32 / 110
32 通過儀礼は拳?
しおりを挟む
「だって、性別はないんだから自由な名前でいいじゃないの?」
首を傾げる美少女に向かい鼻面に若干シワを寄せるベヒモス。
確かに魔獣と違い魔物は性別がない種類が多い。
『確かに自由ではあるだろう。しかしそのネーミングでは威厳がなさすぎぬか?』
――ベヒモスは一応伝説の魔物である。
「親しみやすくて呼び易い名前がいいじゃないの。ごっつい厳つい名前なんか戦闘中に呼んでる暇ないわよッ」
『・・・ 確かに一理あるな』
――一理あるんかいッ!?
思わず驚いた顔になるアジェス。
そして片方の眉が下がるシルファ王子。
多分だが、戦闘中に『♡』マークの付いた自分以外の名前を呼ぶソフィアを想像して気分を害しているに違いない・・・・
「だから『チャッピー♡』でいいじゃん」
思わず握っている杖に力が込められて魔力が増幅していくのが目に見えて分かる。
『もう少しマシな名前は考えつかぬのか?』
見えない井桁マークが額に浮かぶ『チャッピー♡』予定のベヒモス・・・
こちらもどんどん不穏な魔力が増幅中。
「え、もしかして・・・」
「・・・」
黙ったままシルファが自分達とソフィア達の間に透明で強固な障壁を魔術で瞬時に構築した――
×××
先制はソフィア。
杖の先から大量の水の気を纏ったランスが生み出されて大きな体躯の的を狙い、時間差で発射されていく。
それに対して土魔法を瞬時に発動させ、大きな皿のような盾で全てを防いでいくベヒモス。
「だからッ! 可愛くていいって言ってるじゃんッ!」
『気に入らぬと言っているであろうがッ』
「主と認めるんなら、名付けに逆らうのはマナー違反よッ」
『テイムされてやってもいいとは言ったが、まだ主とは認めておらぬわッ!!』
1人と1匹の攻防が続く中、地面の上で胡座を組んで呆れ顔で眺めるアジェスと、透明な障壁を宙に浮かせその上に正座をして何処からともなく出して来た日本茶を湯呑みで啜るシルファ王子。
「名前であそこまで熱くなるもんかねえ~」
「お互いに譲れぬ矜持なのだろうな。せめて『♡』がなければ、俺はチャッピーでも何でも良いのだが」
その言葉に思わず王子の顔を2度見する。
――あ~『♡』がついてるとダメなのね・・・
ベヒモスの名付けに関しては傍観に徹することを決めたアジェスだった・・・・
×××
『・・・ 分かった。チャッピーで手を打とう』
「分かればいいのよ。つまり『♡』が付くのがイヤなのね」
闘技場のど真ん中で頭にデッカイたんこぶを作ったベヒモスがお座り状態で頷いた。
結局魔法を連射しているうちに面倒になった――魔法理論を考える癖が災いしたらしい―― ソフィアが、身体強化でベヒモスをぶん殴って勝利したのだが・・・
「最初から話し合いで解決したんじゃね―の?」
「まぁ、そうだろうな」
安全地帯から2人の従兄弟が、肩で息をするソフィアとベヒモスを見比べながらため息を付いた。
かくして。
絶滅が危惧? されている疑いのある魔物ベヒモス『チャッピー』は無事ソフィア嬢の『従魔』になったのである・・・
――テイムの通過儀礼はタンコブ・・・ くどいようだがソフィアは魔法少女である。
首を傾げる美少女に向かい鼻面に若干シワを寄せるベヒモス。
確かに魔獣と違い魔物は性別がない種類が多い。
『確かに自由ではあるだろう。しかしそのネーミングでは威厳がなさすぎぬか?』
――ベヒモスは一応伝説の魔物である。
「親しみやすくて呼び易い名前がいいじゃないの。ごっつい厳つい名前なんか戦闘中に呼んでる暇ないわよッ」
『・・・ 確かに一理あるな』
――一理あるんかいッ!?
思わず驚いた顔になるアジェス。
そして片方の眉が下がるシルファ王子。
多分だが、戦闘中に『♡』マークの付いた自分以外の名前を呼ぶソフィアを想像して気分を害しているに違いない・・・・
「だから『チャッピー♡』でいいじゃん」
思わず握っている杖に力が込められて魔力が増幅していくのが目に見えて分かる。
『もう少しマシな名前は考えつかぬのか?』
見えない井桁マークが額に浮かぶ『チャッピー♡』予定のベヒモス・・・
こちらもどんどん不穏な魔力が増幅中。
「え、もしかして・・・」
「・・・」
黙ったままシルファが自分達とソフィア達の間に透明で強固な障壁を魔術で瞬時に構築した――
×××
先制はソフィア。
杖の先から大量の水の気を纏ったランスが生み出されて大きな体躯の的を狙い、時間差で発射されていく。
それに対して土魔法を瞬時に発動させ、大きな皿のような盾で全てを防いでいくベヒモス。
「だからッ! 可愛くていいって言ってるじゃんッ!」
『気に入らぬと言っているであろうがッ』
「主と認めるんなら、名付けに逆らうのはマナー違反よッ」
『テイムされてやってもいいとは言ったが、まだ主とは認めておらぬわッ!!』
1人と1匹の攻防が続く中、地面の上で胡座を組んで呆れ顔で眺めるアジェスと、透明な障壁を宙に浮かせその上に正座をして何処からともなく出して来た日本茶を湯呑みで啜るシルファ王子。
「名前であそこまで熱くなるもんかねえ~」
「お互いに譲れぬ矜持なのだろうな。せめて『♡』がなければ、俺はチャッピーでも何でも良いのだが」
その言葉に思わず王子の顔を2度見する。
――あ~『♡』がついてるとダメなのね・・・
ベヒモスの名付けに関しては傍観に徹することを決めたアジェスだった・・・・
×××
『・・・ 分かった。チャッピーで手を打とう』
「分かればいいのよ。つまり『♡』が付くのがイヤなのね」
闘技場のど真ん中で頭にデッカイたんこぶを作ったベヒモスがお座り状態で頷いた。
結局魔法を連射しているうちに面倒になった――魔法理論を考える癖が災いしたらしい―― ソフィアが、身体強化でベヒモスをぶん殴って勝利したのだが・・・
「最初から話し合いで解決したんじゃね―の?」
「まぁ、そうだろうな」
安全地帯から2人の従兄弟が、肩で息をするソフィアとベヒモスを見比べながらため息を付いた。
かくして。
絶滅が危惧? されている疑いのある魔物ベヒモス『チャッピー』は無事ソフィア嬢の『従魔』になったのである・・・
――テイムの通過儀礼はタンコブ・・・ くどいようだがソフィアは魔法少女である。
10
お気に入りに追加
565
あなたにおすすめの小説
王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?
どうやら私は乙女ゲームの聖女に転生した・・・らしい
白雪の雫
恋愛
「マリーローズ!ガニメデス王国が認めた聖女であるライムミントに対して罵詈雑言を浴びせただけではなく、命まで奪おうとしたそうだな!お前のような女を妃に迎える訳にはいかないし、王妃になるなど民は納得せぬだろう!マリーローズ、お前との婚約を破棄する!」
女の脳裡に過るのは婚約者に対して断言した金髪碧眼の男性及び緑とか青とかの髪のイケメン達に守られる一人の美少女。
「この場面って確か王太子による婚約者の断罪から王太子妃誕生へと続くシーン・・・だっけ?」
どうやら私は【聖なる恋】という18禁な乙女ゲームの世界に転生した聖女・・・らしい。
らしい。と思うのはヒロインのライムミントがオッドアイの超美少女だった事だけは覚えているが、ゲームの内容を余り覚えていないからだ。
「ゲームのタイトルは【聖なる恋】だけどさ・・・・・・要するにこのゲームのストーリーを一言で言い表すとしたら、ヒロインが婚約者のいる男に言い寄る→でもって赤とか緑とかがヒロインを暴行したとか言いがかりをつけて婚約者を断罪する→ヒロインは攻略対象者達に囲まれて逆ハーを作るんだよね~」
色々思うところはあるが転生しちゃったものは仕方ない。
幸いな事に今の自分はまだ五歳にもなっていない子供。
見た目は楚々とした美少女なヒロイン、中身はオタクで柔道や空手などの有段者なバツイチシンママがビッチエンドを回避するため、またゴリマッチョな旦那を捕まえるべく動いていく。
試験勉強の息抜きで書いたダイジェストみたいな話なのでガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義です。
ヒロインと悪役令嬢sideがあります。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
侯爵夫人の優雅な180日
cyaru
恋愛
イノセン公爵家のフェインはデンティド侯爵家のアンプレッセに望まれ結婚をした。
しかし、初夜。フェインの目の前で土下座をするアンプレッセ。
【頼む!離縁してくれ】
離縁には同意をするものの、問題があった。
180日の間は離縁の届けを出しても保留をされるのである。
折角なら楽しもうと満喫しつつお節介をしてしまうフェイン。
そして離縁をする為の180日の間にアンプレッセは‥‥。
※完結後に、センテビーが捕まった理由を追記しました。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※よくある初夜でとんでもない事を言い出す夫が反省をする話です。
※時々、どこかで聞いたようなワードは錯覚若しくは気のせいです。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物も架空の人物です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
悪役令嬢と転生ヒロイン
みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」
鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。
そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。
乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。
乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。
ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。
その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。
この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。
改めて、鏡の中の姿を見る。
どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。
問題は、そこではない。
着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。
これはもしかして、小説版に転生?
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
(完結)モブ令嬢の婚約破棄
あかる
恋愛
ヒロイン様によると、私はモブらしいです。…モブって何でしょう?
攻略対象は全てヒロイン様のものらしいです?そんな酷い設定、どんなロマンス小説にもありませんわ。
お兄様のように思っていた婚約者様はもう要りません。私は別の方と幸せを掴みます!
緩い設定なので、貴族の常識とか拘らず、さらっと読んで頂きたいです。
完結してます。適当に投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる