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かがみうつし
しおりを挟む躑躅の部屋に篝の使い物だと言って大きな板のようなものが運ばれて、寝台のすぐ脇に置かれて数日が経っていた。
この日当たりの良い部屋は、篝が時々通ってくれるからこそ躑躅に与えられた物だ。だから躑躅はその大きな板に触る事も、覆いを捲る事もなかった。
だが、後になって何処かへ隠すか、覆いを捲れないようにきつく縛っておくべきだったと後悔した。
諺で言うように、後悔先に立たず、と言うのだがのんびりとした気性の躑躅は思いもよらなかったのだ…。
すらりとした篝に「お前少し太ったか?」などと言われて躑躅は恥ずかしくてしょうがなかった。しかも今日も化粧をほとんどしていないし、髪は乱れているし、うたた寝していた所を突かれてまた阿保面などと言われてしまい羞恥で身が焦げそうだった。
身綺麗にしてはいるつもりだが、何故かいつも油断しきっている所に篝は来てしまう…。
嬉しいのだけれど…。
嬉しくていつも幸せで涙が出そうになるのだけれど…。躑躅は赤らむ頬を押さえた。
「やっぱり茶は後でいい」
躑躅の身体は捕まって、篝の腕に捕らえられた。細身に見える身体の何処にそんな力があるのか躑躅の身体をぽーんと寝台に投げる。どさり、とは落ちずにふんわり、とさりと落ちるのは篝のあやかしの力のなせる技なのか。
「え、えっ!?」
あわあわと躑躅がもたついている間にしゅるりと帯が解かれ、同じように帯を解いた半裸の篝が上からのしかかってきた。
躑躅の大好きな赤い髪が広がる。夢のように美しい顔が間近にあり、鼻先で躑躅の胸元を探ると、艶やかな赤い唇が待っていたようにぷっくりとした躑躅の乳首を口に収めた。
あぁぁぁ、篝様、ずるいです、ずるいです。わたしこそ男の強大なあやかしになって、篝様をこうして寝台に縫い付けてその花より赤い唇と、男の方のくせにそのいやらしくも愛らしい小さな乳首を可愛がりたいのに…あ、ああ、だめですそこは…
躑躅の頭の中はいつも通りに忙しく回転しあられもないことを考えていたが、それを口に出して言えるはずもなく揉まれて、舐められて、身悶えた。
仰向けで顔が近いと、躑躅は首まで真っ赤になり慣れる事がない。繋がって優しく突かれていても、恥ずかしさのあまり顔を隠して、身を捩る。
その押し殺した喘ぎも、身を捩った時に中が擦れるのも良いのだが、篝はあえて言わなかった。
とうとう躑躅は篝に背を向けて寝台に突っ伏して、ぜいぜいと息をする。真っ赤な顔で、はしたなく涎を垂らす姿など決して好きな方に見られたくはない。
するり、ぱさり、と乾いた音がしたが、躑躅は身じろぎもせずじっとしていた。少しでも息を整えたかった。
いいか、と篝の手が腰にかかり、また熱い塊が後ろから挿入ってきた。躑躅が嫌と言うはずがなかった。後背位の方が気が少し楽だった。布団を噛んで変な声が出ないように出来たし、耐えきれずにあんあんと喘ぐ顔を見られないですむからだ。
おかしな声が出るのを必死に耐えているのに、腰の動きは淫らになり、胸もこねられる。耳に唇が触れて可愛いなと舐められる。
可愛いはずがない。こんな赤い顔で、息を乱して、涙目で可愛いはずがない。躑躅は首を振った。
後ろから抱かれながらいつしか膝立ちの格好で身を起こされていた。
躑躅は悲鳴を上げた。
いつもと違う。
目の前には大きな姿見があって。
篝の乱れた赤い髪と白い腕が躑躅の身体に絡まっていた。
いつもどこかに苦いものを隠したような氷の美貌が艶やかに微笑み、意地悪な声で囁いた。
「躑躅はいつも逃げるし隠すから、こういうのも良いだろう?良く見える」
ダメと言った躑躅の口の中に、篝の指が入った。後ろから押し上げるように抜き差しされて、どの指を咥えさせられたのかもわからないが、躑躅が篝を噛める筈がなかった。この美しいあやかしに傷一つつけられる筈がない。
閉じられぬ口から甘い嬌声が漏れる。
濡れる、溢れる、あふれて、煽られ、喘がされ、陽の沈む前から躑躅は息も絶えだえになった。
その肌を柔らかい夕日と篝が味わい、陽が山の稜線に隠れても、甘い声は花園に密やかに響いた。
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