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第23話 熾天使の肖像
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「やっぱり、古銭だね。しかも、プロトタイプだよ」
シーマが持ってきた鉄貨は、古びているように見えるが意図して加工されている。金貨や銀貨を引き立てる為に敢えて光沢が消されているが、鉄貨に加工された熾天使の肖像は細かく芸術性も高い。今の簡略化されたシンボルの熾天使とは違い、かなり精巧な仕上がりとなっている。
「それにしても、本当に似てるっすね」
マリクは、シーマが持ってきた鉄貨の肖像とブランシュの顔を交互に見つめている。
「そうなんだよ。似てるんだ、ブランシュさんにそっくりなんだよ」
「こんな美人の熾天使って、昔もいたんすね。ねえ、先輩」
マリクは俺に同意を求めてくるが、俺が同意すればブランシュを美人だと認めたことになり、それはそれで少し気まずい。
その会話にブランシュも反応し、僅かに表情が変わる。僅かに目尻が下がり目も細くなると、普通は笑い顔に見える。しかし、このブランシュの反応は違うことを、俺は痛いほど経験して知っている。そして、俺が判断を誤った時の代償は大きい。
「似てるな、確かに」
敢えてマリクの投げ掛けを避けて、“似ている”という驚きを前面に出す。それでも、まだブランシュの笑みは続き、俺がどう反応するか様子を見ている。
「こんな鉄貨が出たら、間違いなく大騒ぎになるだろ」
「どこが大騒ぎになるのかしら?」
鉄貨から白金貨までと幾つか硬貨はある。ただ鉄貨だけが熾天使の肖像で、他は全て神々の肖像になる。価値は違えども神々と対等に扱われた熾天使。それと似た熾天使が、第13ダンジョンの熾天使として現れたとなれば何かの関係性が疑われる。
「やっぱり、第13ダンジョンの得りはブランシュさんしかないっすよ。ラーミウも分かっててやったんすよ」
「それは無い。ラーミウは知らない」
「そんなの分かんないっすよ。可能性は無限大、俺は信じます。ラーミウもブランシュさんの魅力を認めてたんすよ」
最初に造られたダンジョンはブラックアウトし、ダンジョンの秘密を知る者はいない。
「ラーミウの目指す世界は、特に合理的なんだ。魔力を効率よく獲得することが全てで、鉄貨に注ぎ込まれた技術も労力も全てがムダでしかないんだ」
「そうね、ラーミウ様の知らない時代の話でも、不要として排除されたものに価値を見いだされるのは面白くないかもしれないわね」
それには、ラーミウを一番良く知るブランシュはも納得する。
「シーマ、あるのは古銭だけじゃないんだろ」
「そうだね、壊れたものも多いけど、調度品には価値があるかもしれない」
熾天使ラーミウであるからこそ、過去の遺産に価値を感じない。しかし、万能ではない者にとっては、ムダな技術や労力にも芸術としての価値を見出してしまう。
「ラーミウは面白くないだろな。ダンジョン攻略せずに、遺産の発掘に夢中になる冒険者達の存在ってやつは」
「それってマズくないっすか……」
そうなれば、古銭に描かれた熾天使とブランシュを結び付けるようなダンジョンアピールは出来ない。
「後はダーマさんに任せるしかないだろ。ダーマさんが価値があると判断すれば、俺は大人しく従うだけさ」
「巻き込むのね、後で怒られるわよ」
「いっちょかみしてきたのは、ダーマさんが先なんだ。俺は従順な教え子でしかないさ」
ダーマの渋い顔が浮かぶが、それはブランシュに対応して貰えばイイ。それに、このダンジョンから見つかった鉄貨の情報を、ダーマさんが把握していないわけがない。
程なくして、ダーマの息のかかった商人達がやってくる。しかし、商人に混ざってドワーフ族やエルフ族・ハーフリング族と、幅広い種族が揃っている。
明らかに、目的はダンジョンの調査だけではない。本格的な調査と同時に、イスイの森に住居や工房の建築が始まってしまう。
そして第13ダンジョンからは、竜鱗が排出されるという噂が広がっている。
「食えないおっさんだよ。未知のダンジョンの存在を利用して、ミショウの竜鱗を寄越せって言ってきやがる」
第3ダンジョンを攻略する上での必須アイテムが、第13ダンジョンで入手出来る。お互いのダンジョンに人が訪れ、ともにダンジョンは活性化する。
「でも、悪い話じゃないっすよね。ミショウの竜鱗なら、簡単に手に入るでしょ」
「次に何の噂を立てられるか分かったもんじゃない。俺達の仕事が増えるんだよ!」
シーマが持ってきた鉄貨は、古びているように見えるが意図して加工されている。金貨や銀貨を引き立てる為に敢えて光沢が消されているが、鉄貨に加工された熾天使の肖像は細かく芸術性も高い。今の簡略化されたシンボルの熾天使とは違い、かなり精巧な仕上がりとなっている。
「それにしても、本当に似てるっすね」
マリクは、シーマが持ってきた鉄貨の肖像とブランシュの顔を交互に見つめている。
「そうなんだよ。似てるんだ、ブランシュさんにそっくりなんだよ」
「こんな美人の熾天使って、昔もいたんすね。ねえ、先輩」
マリクは俺に同意を求めてくるが、俺が同意すればブランシュを美人だと認めたことになり、それはそれで少し気まずい。
その会話にブランシュも反応し、僅かに表情が変わる。僅かに目尻が下がり目も細くなると、普通は笑い顔に見える。しかし、このブランシュの反応は違うことを、俺は痛いほど経験して知っている。そして、俺が判断を誤った時の代償は大きい。
「似てるな、確かに」
敢えてマリクの投げ掛けを避けて、“似ている”という驚きを前面に出す。それでも、まだブランシュの笑みは続き、俺がどう反応するか様子を見ている。
「こんな鉄貨が出たら、間違いなく大騒ぎになるだろ」
「どこが大騒ぎになるのかしら?」
鉄貨から白金貨までと幾つか硬貨はある。ただ鉄貨だけが熾天使の肖像で、他は全て神々の肖像になる。価値は違えども神々と対等に扱われた熾天使。それと似た熾天使が、第13ダンジョンの熾天使として現れたとなれば何かの関係性が疑われる。
「やっぱり、第13ダンジョンの得りはブランシュさんしかないっすよ。ラーミウも分かっててやったんすよ」
「それは無い。ラーミウは知らない」
「そんなの分かんないっすよ。可能性は無限大、俺は信じます。ラーミウもブランシュさんの魅力を認めてたんすよ」
最初に造られたダンジョンはブラックアウトし、ダンジョンの秘密を知る者はいない。
「ラーミウの目指す世界は、特に合理的なんだ。魔力を効率よく獲得することが全てで、鉄貨に注ぎ込まれた技術も労力も全てがムダでしかないんだ」
「そうね、ラーミウ様の知らない時代の話でも、不要として排除されたものに価値を見いだされるのは面白くないかもしれないわね」
それには、ラーミウを一番良く知るブランシュはも納得する。
「シーマ、あるのは古銭だけじゃないんだろ」
「そうだね、壊れたものも多いけど、調度品には価値があるかもしれない」
熾天使ラーミウであるからこそ、過去の遺産に価値を感じない。しかし、万能ではない者にとっては、ムダな技術や労力にも芸術としての価値を見出してしまう。
「ラーミウは面白くないだろな。ダンジョン攻略せずに、遺産の発掘に夢中になる冒険者達の存在ってやつは」
「それってマズくないっすか……」
そうなれば、古銭に描かれた熾天使とブランシュを結び付けるようなダンジョンアピールは出来ない。
「後はダーマさんに任せるしかないだろ。ダーマさんが価値があると判断すれば、俺は大人しく従うだけさ」
「巻き込むのね、後で怒られるわよ」
「いっちょかみしてきたのは、ダーマさんが先なんだ。俺は従順な教え子でしかないさ」
ダーマの渋い顔が浮かぶが、それはブランシュに対応して貰えばイイ。それに、このダンジョンから見つかった鉄貨の情報を、ダーマさんが把握していないわけがない。
程なくして、ダーマの息のかかった商人達がやってくる。しかし、商人に混ざってドワーフ族やエルフ族・ハーフリング族と、幅広い種族が揃っている。
明らかに、目的はダンジョンの調査だけではない。本格的な調査と同時に、イスイの森に住居や工房の建築が始まってしまう。
そして第13ダンジョンからは、竜鱗が排出されるという噂が広がっている。
「食えないおっさんだよ。未知のダンジョンの存在を利用して、ミショウの竜鱗を寄越せって言ってきやがる」
第3ダンジョンを攻略する上での必須アイテムが、第13ダンジョンで入手出来る。お互いのダンジョンに人が訪れ、ともにダンジョンは活性化する。
「でも、悪い話じゃないっすよね。ミショウの竜鱗なら、簡単に手に入るでしょ」
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