10 / 23
二章「迷い子に望みはない」
03 ※(アダム視点)
しおりを挟む「困った子ね、まったく・・・」
そう言うと、夏樹は手提げバックを開いてハンカチを雪子の前に差し出した。
「あっ、クマさんだ!」
「ふふっ、可愛いでしょ?」
雪子は、受け取ったハンカチで涙を拭きながら、チラチラと夏樹の顔を見ていた。
「な~に・・・?」
「別に・・・なんでもないよ」
「そういえばさ、あんた、あたしを憎んでたんじゃなかったの?」
「うん、憎んでたよ。それに恨んでたし・・・」
「あら?はっきり言うのね」
「それだけじゃないよ。思いっきり!大っ嫌いだったもん!」
「あはは、そこまで言う?」
「だって、本当の事だし」
なぜなのかは分からないが、夏樹は照れながらマスクの紐に手をかけた。
「ちょっと、ふーちゃん?」
「な~に・・・?」
「そこまで言わせておいて、どうしてって訊かないの?」
「ふふっ、答えは、あたしの目の前にいるじゃない?」
そう言うと夏樹はマスクを外して見せた。
というより、マスクをしたままではコーヒーが飲めないと言った方が正解だろう。
「うわっ・・・うそ?」
「ん?嘘って、何が?」
「だって・・・」
「もしかして、あたしって綺麗?」
「あはは・・・。もう~、ふーちゃんったら」
泣いたカラスがもう笑ったがそのまま適応している雪子を見ながらではコーヒーが飲めないので、窓の外に視線を移しながら夏樹はコーヒーを口にした。
あらあら・・・鬼の形相なんかしちゃったら、せっかくの美人が台無しなんじゃないかしら?
とはいえ、ここからは元妻の顔までは見えないけど、
と~っても怖い雰囲気がビシ!ビシ!と、ここまで伝わってきてるわよ。
京子、あたしを恨む事で今を生きる事は出来てもね、それじゃ、いつまでも明日が見えないのよ。
京子、理解した?
さっきね、わざとなのよ!
わざと、あんたに見せつけてあげたのよ!
あんた、それに気がついていなんでしょ?
あんたがいつまでもウジウジとあたしの事を恨む毎日を送ってるから見せつけてあげたの。
あんたが自分は悪くないと思う事はあんたの勝手だけど。
でもね、そんなあんたのままじゃ、いつか子供たちにも出て行かれちゃうわよ?
とはいっても、京子?
あんたにとって雪子の存在は、ある意味において地獄かもね?
それよりも、昔の旦那が女性になっていたって事の方がショックだったかしら?
「ふーちゃん、何、考えてるの?」
「ん・・・?どうして?」
「だって、さっきからずっと窓の外を見てるし」
「ずいぶん雪が降るわね~って思ってね」
「でも、ふーちゃんって綺麗なんだ!」
「あい・・・?」
「それだったらマスクなんかしなくも大丈夫だよ」
「だから昼間マスクをしていないと、寝る時に咳が止まらなくなるって言ってるでしょ?」
「なんか、もったいないね」
「すっかり揉まれる事を忘れちゃってるあんたの可愛い胸の方がもったいないわよ」
「ふーちゃん、揉みたいの?」
「ほら、ウエイトレスさんが聞いてるわよ」
「へへへ・・・」
変わらないわね、そんなとこも。雪子は、今も、あの頃のまま・・・。
そして、あの日から、雪子の時間は止まっていたのね・・・やっぱり・・・。
そう言うと、夏樹は手提げバックを開いてハンカチを雪子の前に差し出した。
「あっ、クマさんだ!」
「ふふっ、可愛いでしょ?」
雪子は、受け取ったハンカチで涙を拭きながら、チラチラと夏樹の顔を見ていた。
「な~に・・・?」
「別に・・・なんでもないよ」
「そういえばさ、あんた、あたしを憎んでたんじゃなかったの?」
「うん、憎んでたよ。それに恨んでたし・・・」
「あら?はっきり言うのね」
「それだけじゃないよ。思いっきり!大っ嫌いだったもん!」
「あはは、そこまで言う?」
「だって、本当の事だし」
なぜなのかは分からないが、夏樹は照れながらマスクの紐に手をかけた。
「ちょっと、ふーちゃん?」
「な~に・・・?」
「そこまで言わせておいて、どうしてって訊かないの?」
「ふふっ、答えは、あたしの目の前にいるじゃない?」
そう言うと夏樹はマスクを外して見せた。
というより、マスクをしたままではコーヒーが飲めないと言った方が正解だろう。
「うわっ・・・うそ?」
「ん?嘘って、何が?」
「だって・・・」
「もしかして、あたしって綺麗?」
「あはは・・・。もう~、ふーちゃんったら」
泣いたカラスがもう笑ったがそのまま適応している雪子を見ながらではコーヒーが飲めないので、窓の外に視線を移しながら夏樹はコーヒーを口にした。
あらあら・・・鬼の形相なんかしちゃったら、せっかくの美人が台無しなんじゃないかしら?
とはいえ、ここからは元妻の顔までは見えないけど、
と~っても怖い雰囲気がビシ!ビシ!と、ここまで伝わってきてるわよ。
京子、あたしを恨む事で今を生きる事は出来てもね、それじゃ、いつまでも明日が見えないのよ。
京子、理解した?
さっきね、わざとなのよ!
わざと、あんたに見せつけてあげたのよ!
あんた、それに気がついていなんでしょ?
あんたがいつまでもウジウジとあたしの事を恨む毎日を送ってるから見せつけてあげたの。
あんたが自分は悪くないと思う事はあんたの勝手だけど。
でもね、そんなあんたのままじゃ、いつか子供たちにも出て行かれちゃうわよ?
とはいっても、京子?
あんたにとって雪子の存在は、ある意味において地獄かもね?
それよりも、昔の旦那が女性になっていたって事の方がショックだったかしら?
「ふーちゃん、何、考えてるの?」
「ん・・・?どうして?」
「だって、さっきからずっと窓の外を見てるし」
「ずいぶん雪が降るわね~って思ってね」
「でも、ふーちゃんって綺麗なんだ!」
「あい・・・?」
「それだったらマスクなんかしなくも大丈夫だよ」
「だから昼間マスクをしていないと、寝る時に咳が止まらなくなるって言ってるでしょ?」
「なんか、もったいないね」
「すっかり揉まれる事を忘れちゃってるあんたの可愛い胸の方がもったいないわよ」
「ふーちゃん、揉みたいの?」
「ほら、ウエイトレスさんが聞いてるわよ」
「へへへ・・・」
変わらないわね、そんなとこも。雪子は、今も、あの頃のまま・・・。
そして、あの日から、雪子の時間は止まっていたのね・・・やっぱり・・・。
25
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる