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85 ワクワク! スパイ大作戦

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 「あのプリ◯ス運転してた奴、元上司だったわッ!」


 ソフィアがぷりぷり怒っているのを見下ろす従兄達2人。


 「アタシが死んだ後で里奈ちゃんも殺したのねッ! 絶対に許さないんだからッ!!」


 なんとあの暴走車の運転手はソフィアの前世の社畜時代の部長だったらしい。


 「なんちゅうか、酷いな?」

 「ああ。あんな金属の塊を扱うのだからもっと慎重に動かさんと民が迷惑するな。アイツは縛首刑でいいんじゃないか?」


 異世界の王子様は流石言うことが物騒である。


 「まあ、警察にしょっ引かれて行ったみたいだから、何らかの処罰はされるでしょう。こっちの世界の法律に任せる事にして、次行ってみよー!」


 ソフィアはノリノリで次の作戦に移るようである・・・


 「結局ノリノリじゃねえか」


 従兄は肩を竦めたが婚約者は片方の眉をいつものように上げただけだった。



×××



 真夜中の企業ビルはハッキリ言って不気味だ。

 昼間なら人が大勢働いていて建物自体が生きているように感じられるのだが、夜になると全くといって良いくらいに生命の息吹が感じられない。

 時計の秒針が時を刻む音や時折モーター類の微かな音がして偶に真っ暗な中で赤や緑の電源ランプの小さな光が見えたりするのだが、それが却って気味が悪く感じられる。

 そんな無機質な建物の一角。

 たくさんオフィスデスクが並ぶ部屋にソフィア達は移転してきた。


 「さてと~ 元会社に潜り込んだけど研究室は後回しっと・・・」

 「どうするんだ?」

 「最上階にある社長室に用事があるかな? 後は秘書室の金庫と、元上司の机は、ここの辺りだったような・・・ お。あったあった」


 デスクの引き出しの中から鍵束を引っ張り出すとニンマリ笑うソフィア。


 「私の研究結果とか、絶対に金庫の中だからね。返しても~らおう」

 「別に鍵などいらんだろう?」


 顎に手を置いて呆れ顔の婚約者。


 「え?」

 「魔法を使えるだろうが。体内に温存した魔力が尽きない限りは使えるだろう? 此処にどうやって来たか考えてみろ」

 「・・・そうだった。ついスパイ映画みたいにワクワクしちゃって忘れてた」


 言われて初めて目が点になったソフィアである。


 「なあ、スパイって何だ?」


 キョトンとしたアジェスとシルファの顔を見て後で007でもブルーレイで探すか~、と苦笑いをするソフィアだった。



×××



 「名前も書いてないのにどれが自分のなのかよくわかるなぁ」

 「自分の考え出したものだからね。試作品は研究室のだろうと思うけど。ファイルは一纏めにしてるみたいね」

 「何で使われてないんだ?」

 「私の考えるものは次世代機器って言われてたから、世に出すには早すぎるって言われてたのよ。売り出すには時期を見計らうってよく言われてたの」


 表紙部分に㊙マークの入ったファイルを次々に机の上に置いていく。


 「だから当分売り物にならないって。悔しいからすぐ売れそうなものも作ってたけど。こうやって置いてるって事は海外に情報を売りさばくつもりだったのかもね」

 「コピーはないのか?」

 「さあ?」

 「フム。追いかけさせるか」


 シルファがファイルに手をかざすとキラキラとした光の粒がファイルの周りをくるくると周り、部屋の外に出ていく。


 「何かあるみたいだな探索魔法サーチに引っ掛かった行くぞ」


 部屋を出る前に、ソフィアが指を鳴らすと机の上の書類が舞い上がり次々と燃え尽きて灰が机に降り注ぐ。


 「勿体なくないか?」


 2人が心配するが、


 「別に。頭ン中に入ってるから。それに魔法で構築する方が手っ取り早いよ」


 廊下を歩きながら肩を竦めた。


 「ここだな」

 「なんだここ? エラく厳重な扉だな?」

 「研究室、でも記憶にあるとこじゃないから他部署だわ。まー私が死んじゃったから続きを別部署に任せたんじゃないかしら?」


 その1時間後。


 研究室内で火災警報器が誤作動を起こして、警備員が慌ててやって来たが部屋に特に異常はなかった。


 但し翌朝、研究員達の机の上は灰だらけで過去社員だった者が作っていたとされる試作品も資料も全て焼失していた為、警察を呼ぶ騒ぎになったのは言うまでもない。

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