58 / 101
4
58. 責任重大じゃん!
しおりを挟む『絶縁状を先程送りましたから、大丈夫です!』
ローザ夫人に胸を張られ自信満々でそう言われても困るのは望である・・・。
トボトボと自室に帰りながら考える。
――え~と・・・私と健一がイチャコラしてるのは確かにココだけ。しかも見えない所でしかしてないんだけど・・・全部筒抜けっぽいけど・・・でも、侯爵様は知らない訳で・・・ハッ! そもそも会ったこともないし!
今気がついた望である。
――それで信じて貰えるというのが奇跡なのかもしれないよね~・・・
「涼子ちゃんみたいにパーティーで宣言したわけでも無いしなぁ・・・そもそも冷血騎士様が、異世界から来たばっかりの魔女にお熱を上げるっていうのが周りも信じられないのかも・・・」
――うう~ん・・・しかも、もうすぐ問題の人が来るんだよね。昨日健一にケンカ吹っ掛けてココに帰るのを阻止して、私を寝不足にした張本人が・・・
上の空で自室に帰ると、軽食が並べられていた。
「午後早く王弟殿下がおいでになるとの事ですので、早めの軽食をお持ちしました」
――ミミちゃん仕事早いなあ・・・トホホ・・・
「お着替えもありますので。勿論今日はコレですよね」
ベッドの上に構えられていたのは、昨日魔法で作ったばかりのルーカスの瞳のような群青色のペンシルラインのドレスと、花の形を象ったシルバーの土台にローズカットの黒曜石が飾られた、黒いベルベット素材のチョーカー。
そしてチョーカーとそっくり同じ形の髪飾り・・・
ミミちゃんは敏腕メイドさんだった。
×××
「え~じゃあ横恋慕? ってこと?」
涼子がスパルタ教育の休憩中に望の部屋にやって来て、またしても着替えているのを見て不思議に思ったらしく、何があるのかを根掘り葉掘り聞いてきた結果全部吐かさせられる羽目になった。
「そうなの」
「うわ~・・・てか、わざわ陛下と重鎮が揃ってる時に突っ込んでいって、行動を改めるっ! て宣言した訳でしょう?」
「らしいね」
「確信犯じゃんソレ。その王弟って頭脳派かも知れないねえ。今までは王族として問題ありだから結婚して無いわけでしょ?」
「じゃないかな~とは思うけど・・・」
「望さんが妻になったら王家は魔力の取り込みが又出来る訳だし、放蕩オヤジも大人しくなるし、一石二鳥って考える人がいそうじゃん」
「・・・」
「ローザさんも元王族だから、ルーカスさんも王族の血は流れてるけどさ。所詮侯爵家だもん」
「あ・・・」
「どうしたの?」
「だから、離縁して・・・」
ローザ夫人の執務部屋から退室する直前に、
『ルーの親権は元々私です。侯爵様と離縁した暁にはルーは私と共に侯爵家から離れる事が最初から契約で決まっていますから大丈夫ですの』
と。
きれいな笑顔で微笑んでいたローザを思い出しその事を涼子に告げると・・・
「うわぁ~・・・責任重大だぁ」
「あ。やっぱり・・・?」
「うん。実家に帰ったらローザさんが王族に返り咲くわけでしょ? てことはルーカスさんも王族に加わる訳だし、今から押しかけて来る王弟と立場はほぼ一緒って事になるもんね。若い分ルーカスさんのほうが有利かも。周りの人達が望さんとの間に生まれてくる子供に期待してるんならさぁ・・・そのおっさん45歳だっけ? いくらイケオジでも種が古いよね~。種は新しい方が発芽し易いの常識だもん」
「・・・種・・・発芽・・・そうね」
えらい事態になったもんだと思い切り肩を落とす望である。
×××
その頃、王国騎士団長であるフォルテリア侯爵の執務室で絶叫が響き渡った。
窓の外で囀っていた小鳥達が慌てて飛び立ち執務室のすぐ窓の下にいた鍛錬場で訓練中の騎士達がぎょっとした顔で、自分達のボスの部屋を見上げていた。
「うわぁああぁッ! ローザがッ! ローザがッ うわぁ~あぁあ!!」
ガタガタと何かが倒れる音と共にドアが乱暴に開く音がしたと思ったら、続き廊下を血相を変えて走って行く騎士団長の背中が見えた。
「なんだ、アレ?」
「団長、顔色悪かったよなぁ・・・」
「夫人の名前叫んでたから、また夫婦喧嘩じゃねーの?」
「「「どうせ負けるのになぁ」」」
部下の皆さんはよくご存知である。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる