上 下
74 / 110

74 幽霊みたいな存在〜元リーナ視点②〜

しおりを挟む
 本人の意志を無視して王家の決めた政略婚の為の婚約者より私のほうが王子の近くにいるから卒業パーティーのエスコートも引き受けてくれたのだと、勝手に思い込んでいた。


 それが――


 「入場するまでのエスコートはしてやっても良いと伝えたが、会場入りした後はすぐに離れるように申し伝えたはずだ。しかも私の婚約者に向かいぞんざいな口のきき方をする事を誰が貴様に許したのだ?」


 そう言って私を見つめる目は、私の夢見ていたような甘やかなものではなく何処までも冷たく凍えるような青い瞳。


 「今日が王都で綺羅びやかな世界を愉しむ最後の時間だったからこそ、お前のような図々しい女のエスコートも引き受けてやったがソフィアに対して無礼な口をきくお前など、この場から直ぐに最前線へ送り込んでやる」


 微笑んだ美しい顔はまるで悪魔だった。



×××



 偶々王子が婚約者をエスコート出来ない状況になってたから引き受けてくれたなんて、後で教えて貰った所で、どうしようもないじゃないのッ!

 あのクソ近衛と魔術師達ッ!!

 そもそもシルファ王子だって先に理由をちゃんと教えなさいよッ!

 あーもうッ!!

 明日は入団テストだから早く寝ろって?腹が立って寝られるわけないじゃないッ!

 そう思ってたら眼の前に現れた黒い何かに話しかけられたの。



×××



 『アンタ、今の自分がいる場所が嫌なんでしょ? 俺と一緒に来る?』



 私は一も二もなく頷いたのだ。

 こんな辺鄙な土地になんていられる訳無いじゃない。

 私は都会の女なのよッ!


 ――それが、身体を失う事だったなんて知りもしないで――
 


×××



 魔人と名乗った靄みたいな存在と一緒に空に浮いた時、ベッドの上に身体が取り残されたけどちゃんと息をしてたのは確認した。

 だからずっと意識がなくなって眠ったままになるんだって勝手に思い込んでた。

 だから闘技場で私を見つけた時、何故私の身体が動いてるのかが疑問だった。


 でも嫌な予感がした。


 魔人が


 『消える予定だった』


 と言ったから――


 魔力も打ち出される魔法も、そして身体能力も圧倒的に違うあの女に翻弄された魔人が降参した時、


 『さっきのリナって子が『小娘』の元の身体なんだろう?』


 私と魔人の器になる予定だったスタンという名の男の問いに


 「ええ。ただ、前世の記憶に塗り替えられた魂が今は中に居て動いてます。本来ならんでしょ? ということは、今のリーナさんの身体の持ち主は里奈さんじゃないでしょうか?」


 あの女がそう言ったのよ。そしたら魔人の奴悪びれもせずに


 『そうだよ』


 って――


 じゃあ私は死んじゃってるってことじゃない?!

 なんで? どうして?

 どうしたら生き返るの?

 でも私の身体は生きてるのよね?


 え? 私ひょっとして幽霊みたいになっちゃったって事?


 えぇー・・・・



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

王太子の愚行

よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。 彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。 婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。 さて、男爵令嬢をどうするか。 王太子の判断は?

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい

tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。 本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。 人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆ 本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編 第三章のイライアス編には、 『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』 のキャラクター、リュシアンも出てきます☆

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

悪役令嬢ですか?……フフフ♪わたくし、そんなモノではございませんわ(笑)

ラララキヲ
ファンタジー
 学園の卒業パーティーで王太子は男爵令嬢と側近たちを引き連れて自分の婚約者を睨みつける。 「悪役令嬢 ルカリファス・ゴルデゥーサ。  私は貴様との婚約破棄をここに宣言する!」 「……フフフ」  王太子たちが愛するヒロインに対峙するのは悪役令嬢に決まっている!  しかし、相手は本当に『悪役』令嬢なんですか……?  ルカリファスは楽しそうに笑う。 ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

処理中です...