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彼は戦士だったギルド長らと違い未だに魔法の腕は落ちてないし、自分は冒険者に戻ってもそこそこ戦えるとは思っていた。
なら、また現役に戻って稼ぐかとも考えるが長い事現場に行っていない為やっていける自信も正直言って無い。
冒険者は時に命が危うくなる過酷な仕事だからこそ収入も高くなるのだ。
そこへ自分の身を再び投じるのにも躊躇いがあった。
そもそもパーティーを組んでいたから長くやっていけたのだ。
彼は魔法はどうあれ武術は苦手だったのだ。
鬱々とやるせない毎日を送っていたが、ある日憂さ晴らしに入ったカジノのルーレットで1人勝ちで結構な金を稼げたのだ。
――こりゃあいい!
その事をきっかけにすっかりギャンブルにハマってしまうのだが、その後通うも勝ち負けを繰り返し何とか取り戻そうとムキになり気がつけば借金が雪だるま式に増えていた。
何とか元金の支払いを済ませたものの、過去冒険者として稼いでいた貯金は底をつきギルドの給料から残った利息を払う為今までのようないい暮らしは出来なくなった。
頭を悩ませた結果、ギルドの中でもガラの悪い連中に依頼の横流しをする事を思い付いた。
彼らに楽で比較的大金になる依頼を斡旋して中間マージンを巻き上げるのだ。
勿論その手の依頼は掲示板には張り出さず、ギルドが受け取る予定の手数料を丸々自分の懐に仕舞った。
そんな事を繰り返していた時どうやらベヒモスが出現たらしいという噂話がギルド幹部に通達があった。
――調べると場所はどうやら辺境伯領の魔の森らしい。
ベヒモスといえば以前から魔石を呼ぶという噂があった。
大きいと言っても所詮土属性の大人しい魔物だ。
――従魔に出来れば・・・
そんな事を考えていた時以前から裏取引で情報を横流ししては楽で実入りの良い依頼を優先して渡してやっていた他国の冒険者達が自分の前にやって来て唆されたのだ。
『なあ、もっと簡単に金になりそうな情報はないのか? 山分けにすりゃあお互いにwin-winだろ?』
信頼していた訳では無いが使えると思ったのだ。
それは彼らの中にAランクのテイマーがいたからだ。
伝説の魔物と言っても所詮は獣だ。
テイムできればベヒモスから魔石を手に入れられる。
彼は情報を売ったのだーー
『で? 結果はどうだったのぉ?』
彼の頭に直接投げ込まれた不快な思念波。
ハッと気付いてあたりを見回す。
薄暗い廊下のほんの2メートルくらい離れた所に魔術師の黒いローブをスッポリ被った背の低い人影が立っていた。
『ベヒモスが現れてどうなったのさ? そいつ等がテイム出来たの?』
「何だお前、此処は子供が彷徨いて良いような場所じゃないんだ。さっさと出ていけッ!」
自分の頭の中で考えていた事を覗かれたような気がして思わず大声を上げたが、その子供? は肩を竦める様なポーズをして
『やだなあ見た目で直ぐに判断するんだからさ。子供じゃないよ』
そういった途端に彼のまわりから冷気が放たれ、元魔術師の足元が凍りついた。
「うわっ何だ!」
『騒がないの。アンタ結構いい器だね。2人分位ならイケそうだから、貰うね』
「何をする気だッ」
廊下に大声が響いた。
「なんだ?! どうしたッ」
ギルドマスターの執務室のドアと受付フロアが繋がる廊下はそう長くなく、彼の大声は筒抜けになり元同僚のギルドマスターと、ギルドの職員が別々のドアから顔を出した。
『やだなあ大声だしちゃってさあ』
なら、また現役に戻って稼ぐかとも考えるが長い事現場に行っていない為やっていける自信も正直言って無い。
冒険者は時に命が危うくなる過酷な仕事だからこそ収入も高くなるのだ。
そこへ自分の身を再び投じるのにも躊躇いがあった。
そもそもパーティーを組んでいたから長くやっていけたのだ。
彼は魔法はどうあれ武術は苦手だったのだ。
鬱々とやるせない毎日を送っていたが、ある日憂さ晴らしに入ったカジノのルーレットで1人勝ちで結構な金を稼げたのだ。
――こりゃあいい!
その事をきっかけにすっかりギャンブルにハマってしまうのだが、その後通うも勝ち負けを繰り返し何とか取り戻そうとムキになり気がつけば借金が雪だるま式に増えていた。
何とか元金の支払いを済ませたものの、過去冒険者として稼いでいた貯金は底をつきギルドの給料から残った利息を払う為今までのようないい暮らしは出来なくなった。
頭を悩ませた結果、ギルドの中でもガラの悪い連中に依頼の横流しをする事を思い付いた。
彼らに楽で比較的大金になる依頼を斡旋して中間マージンを巻き上げるのだ。
勿論その手の依頼は掲示板には張り出さず、ギルドが受け取る予定の手数料を丸々自分の懐に仕舞った。
そんな事を繰り返していた時どうやらベヒモスが出現たらしいという噂話がギルド幹部に通達があった。
――調べると場所はどうやら辺境伯領の魔の森らしい。
ベヒモスといえば以前から魔石を呼ぶという噂があった。
大きいと言っても所詮土属性の大人しい魔物だ。
――従魔に出来れば・・・
そんな事を考えていた時以前から裏取引で情報を横流ししては楽で実入りの良い依頼を優先して渡してやっていた他国の冒険者達が自分の前にやって来て唆されたのだ。
『なあ、もっと簡単に金になりそうな情報はないのか? 山分けにすりゃあお互いにwin-winだろ?』
信頼していた訳では無いが使えると思ったのだ。
それは彼らの中にAランクのテイマーがいたからだ。
伝説の魔物と言っても所詮は獣だ。
テイムできればベヒモスから魔石を手に入れられる。
彼は情報を売ったのだーー
『で? 結果はどうだったのぉ?』
彼の頭に直接投げ込まれた不快な思念波。
ハッと気付いてあたりを見回す。
薄暗い廊下のほんの2メートルくらい離れた所に魔術師の黒いローブをスッポリ被った背の低い人影が立っていた。
『ベヒモスが現れてどうなったのさ? そいつ等がテイム出来たの?』
「何だお前、此処は子供が彷徨いて良いような場所じゃないんだ。さっさと出ていけッ!」
自分の頭の中で考えていた事を覗かれたような気がして思わず大声を上げたが、その子供? は肩を竦める様なポーズをして
『やだなあ見た目で直ぐに判断するんだからさ。子供じゃないよ』
そういった途端に彼のまわりから冷気が放たれ、元魔術師の足元が凍りついた。
「うわっ何だ!」
『騒がないの。アンタ結構いい器だね。2人分位ならイケそうだから、貰うね』
「何をする気だッ」
廊下に大声が響いた。
「なんだ?! どうしたッ」
ギルドマスターの執務室のドアと受付フロアが繋がる廊下はそう長くなく、彼の大声は筒抜けになり元同僚のギルドマスターと、ギルドの職員が別々のドアから顔を出した。
『やだなあ大声だしちゃってさあ』
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