの上にも?何だその青いのは?」

「何言ってるの、アルベルトの頭にも浮かんでるわよ」

 アルベルトは、自身の頭上の青いゲージを払おうとするが、手に触れることは出来ず通り抜けてしまう。一方のリジェネは体を動かし、体の変化がないかを探っている。

「何だよ、これ?」

「呪いではないみたい。体にも特に変化はないわ」

「熾天使の加護なのか?」

「2人とも、早くしないとバフ魔法が切れるわよ。この前も魔力切れしたんだからね」

 止まってしまった戦闘を、僧侶ペンネに再開するよう促されると、アルベルトが慌てて攻撃を始める。巨大な戦斧の一撃が石像の頭に直撃すると、何時ものように周囲は光に包まれて、別空間へと転移が始まる。

「心配したが、何も変わってなさそうだな」

「待って、ガルグイユのゲージの色が変わってるわ」

 リジェネが指差すガルグイユの頭上のゲージは、青から緑がかった青色に変わっている。それに、僅かにではあるが長さも短くなっている。
 しかし、観察出来るのはそこまでで、ガルグイユは何時もと変わらない動きで襲いかかり始める。

 アルベルトの全力の攻撃では、僅かにしか見られなかったゲージ変化だが、逆の場合は顕著な変化が見える。
 ガルグイユの攻撃を防いだアルベルトのゲージが2割程短くなり、色も青から完全に緑へと変化する。さらに攻撃を受ければ、ゲージはさらに短くなり、緑から黄へと変化する。

 ここでペンネがアルベルトに回復魔法を唱えると、ゲージの長さが長くなり、色も黄から緑へと戻る。

「分かったわ、このゲージは生命力を表しているのよ」

 叫ぶリジェネに、アルベルトが応える。

「ゲージが無くなったら、どうなるんだよ」

「死にたくなかったら、ゲージを減らさないことね。後3回攻撃を受ければ、ゲージは無くなるわよ」

「ちっ、あっちはほぼ変わってないじゃないか」

 ゲージを意識したせいか、アルベルトの動き出しが僅かに遅れる。そのミスをガバーする為に、リジェネがアルベルト前に出ると、ガルグイユの攻撃を受け止める。

 アルベルトよりも軽装のリジェネが、ガルグイユの攻撃を受け止めれば、ダメージは大きいはず。しかし、リジェネのゲージは1割ほどしか減っていない。
 そして、今度はペンネが両手でメイスを握ると、渾身の力でガルグイユの頭を叩きつける。バフ魔法がかかっていないペンネだが、アルベルトの戦斧より大きな衝撃音が響くと、ガルグイユのゲージの色が青から緑に変わる。ゲージの長さは僅かに短くなった程度だが、アルベルトの時と比べると減り幅は大きい。

「嘘だろ……」

 精彩を欠くアルベルトに、白銀の翼はガルグイユのゲージを2割程減らしただけで撤退を余儀なくされる。



「ブランシュ、大丈夫だと思うか?あの戦士、かなり心が折れているように見えたぞ」

「でもゲージに気付いて、限界まで戦っていたわ。次の挑戦まで様子を見てもイイわよ」
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