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76 神の箱庭

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 「つまり、魔人って私達にとっては創造主ってことで合ってるのよね?」

 『多分? 人類の概念ではそうじゃないかな。僕らは箱庭って呼んでるけど君たちは世界っていうみたいに呼び名が違うだけサ』



×××



 ソフィアの私室。

 クリーム色を基調に優しいブルーを挿し色にしたファブリックに統一され、アイボリーの壁紙にチョコブラウンの家具達が並んでいる。

 優しい配色は落ち着いて寛げる。

 ソファーに並んで座るのは白い丸襟ブラウスに赤いボウタイを結びミモレ丈の青いスカートを身に着けたソフィアとバッチリ和装テイスト袴姿のシルファ王子。

 テーブルを挟んで魔術師姿の里奈が座り、その直ぐ側に丸い形の靄が浮かんでいる。

 人払いをしてある為他には人影はない。


 「里奈さんと私の前世はここと違い地球っていう星の日本という国ですが」

 『あ。隣の箱庭だね』


 近いんだ・・・


 「その隣の箱庭にあるゲームっていう遊びの中の1つに『ドキ☆キュン魔法少女リーナ♡貴方のハート狙い撃ちしちゃうぞ☆』っていうのがあってですね。そのシナリオにすっごくこの世界が似てるんです」


 リーナの中の人、里奈が噛むことなく一気にスラスラと長いゲーム名を言えるのを尊敬の眼差しで見るソフィア。


 『まあ、よくあることだねー』


 ――事も無げに言いやがったなこの霞。


 『生まれ変わりでしょ? ま、普通は前世の記憶なんか無くなるけどね。よっぽど以前の生で思い残したことがあるんじゃないかな?』


 ふわふわといろんな形に変わりながら答える魔人。


 「成る程・・・」

 『水槽ってあるじゃん? 箱庭ってあれだと思ったらいいんだよ』

 「え?」

 『いくつも水槽を並べて魔人同士で思い思いに作ったのを見比べて楽しむんだよ。お互いに自分の最高傑作ってやつを自慢するんだよね』

 「はぁ」

 『作っておいて自然に中の生き物が成長するのを楽しむヤツもいれば、模様替えを定期的にしないと気がすまないヤツもいるし、中の生き物を総入れ替えするヤツもいるんだ』

 「・・・」

 『中には飽きちゃってそのまま放っといて死なせるやつもいるし、生き物が増えすぎて隣の水槽にお裾分けをするヤツもいるんだよ。』

 「「「・・・・」」」

 『コレは比喩だからね? 実体がない状態、つまり肉体がないからできることだから。稀に肉体ごと別の水槽に入れ変えちゃう場合もあるけど、それは随分前にやめようってことになったんだ』

 「何で?」

 『新しい水槽に馴染めなくてすぐ死んじゃうからサ。その個体が新しい水槽に馴染めるまでずっと見守ってくれるマメな魔人は少ないんだよ』

 「なんか、本当に熱帯魚みたいですね」


 眉をしかめる里奈。

 熱帯魚扱いは好まないのかもしれない。


 『この説明だと理解やすいでしょ? それとそのゲームによく似てるってのは仕方ないんだよね。隣の水槽の中の気に入った部分だけ真似ちゃったり、何となくいいなあ~ って無意識に似た物を自分の水槽に投入しちゃうことってあるからね。但しこの世界ではこっちがオリジナルで、お隣は僕のを一部再現したって感じだね』

 「じゃあ、私達2人はあっちから受け入れた熱帯魚?」

 『ううん。覚えはない。でもあっちの水槽の蓋が偶々空いてこっちも空いてたら飛び移れる元気なのもいるって事だよ。それは僕らにとっては無許可に近いけど、それ自体は止められないからさ』

 「何で?」


 キョトンとするソフィアを見て、何故か彼女の腰に回しているシルファ王子の手に力が入る。


 『通常なら蓋は閉じてる。餌を与えたり模様替えをしたりする時間以外はネ。その短い時間っていう偶然を自ら引ける強い意思や魂だから飛び移れるんだ。それってすごい強運でしょ? 面白いからそのままにしとくよ普通なら』

 「普通じゃない魔人もいるってこと?」

 『自分の箱庭は完成度が高いっていうプライドの高い連中なら見つけ次第殺しちゃうね。僕はそれ勿体ないって思うけどサ』


 ここの持ち主がポチで良かったのかもしれない・・・

 ちょっとだけ背中に冷や汗が流れたソフィアと里奈だった。






 「でもコッチが先なら、向こうにゲームができるの早すぎじゃないですか?」

 『君達人類と僕ら魔人じゃ時間軸が違うし世界観も違うからね。僕のを見たタイミングと隣が水槽をいじったタイミングが一緒とは限らないからね』


 ――成る程。


 よく分からないといった表情の里奈と納得のソフィアである。

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