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第17話 黒子天使の暴走
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「先輩、何かおかしいっすよ」
「何がおかしいんだ、報告は明確にしろって言ってるだろ!」
「地上の黒子天使達が、魔物に襲いかかってます」
第13ダンジョンに集まって来た、黒子天使達は約5千5百人。しかし、ダンジョンの中に入れた黒子天使達は2千人。残りの黒子天使達は、まだ地上に溢れている。
黒子天使の能力は、ダンジョンの中でのみ大きな力を発揮する。地上での暴走を防ぐ為に、黒子天使のスキルは魔力を大量消費する。だから、常に良質な魔力で満たされた、ダンジョンの中でしか十分な力が発揮出来ない。
だから地上に出た黒子天使は、翼のある人族程度の力しか発揮できない。それに姿が見えないのは、地上の人々にだけであって、魔物には黒子天使の姿がハッキリと見えている。
「カシュー以外にも、猛者がいるのか?」
「違うんすよ。カシューの出番はないというか……。信用出来ないと思うから、見た方が早いっすよ」
「分かったよ。モニターに映せ」
モニターに映し出されたのは、一方的に魔物を追い詰める黒子天使達の姿。第13ダンジョンのあるヒケンの森には、魔物が多く棲息している。数だけなら黒子天使よりも遥かに多い。
現在稼働しているダンジョンではなく、廃ダンジョンで街からは遠く離れている。その魔物達の森を大勢の黒子天使が抜けてくるのだから、魔物達にとってみれば格好の獲物でしかなく、少なくない犠牲が出ている。
もちろん黒子天使も人族と同じで、鍛練次第では能力を伸ばすことは出来る。地上で活動する黒子天使の中には、地竜ミショウとも渡り合える猛者もいるが、それは一握りでしかない。
「他はどうなってる?」
「まだ定点カメラはこれだけっすよ」
黒子天使の中には、傷付き怪我をしている者の姿も見える。しかし、前線で戦う者は全身に返り血を浴び、魔物達を明らかに圧倒している。
『おい、中で遊んでいるんなら、暴走を止めに来い』
そして、外の黒子天使達を守るために地上へと送ったはずのカシューからは、全くの逆の連絡が入る。
「どれだけ人手が居る?俺だけでイイのか?」
『ミショウとローゼを連れてきてくれ。ミショウは人型だぞ。外は、黒子天使で溢れてるんだからな。それと、足手まといだがマリクも連れてきてくれ』
「足手まといは余計じゃないっすか?それはイイんっすけど、どうします?」
珍しくカシューに文句を言い返さないかと思えば、マリクの視線の先にはブランシュが居る。ブランシュがダンジョンマスター代理であり、あくまでも黒子天使の仕事はダンジョンの維持管理になる。
第6ダンジョンは、熾天使フジーコも司令官ラーキもダンジョンに居ないが為に、自分達の好き勝手にやってきた。
でも、今は違う。
ダンジョン自体が初めての経験のブランシュであるが、このダンジョンの責任者はブランシュ。俺達が勝手に、意思決定や行動を決める権限はない。
「私も行きます!」
「でも、危ないっすよ。外じゃ、何が起こるか分からないっす。黒子天使の中にも、何が混ざり込んでいるか分からないっすよ」
「ダメです。それでも、私も一緒に行きます!」
しかしブランシュの決意は固く、マリクの反論を許さない。
「先輩っ」
「私“も”なんだ。悪くはないだろ。ダーマさんに連絡だけしておいてくれ。上手くやってくれるだろ」
地上へ転移すれば、カシューの報告通りに黒子天使達が、イスイの魔物を圧倒している。守るというよりは、一方的な虐殺に近い。組織だった行動はなく、見つけた魔物を追いかけまわし、死んでも尚攻撃し続ける猟奇的な光景。
「何だ、この魔力は……」
ただ驚いたのは、猟奇的な光景にじゃない。
「やっと来たか。地上もダンジョンの一部だ。早くしなと、森から一斉に魔物が逃げ出すぞ」
「ああ、ダーマさんには連絡した。最悪は回避してくれる。でも、どうするんだ?」
「ミショウに暴れさせる。それくらせんと、コイツらは止まらん」
「待ってください。ここは、私がやります」
そう言うと、ブランシュが翼を広げ空中へと舞い上がる。
「何がおかしいんだ、報告は明確にしろって言ってるだろ!」
「地上の黒子天使達が、魔物に襲いかかってます」
第13ダンジョンに集まって来た、黒子天使達は約5千5百人。しかし、ダンジョンの中に入れた黒子天使達は2千人。残りの黒子天使達は、まだ地上に溢れている。
黒子天使の能力は、ダンジョンの中でのみ大きな力を発揮する。地上での暴走を防ぐ為に、黒子天使のスキルは魔力を大量消費する。だから、常に良質な魔力で満たされた、ダンジョンの中でしか十分な力が発揮出来ない。
だから地上に出た黒子天使は、翼のある人族程度の力しか発揮できない。それに姿が見えないのは、地上の人々にだけであって、魔物には黒子天使の姿がハッキリと見えている。
「カシュー以外にも、猛者がいるのか?」
「違うんすよ。カシューの出番はないというか……。信用出来ないと思うから、見た方が早いっすよ」
「分かったよ。モニターに映せ」
モニターに映し出されたのは、一方的に魔物を追い詰める黒子天使達の姿。第13ダンジョンのあるヒケンの森には、魔物が多く棲息している。数だけなら黒子天使よりも遥かに多い。
現在稼働しているダンジョンではなく、廃ダンジョンで街からは遠く離れている。その魔物達の森を大勢の黒子天使が抜けてくるのだから、魔物達にとってみれば格好の獲物でしかなく、少なくない犠牲が出ている。
もちろん黒子天使も人族と同じで、鍛練次第では能力を伸ばすことは出来る。地上で活動する黒子天使の中には、地竜ミショウとも渡り合える猛者もいるが、それは一握りでしかない。
「他はどうなってる?」
「まだ定点カメラはこれだけっすよ」
黒子天使の中には、傷付き怪我をしている者の姿も見える。しかし、前線で戦う者は全身に返り血を浴び、魔物達を明らかに圧倒している。
『おい、中で遊んでいるんなら、暴走を止めに来い』
そして、外の黒子天使達を守るために地上へと送ったはずのカシューからは、全くの逆の連絡が入る。
「どれだけ人手が居る?俺だけでイイのか?」
『ミショウとローゼを連れてきてくれ。ミショウは人型だぞ。外は、黒子天使で溢れてるんだからな。それと、足手まといだがマリクも連れてきてくれ』
「足手まといは余計じゃないっすか?それはイイんっすけど、どうします?」
珍しくカシューに文句を言い返さないかと思えば、マリクの視線の先にはブランシュが居る。ブランシュがダンジョンマスター代理であり、あくまでも黒子天使の仕事はダンジョンの維持管理になる。
第6ダンジョンは、熾天使フジーコも司令官ラーキもダンジョンに居ないが為に、自分達の好き勝手にやってきた。
でも、今は違う。
ダンジョン自体が初めての経験のブランシュであるが、このダンジョンの責任者はブランシュ。俺達が勝手に、意思決定や行動を決める権限はない。
「私も行きます!」
「でも、危ないっすよ。外じゃ、何が起こるか分からないっす。黒子天使の中にも、何が混ざり込んでいるか分からないっすよ」
「ダメです。それでも、私も一緒に行きます!」
しかしブランシュの決意は固く、マリクの反論を許さない。
「先輩っ」
「私“も”なんだ。悪くはないだろ。ダーマさんに連絡だけしておいてくれ。上手くやってくれるだろ」
地上へ転移すれば、カシューの報告通りに黒子天使達が、イスイの魔物を圧倒している。守るというよりは、一方的な虐殺に近い。組織だった行動はなく、見つけた魔物を追いかけまわし、死んでも尚攻撃し続ける猟奇的な光景。
「何だ、この魔力は……」
ただ驚いたのは、猟奇的な光景にじゃない。
「やっと来たか。地上もダンジョンの一部だ。早くしなと、森から一斉に魔物が逃げ出すぞ」
「ああ、ダーマさんには連絡した。最悪は回避してくれる。でも、どうするんだ?」
「ミショウに暴れさせる。それくらせんと、コイツらは止まらん」
「待ってください。ここは、私がやります」
そう言うと、ブランシュが翼を広げ空中へと舞い上がる。
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