27 / 53
第27話 ザキーサの彫刻
しおりを挟む
アイテムボックスから出てきた丸い塊は、ザキーサに操られて俺の目の前にやってくる。
「始まりのダンジョンを復活させたなら、これに見覚えがあるじゃろ」
「何でザキさんが、これを持ってるんだ?」
フワフワと宙を漂うのは、間違いなく古代の鉄貨。ただ、ダンジョンの中にあるものとは違い、保存状態は格段に良い。
「だから、ダンジョンに余が住んでおったと言っておろう。始まりのダンジョンのダンジョンマスター、サージ様の描かれた鉄貨。余の造った最高傑作の1つじゃ」
「ザキさんが、これを造ったのか」
「そうじゃ、まだまだ他にも色んな物が残っておったろ」
アイテムボックスからは次々と彫刻や調度品が出てくる。そのどれもが、ダンジョンの中にあった物と比べてもクオリティーが違う。
「古代竜だろ、ダンジョンで何してたんだよ」
「ふん、これなんかどうだ。お主の望みを叶えるじゃろう」
駄目押しで出てきたのは、竜の彫刻のガルグイユ。しかし、ただの彫刻で終わらない。ザキーサが息を吹き掛けると、ガルグイユの体が鈍色に光り出し、ゆっくりと動き始める。
「相談するまでもなく、お見通しみたいだな」
「余に隠し事は出来ん。これなら、竜鱗をドロップする魔物に持ってこい。何なら、戦ってみるか。ミショウよりも手強いかもしれんぞ」
ザキーサの言葉で、ガルグイユは俺とカシューを威嚇するように動き出す。敵意を剥き出しにした牙も、軽く振るう爪のどれをとっても偽りはない。そして、アイテムボックスからは次々とガルグイユを取り出し始める。
「どうした、早く片付けんと数が増えるぞ。それとも怖じ気づいたか?だがな、弱き者に始まりのダンジョンを守る資格はない」
「そんだけ言って弱ければ、キッチリと責任はとってもわうからな」
俺もカシューも腰に差した剣を引き抜く。カシューは聖剣を持つが、俺が持つのは魔剣と呼ばれる部類に属する。
魔力を糧として力を発揮する聖剣は、魔力をふんだんに使うことの出来る神々や熾天使が好んで使う。
一方の魔剣は、肉体と代償として力を発揮する。魔力に限りのある堕天使が使うことが多く、黒子天使であっても魔剣を使うことは忌み嫌われる。
剣士タイプのカシューは、生命の鼓動が産み出す魔力を聖剣に注ぎ込む。それに対して俺は、魔剣を使う。魔法を使うことも理由ではあるが、何故か俺は魔剣の方が愛称が良い。
そして、ガルグイユの確認することは1つ。強さの確認はもちろんだが、決定的な攻略の弱点があっては竜鱗をドロップする魔物としては相応しくない。聖剣に魔剣や魔法の攻撃と、一定以上の耐性を示す必要がある。
先の先タイプのカシューに対して、後の先タイプの俺。僅かなタイミングの違いはあるが、互いの剣がガルグイユの首筋に叩きつけられる。しかし、はね飛ばすことは出来ずに、衝撃が手に伝わってくる。
「レヴィン、こっちはかすり傷が付いた程度だ」
「ああっ、こっちも似たようなもんだ。ザキさんらしい嫌らしい相手だ」
今度はカシューは聖剣に炎を纏わせ、俺は右手に魔剣、左手に魔法で造った氷剣の二刀流。俺がガルグイユを氷漬けにして動きを止めると、今度はカシューの斬撃で炎に包む。
しかし、ガルグイユは何事も無かったかのように動き出す。
「カシュー、もう十分だ。ここまでにしておこう」
「どうした、レヴィン。ここからが本番だろ。久しぶりに全開だぞ」
黙って視線で合図を送ると、カシューもやっと気付いてくれる。視線の先にあるのは、ブランシュの恐い笑顔。ザキーサもブランシュの両腕から脱出しようと踠いているが、抜け出せないでいる。
「ヤバイのか、ヤバイんだよな……」
「ああ、あの笑みは相当怒っているな」
「ハロッ」
ブランシュの短く唱えた呪文で、ガルグイユが放つ鈍色の光は消え、元の彫刻へと戻ってゆく。
「さて、じっくりと説明してもらいましょうか。こんな危険なものを私のダンジョンに持持ち込んで何をするの?」
「いや、そのな、用意したのはザキさんで、俺達は試されただけなんだよな」
「でもね、レヴィンも何をしようとしてたか分かってるんでしょ」
「始まりのダンジョンを復活させたなら、これに見覚えがあるじゃろ」
「何でザキさんが、これを持ってるんだ?」
フワフワと宙を漂うのは、間違いなく古代の鉄貨。ただ、ダンジョンの中にあるものとは違い、保存状態は格段に良い。
「だから、ダンジョンに余が住んでおったと言っておろう。始まりのダンジョンのダンジョンマスター、サージ様の描かれた鉄貨。余の造った最高傑作の1つじゃ」
「ザキさんが、これを造ったのか」
「そうじゃ、まだまだ他にも色んな物が残っておったろ」
アイテムボックスからは次々と彫刻や調度品が出てくる。そのどれもが、ダンジョンの中にあった物と比べてもクオリティーが違う。
「古代竜だろ、ダンジョンで何してたんだよ」
「ふん、これなんかどうだ。お主の望みを叶えるじゃろう」
駄目押しで出てきたのは、竜の彫刻のガルグイユ。しかし、ただの彫刻で終わらない。ザキーサが息を吹き掛けると、ガルグイユの体が鈍色に光り出し、ゆっくりと動き始める。
「相談するまでもなく、お見通しみたいだな」
「余に隠し事は出来ん。これなら、竜鱗をドロップする魔物に持ってこい。何なら、戦ってみるか。ミショウよりも手強いかもしれんぞ」
ザキーサの言葉で、ガルグイユは俺とカシューを威嚇するように動き出す。敵意を剥き出しにした牙も、軽く振るう爪のどれをとっても偽りはない。そして、アイテムボックスからは次々とガルグイユを取り出し始める。
「どうした、早く片付けんと数が増えるぞ。それとも怖じ気づいたか?だがな、弱き者に始まりのダンジョンを守る資格はない」
「そんだけ言って弱ければ、キッチリと責任はとってもわうからな」
俺もカシューも腰に差した剣を引き抜く。カシューは聖剣を持つが、俺が持つのは魔剣と呼ばれる部類に属する。
魔力を糧として力を発揮する聖剣は、魔力をふんだんに使うことの出来る神々や熾天使が好んで使う。
一方の魔剣は、肉体と代償として力を発揮する。魔力に限りのある堕天使が使うことが多く、黒子天使であっても魔剣を使うことは忌み嫌われる。
剣士タイプのカシューは、生命の鼓動が産み出す魔力を聖剣に注ぎ込む。それに対して俺は、魔剣を使う。魔法を使うことも理由ではあるが、何故か俺は魔剣の方が愛称が良い。
そして、ガルグイユの確認することは1つ。強さの確認はもちろんだが、決定的な攻略の弱点があっては竜鱗をドロップする魔物としては相応しくない。聖剣に魔剣や魔法の攻撃と、一定以上の耐性を示す必要がある。
先の先タイプのカシューに対して、後の先タイプの俺。僅かなタイミングの違いはあるが、互いの剣がガルグイユの首筋に叩きつけられる。しかし、はね飛ばすことは出来ずに、衝撃が手に伝わってくる。
「レヴィン、こっちはかすり傷が付いた程度だ」
「ああっ、こっちも似たようなもんだ。ザキさんらしい嫌らしい相手だ」
今度はカシューは聖剣に炎を纏わせ、俺は右手に魔剣、左手に魔法で造った氷剣の二刀流。俺がガルグイユを氷漬けにして動きを止めると、今度はカシューの斬撃で炎に包む。
しかし、ガルグイユは何事も無かったかのように動き出す。
「カシュー、もう十分だ。ここまでにしておこう」
「どうした、レヴィン。ここからが本番だろ。久しぶりに全開だぞ」
黙って視線で合図を送ると、カシューもやっと気付いてくれる。視線の先にあるのは、ブランシュの恐い笑顔。ザキーサもブランシュの両腕から脱出しようと踠いているが、抜け出せないでいる。
「ヤバイのか、ヤバイんだよな……」
「ああ、あの笑みは相当怒っているな」
「ハロッ」
ブランシュの短く唱えた呪文で、ガルグイユが放つ鈍色の光は消え、元の彫刻へと戻ってゆく。
「さて、じっくりと説明してもらいましょうか。こんな危険なものを私のダンジョンに持持ち込んで何をするの?」
「いや、そのな、用意したのはザキさんで、俺達は試されただけなんだよな」
「でもね、レヴィンも何をしようとしてたか分かってるんでしょ」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる