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第二章 臣下とは王のために存在する
医務室では、お静かに
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王城と騎士団本部は、隣接している。
境目に白亜のアーチがあるだけで、天井も床もつながっており、行き来ができるようになっている。
アーチの前後で、がらりと雰囲気が変わるため、用途が違う建物であることは、一目瞭然だ。
王城は豪奢な壁紙がふんだんに使われているが、騎士団本部に入ると、とたんに地味になる。
調度品のひとつも置いていない簡素な廊下を、ギルバートは早足で歩く。
今日中に殲滅すべき魔獣の特徴と、竜騎士団員の顔と能力を思い浮かべる。
どうしても牛型魔獣ヘビーモスに対抗できる編成が思いつかず、自分ひとりで倒すのが、一番かんたんで確実な方法だとの結論に達する。
狼型魔獣ダイアウルフの群れは、エリオットに丸投げしよう。
そう決めたと同時に自分の執務室に着いて、ギルバートは扉を開けた。
「ギルくん、おかえりー!」
あたりまえのように待ち伏せをしていたブラットリーが、明るく手を振る。
彼が陣取るソファの周囲は、よくわからない部品や工具でいっぱいだ。
室内の惨状に、ギルバートの頬がひきつる。
「おまえ……ちゃんと片付けろよ」
まったく悪びれたところのないブラットリーが、ソファに乗っていた機材を払いおとす。
耳障りな音に、ギルバートはおもわず眉をしかめる。
ブラットリーが、ソファの空いた部分を強調するように、ポンポンとたたく。
報告の手間が省けたと思うことにして、ギルバートはおとなしくソファに腰を下ろす。
「帰還の腕輪、どうだった!?」
ブラットリーの赤眼が、よごれたレンズ越しでも分かるぐらいに、かがやいている。
ちゃんと見えているのか、と何度目かの疑問とともに、こいつ、俺のことを売ったんだよな、とぼんやり思う。
ブラットリーの態度に、罪悪感のかけらも見当たらないため、ギルバートは考えるのをやめた。
事実、彼の研究は役に立っている。
帰還の腕輪に目線を落とし、ちいさく息を吐く。
「そうだな。すごく楽だった」
「くわしく!」
ブラットリーが、さらに身を乗りだしてきた。
「魔力は、ほぼ要らないな」
「発動時の重力は? 転移魔術と、どう違う?」
ギルバートの返答にかぶせるように、ブラットリーが質問をたたみかける。
三人掛けのソファが、ものすごくせまく感じる。
「重力……は、気にしたことがない」
「主観でいいから!」
「大差ないと思う……というか、そこまで気になるなら、自分で試してこい」
ギルバートは、帰還の腕輪を、手首から抜きとろうとする。
つなぎ目がない腕輪は、手をすぼめても、骨にひっかかってうまく抜けない。
「どうやって抜くんだ、これ」
「回しながら、すこしずつ押し上げていけば抜けるよ。……たぶん」
ギルバートが腕輪と格闘しているのを見ながら、ブラットリーは語尾にちいさなつぶやきを付け足す。
腕輪には、ギルバートの手首に合わせて収縮し、その直径で固定する術式が組んである。
これで落とすことはない、と満足していたが、正直、外すときのことを考えていなかった。
「あのねギルくん。借りたところで、転移魔術が使えない人間に、違いはわからないから」
だからひとまず、外すのはあきらめてください。
そんな本音をこっそり混ぜて、ブラットリーはわらう。
一方のギルバートは、ブラットリーの正論に、虚を突かれたようにまたたいた。
「……そう、だな」
では、自分が使うしかないのか。
そう思いながら、腕輪から指を離す。
希少宝石が光をはじくのを、ぼんやりとながめた。
実をいうと、ソファに座ったあたりから、ものすごい疲労感がおそってきて、あたまが回っていない。
しかし、考えるべきことは、山積みだ。
――すぐに王命が発令されるから、エリオットに討伐隊の編成をまかせて、その間に俺がヘビーモスを討伐したほうが……ダイアウルフは行動範囲が広いから、見つけるまでが難儀だな……。
「ギルくん、どうしたの?」
名前を呼ばれ、ハッと顔をあげる。
ブラットリーがいるのを忘れていた。
「だいじょうぶ? 疲れてる?」
二択ならイエスだが、そうも言っていられない事情がある。
「わるいが、おまえと話しているひまはない。エリオットを知らないか?」
「ええー。ぼくといるのに、他の男の名前を出すのぉ?」
「おまえ、年中ふざけてるな」
ギルバートが、あきれ顔でブラットリーを見やる。
「ひどいなぁ。ぼくはいつだって真剣なのに。いまもほら、ご所望の通信術具が完成しました! じゃーん!」
ブラットリーが、一対のスタッドピアスをかかげる。
虹をとじこめた水晶ーーアイリスクオーツには、複雑な術式が組み込まれている。
「ほんとうか!? おまえ、すごいな!」
「でしょー? ふたりがひとつずつ耳につけて、魔力を流すと、どんなに遠くにいても会話ができるよ」
「魔力を流すだけでいいのか?」
「うん! 試作品だから、一対しかないけど。リオくんと繋がれば、とりあえずは事足りるんでしょ?」
「そうだな。いやまて、これピアスか?」
ギルバートの耳に、ピアスホールは開いていない。
彼の困惑に、ブラットリーは心得たようにうなずく。
「だから、いまから医務室に行って、ピアスホールを開けようね」
「……いまから?」
「だいじょうぶ。ギルくんの主治医であるぼくがぁ、責任をもって、やりとげてあげるから」
ブラットリーが立ち上がり、ギルバートに手を差し出す。
その手をつかみ、ギルバートはうすく笑った。
「では、患者を売る、ご立派な主治医様に、おまかせしようか」
考えるのはやめたが、許すとは言っていない。
そんな意を込めて、つかんだ手に強い力を込める。
ブラットリーは、痛がるどころか、おもしろそうに目を細めた。
「その研究費は、回り回って、ギルくんのためになるんだよ」
そう言って、ギルバートを引き上げる。
立ち上がった彼にむかい、やはり、ひとかけらの罪悪感も見せないまま、無邪気ともいえる笑顔をみせた。
医務室は、騎士団本部の二階にある。
ギルバートの執務室からは、徒歩五分。
南の階段を下りて、長い回廊をすすんだ先にある。
医者が常駐しており、24時間体勢で、なにかとケガの多い騎士団員のフォローにあたっている。
趣味が高じて医師免許を取得したブラットリーも、医者のはしくれだ。
医務室に入ると、勝手知ったるといったかんじで、薬棚を勝手にあさる。
「ギルくん、そこに座って」
「ああ」
ブラットリーが準備したのは、ガンタイプのピアッサーだ。
引き金をひくと、バネの力で針が飛びだし、穴が開くという単純な造りだ。
ギルバートの右耳を検分し、開ける場所を決める。
丹念に消毒する間も、ギルバートはされるがままだった。
消毒液の独特な香りが、鼻をつく。
ピアッサーで、彼の耳たぶを挟み、ねらいをつけた。
「いくよ」
バチン!!!
「うおっ!!?」
「あははは! ギルくん、すごい反応!!」
いきおいあまってイスから落ちたギルバートが、右耳を押さえたまま、放心する。
信じられないことが起こったような顔で、ブラットリーを見上げた。
「……予想の百倍、うるさかった」
「耳元だからねぇ。はい、手ぇどけてー」
ブラットリーは患部を再度消毒し、通信術具を穴に差し込み、キャッチで止めた。
「わー、似合うー!」
ギルバートの右耳に、アイリスクオーツの虹色が映える。
耳の後ろ、ピアスキャッチからは、長さの違う三連のチェーンが垂れている。
繊細なチェーンの、地金は白い。
鏡ごしではうまく把握できずに、ギルバートはブラットリーに問う。
「これ、白銀じゃないだろうな」
「だいじょうぶ、白金だから」
ギルバートが動くたび、チェーンが揺れて、きらめく。
ブラットリーは、それに見惚れて、ため息をついた。
「想像どおりだぁ。すごくきれいだし、かわいい」
「かわっ……!?」
ギルバートが、なんともいえない複雑そうな顔をした。
邪魔そうに、チェーンを指ではじく。
「このかざり、必要か?」
「うん。アンテナの役割を果たしているから」
――嘘だけど。
そう胸中でつぶやき、ブラットリーは、にっこりとわらう。
「……そうか」
あっさり信じるギルバートに、心からの笑顔がこぼれた。
「じゃあ、あとはリオくんに――」
「ギルバート団長。ここでしたか」
医務室の扉が開いて、話題のエリオットがあらわれた。
タイミングの良さに、ギルバートとブラットリーは目を見合わせて、ニヤリとわらう。
「いらっしゃい、リオくーん! とっても、会いたかったぁ」
「よお、エリオット。おまえちょっとここに座れ」
ギルバートが立ち上がり、直前まで座っていたイスを指定する。
「なにを企んでいるんですか」
不審げなエリオットにかまわず、ブラットリーが腕をひっぱる。
ギルバートは背後にまわり、エリオットの背中をイスの方へと押した。
嫌な予感しかないエリオットが、足に力を入れる。
「あれ、ぜんっぜん、うごかない」
「おまえ、体幹すごいな!?」
めずらしく結託しているふたりを見て、エリオットは確信する。
これはぜったいに、碌なことにならない。
「詳細の説明を」
説明を求めるが、ふたりはまったく聞き耳をもたない。
「いいから、おすわりだ!」
「座ったらぁ、手はお膝!」
彼らが、とてもおもしろがっていることだけは、わかった。
「……お断りします」
「おいおい、団長命令だぞ」
その浮ついた声音に、エリオットは違和感を感じて振りかえる。
視線でギルバートの異変を探ると、きょとんとする彼の右耳に、見慣れない飾りがあることに気付いた。
しかも、そこからうっすらと血がにじんでいる。
「なんですかこれは!」
「いって!」
おもわず両手で彼の顔をはさみ、右耳が見えるように首を固定する。
「ピアス……開けたんですか!?」
「おい、はなせ!」
ギルバートが、抗議するように、エリオットをたたく。
手を離したエリオットは、ブラットリーに鋭い視線をむけた。
「ブラットリー副所長」
「え、なに?」
「ブレイデン卿に、許可は」
低い声で問うと、ブラットリーとギルバートが、そろって首をかしげた。
エリオットが、額にこぶしをあてて、うなる。
「なんとお詫びすれば……っ!」
ギルバートは、ふしぎそうにエリオットの顔をのぞきこむ。
「エリオット? 何の話だ?」
「貴方は、ブレイデン公爵家の嫡男ですよ! もっと自覚をもちなさい!」
「自覚? してるしてる」
「しかも……よりによって、右耳……なぜ……」
「なぜって……これ、通信術具だぞ?」
右耳をさして、ギルバートが告げる。
「俺とおまえで、一対。だからおとなしく、耳を差し出せ」
つきつけられた指を手でどけて、エリオットはため息をつく。
ギルバートの右耳をにらみながら、しばし考える。
通信術具がどれぐらいの精度かは知らないが、職務の一環としてならば、まだ言い訳が立つかもしれない。
しかもさきほど、魔獣討伐の王命が、竜騎士団に下った。
自分とギルバートは、いつも別部隊になるため、通信術具が役に立つ可能性もある。
ブラットリーはこう見えて、高い技術力を誇る。
いちど試してみるのも、ひとつの手か。
そう結論づけて、あきらめてイスに座る。
ブラットリーがピアッサー片手に、エリオットの左耳を検分しはじめた。
「リオくんは、左耳ね」
「……やっぱり。わかってやりましたね、ブラットリー副所長」
「ええー? なんのことぉ?」
とぼけながら、エリオットの左耳を消毒する。
ピアッサーで、耳たぶを挟み、ねらいをつけた。
「じゃ、いくよ」
バチン!!!
「!!?」
予想の百倍は大きな音に、エリオットは目を見開いて肩を揺らす。
彼のめったに見ない挙動に、ギルバートとブラットリーは、腹をかかえて爆笑した。
「おまえのせいで、追い出されたじゃねーか」
「ええ? 共犯だよぉ」
他の医者からうるさいと叱られ、三人仲良く医務室から追い出された。
ギルバートは、無言でとなりを歩く、エリオットを見上げる。
彼の左耳には、自分と同じ通信術具の、アイリスクオーツのピアスがはまっている。
しかし、彼のキャッチは、目立たないほど小さい。
「なぜエリオットのは、アンテナが無い」
「どちらか片方で、だいじょうぶだから」
――嘘だけど。
そう胸中でつぶやき、ブラットリーは、にっこりとわらう。
その笑顔をうさんくさげに見やるギルバートが、不意に足を止めた。
ちょうど回廊が二手に分かれた場所で、左に行けば、ギルバートの執務室にたどりつく。
「ブラットリー。執務室のガラクタを、撤去しておけ」
「ガラクタじゃなくてぇ、希少金属だよ」
「どちらでもかまわん。俺が帰るまで残っていたら、全部捨てるからな」
ギルバートは身をひるがえし、右の通路に足をむける。
帰還の腕輪が澄んだ音をたて、右耳の飾りとともにきらめいた。
蜂蜜色の髪のあいだから、白金のチェーンがゆれる。
窓からの陽射しをうける背中は、しなやかで神々しい。
ブラットリーは、そのうつくしい生き物に目を奪われて、立ち尽くす。
彼をいろどる術具は、すべて自分が作ったものだ。
あらためて自覚すると、体の芯からふるえるような歓喜がわきあがってきた。
悪寒にも似たゾクゾクとした感触に、鳥肌が立つ。
血が沸騰するように体中が熱く、脳みそが溶けてしまいそうだ。
ギルバートの背中と、それを追うエリオットが見えなくなっても、ブラットリーはその場を動けなかった。
ひとり通路に立ち尽くしたまま、恍惚とした表情で、熱っぽいため息を吐きだした。
「ギルバート団長、どちらへ?」
執務室とは逆方向にむかう彼に、エリオットが問う。
「クソ術士のところだ。王命の遂行には、転移室の優先使用がみとめられている。先に行って、ヘビーモスだけでも倒してくる」
「おひとりで、ですか?」
「帰還の腕輪がある。いつでもここに帰ってこられる術具だ」
腕輪のはまった右手を軽くかかげて、ギルバートはつづける。
「王命より、自分の命の方が大事に決まっている。あぶなくなったら、すぐに逃げ帰ってやるから安心しろ」
「だからといって、単身討伐を選ぶ理由にはなりません」
「ひとりのほうが都合がいい。知っているだろ。おまえは竜騎士団員から討伐隊を結成し、ダイアウルフの殲滅にあたれ」
話は終わりだとばかりに、足早に去ろうとするギルバートの、腕をつかんで引き留めた。
「貴方はさきほど、単身討伐から帰還されたばかりです。せめて、すこしなりとも休憩を」
「必要ない」
断言し、わずらわしげに腕をふりはらう。
「昼食もとっておられないのでは」
「一食ぐらい、抜いても死なん」
歩く速度を上げるギルバートに、エリオットはあきれながら着いていく。
「またそのようなことを。騎士は、体が資本です」
「帰ったら、食べる」
「食べてから、討伐に行かれてはどうですか?」
エリオットの言葉を、ギルバートは鼻でわらう。
「今日中に殲滅しろと厳命された。気になって、食事が喉を通らない」
のらりくらりと躱される。
すでに転移室は、目と鼻の先。
ギルバートは、こうと決めたら、曲げない頑固さがある。
エリオットはあきらめて、ギルバートを見送ることにした。
「くれぐれも、ご無理なさいませんよう」
「エリオット」
めずらしく、彼が振りかえる。
その右耳にゆれる飾りに、一瞬気をとられ、彼の顔に視線を戻す。
エリオットの視線をうけて、ギルバートが不敵に笑う。
「あとで連絡する」
右耳の飾りを見せつけるように、彼が顔をかたむける。
そうして、転移室へと入っていった。
ギルバートの言動を思い返し、エリオットがおおきなため息をつく。
あれでは、あたらしいおもちゃを与えられた子供だ。
そのうえ彼は、疲労で判断力が落ちていることに、気づいていない。
指摘して、意固地になられるくらいなら――泳がせておいて、通信術具の精度に賭けたほうが、勝算が高い。
早急に合流できれば、彼への危険は格段に軽減される。
ギルバートに、単身討伐をさせる気がさらさらないエリオットは、すぐさま踵を返し、竜舎へと向かった。
自然ゆたかな国立公園は、希少な動植物の楽園だ。
みはらしのいい原っぱと、林と、山がある。
けしきを楽しみながら、野生動物を観察できるので、観光客にも人気だ。
やわらかい下草をふみしめ、アルデはあたりを見渡す。
立入禁止令が出されているので、人の気配はない。
しろい幹がならぶ林は、木漏れ日であふれている。
鳥がさえずり、ここちよい風がアルデの頬をなでる。
薬草は、湿りけをおびた地面に生える。
アルデは、大木の根元を中心に探索する。
下ばかり見ていたので、気づくのが遅れた。
なにかの臭気を感じ、顔をあげたアルデが見たのは、巨大な牙で土を掘りかえす、牛のような魔獣だった。
大木の幹に手をつけたまま、アルデの足は凍りつく。
ヒッと息をのむと、悲鳴は音にならず、空気だけが喉をこすった。
下手に動けば、気づかれるほどの距離しかなかった。
アルデは、ガクガクとふるえる足で、ゆっくりと後退をこころみる。
こちらを向くな、とただひたすらに願いながら。
鼻息あらく、首をふった魔獣が、顔をあげる――アルデの願いもむなしく、目が合ってしまった。
歪んだ牙がのぞく口で、魔獣が嗤ったように、アルデには見えた。
地響きのような野太い咆哮が、あたりに響きわたる。
逃げだすこともできないまま、アルデは衝撃に備えて身を固くした。
境目に白亜のアーチがあるだけで、天井も床もつながっており、行き来ができるようになっている。
アーチの前後で、がらりと雰囲気が変わるため、用途が違う建物であることは、一目瞭然だ。
王城は豪奢な壁紙がふんだんに使われているが、騎士団本部に入ると、とたんに地味になる。
調度品のひとつも置いていない簡素な廊下を、ギルバートは早足で歩く。
今日中に殲滅すべき魔獣の特徴と、竜騎士団員の顔と能力を思い浮かべる。
どうしても牛型魔獣ヘビーモスに対抗できる編成が思いつかず、自分ひとりで倒すのが、一番かんたんで確実な方法だとの結論に達する。
狼型魔獣ダイアウルフの群れは、エリオットに丸投げしよう。
そう決めたと同時に自分の執務室に着いて、ギルバートは扉を開けた。
「ギルくん、おかえりー!」
あたりまえのように待ち伏せをしていたブラットリーが、明るく手を振る。
彼が陣取るソファの周囲は、よくわからない部品や工具でいっぱいだ。
室内の惨状に、ギルバートの頬がひきつる。
「おまえ……ちゃんと片付けろよ」
まったく悪びれたところのないブラットリーが、ソファに乗っていた機材を払いおとす。
耳障りな音に、ギルバートはおもわず眉をしかめる。
ブラットリーが、ソファの空いた部分を強調するように、ポンポンとたたく。
報告の手間が省けたと思うことにして、ギルバートはおとなしくソファに腰を下ろす。
「帰還の腕輪、どうだった!?」
ブラットリーの赤眼が、よごれたレンズ越しでも分かるぐらいに、かがやいている。
ちゃんと見えているのか、と何度目かの疑問とともに、こいつ、俺のことを売ったんだよな、とぼんやり思う。
ブラットリーの態度に、罪悪感のかけらも見当たらないため、ギルバートは考えるのをやめた。
事実、彼の研究は役に立っている。
帰還の腕輪に目線を落とし、ちいさく息を吐く。
「そうだな。すごく楽だった」
「くわしく!」
ブラットリーが、さらに身を乗りだしてきた。
「魔力は、ほぼ要らないな」
「発動時の重力は? 転移魔術と、どう違う?」
ギルバートの返答にかぶせるように、ブラットリーが質問をたたみかける。
三人掛けのソファが、ものすごくせまく感じる。
「重力……は、気にしたことがない」
「主観でいいから!」
「大差ないと思う……というか、そこまで気になるなら、自分で試してこい」
ギルバートは、帰還の腕輪を、手首から抜きとろうとする。
つなぎ目がない腕輪は、手をすぼめても、骨にひっかかってうまく抜けない。
「どうやって抜くんだ、これ」
「回しながら、すこしずつ押し上げていけば抜けるよ。……たぶん」
ギルバートが腕輪と格闘しているのを見ながら、ブラットリーは語尾にちいさなつぶやきを付け足す。
腕輪には、ギルバートの手首に合わせて収縮し、その直径で固定する術式が組んである。
これで落とすことはない、と満足していたが、正直、外すときのことを考えていなかった。
「あのねギルくん。借りたところで、転移魔術が使えない人間に、違いはわからないから」
だからひとまず、外すのはあきらめてください。
そんな本音をこっそり混ぜて、ブラットリーはわらう。
一方のギルバートは、ブラットリーの正論に、虚を突かれたようにまたたいた。
「……そう、だな」
では、自分が使うしかないのか。
そう思いながら、腕輪から指を離す。
希少宝石が光をはじくのを、ぼんやりとながめた。
実をいうと、ソファに座ったあたりから、ものすごい疲労感がおそってきて、あたまが回っていない。
しかし、考えるべきことは、山積みだ。
――すぐに王命が発令されるから、エリオットに討伐隊の編成をまかせて、その間に俺がヘビーモスを討伐したほうが……ダイアウルフは行動範囲が広いから、見つけるまでが難儀だな……。
「ギルくん、どうしたの?」
名前を呼ばれ、ハッと顔をあげる。
ブラットリーがいるのを忘れていた。
「だいじょうぶ? 疲れてる?」
二択ならイエスだが、そうも言っていられない事情がある。
「わるいが、おまえと話しているひまはない。エリオットを知らないか?」
「ええー。ぼくといるのに、他の男の名前を出すのぉ?」
「おまえ、年中ふざけてるな」
ギルバートが、あきれ顔でブラットリーを見やる。
「ひどいなぁ。ぼくはいつだって真剣なのに。いまもほら、ご所望の通信術具が完成しました! じゃーん!」
ブラットリーが、一対のスタッドピアスをかかげる。
虹をとじこめた水晶ーーアイリスクオーツには、複雑な術式が組み込まれている。
「ほんとうか!? おまえ、すごいな!」
「でしょー? ふたりがひとつずつ耳につけて、魔力を流すと、どんなに遠くにいても会話ができるよ」
「魔力を流すだけでいいのか?」
「うん! 試作品だから、一対しかないけど。リオくんと繋がれば、とりあえずは事足りるんでしょ?」
「そうだな。いやまて、これピアスか?」
ギルバートの耳に、ピアスホールは開いていない。
彼の困惑に、ブラットリーは心得たようにうなずく。
「だから、いまから医務室に行って、ピアスホールを開けようね」
「……いまから?」
「だいじょうぶ。ギルくんの主治医であるぼくがぁ、責任をもって、やりとげてあげるから」
ブラットリーが立ち上がり、ギルバートに手を差し出す。
その手をつかみ、ギルバートはうすく笑った。
「では、患者を売る、ご立派な主治医様に、おまかせしようか」
考えるのはやめたが、許すとは言っていない。
そんな意を込めて、つかんだ手に強い力を込める。
ブラットリーは、痛がるどころか、おもしろそうに目を細めた。
「その研究費は、回り回って、ギルくんのためになるんだよ」
そう言って、ギルバートを引き上げる。
立ち上がった彼にむかい、やはり、ひとかけらの罪悪感も見せないまま、無邪気ともいえる笑顔をみせた。
医務室は、騎士団本部の二階にある。
ギルバートの執務室からは、徒歩五分。
南の階段を下りて、長い回廊をすすんだ先にある。
医者が常駐しており、24時間体勢で、なにかとケガの多い騎士団員のフォローにあたっている。
趣味が高じて医師免許を取得したブラットリーも、医者のはしくれだ。
医務室に入ると、勝手知ったるといったかんじで、薬棚を勝手にあさる。
「ギルくん、そこに座って」
「ああ」
ブラットリーが準備したのは、ガンタイプのピアッサーだ。
引き金をひくと、バネの力で針が飛びだし、穴が開くという単純な造りだ。
ギルバートの右耳を検分し、開ける場所を決める。
丹念に消毒する間も、ギルバートはされるがままだった。
消毒液の独特な香りが、鼻をつく。
ピアッサーで、彼の耳たぶを挟み、ねらいをつけた。
「いくよ」
バチン!!!
「うおっ!!?」
「あははは! ギルくん、すごい反応!!」
いきおいあまってイスから落ちたギルバートが、右耳を押さえたまま、放心する。
信じられないことが起こったような顔で、ブラットリーを見上げた。
「……予想の百倍、うるさかった」
「耳元だからねぇ。はい、手ぇどけてー」
ブラットリーは患部を再度消毒し、通信術具を穴に差し込み、キャッチで止めた。
「わー、似合うー!」
ギルバートの右耳に、アイリスクオーツの虹色が映える。
耳の後ろ、ピアスキャッチからは、長さの違う三連のチェーンが垂れている。
繊細なチェーンの、地金は白い。
鏡ごしではうまく把握できずに、ギルバートはブラットリーに問う。
「これ、白銀じゃないだろうな」
「だいじょうぶ、白金だから」
ギルバートが動くたび、チェーンが揺れて、きらめく。
ブラットリーは、それに見惚れて、ため息をついた。
「想像どおりだぁ。すごくきれいだし、かわいい」
「かわっ……!?」
ギルバートが、なんともいえない複雑そうな顔をした。
邪魔そうに、チェーンを指ではじく。
「このかざり、必要か?」
「うん。アンテナの役割を果たしているから」
――嘘だけど。
そう胸中でつぶやき、ブラットリーは、にっこりとわらう。
「……そうか」
あっさり信じるギルバートに、心からの笑顔がこぼれた。
「じゃあ、あとはリオくんに――」
「ギルバート団長。ここでしたか」
医務室の扉が開いて、話題のエリオットがあらわれた。
タイミングの良さに、ギルバートとブラットリーは目を見合わせて、ニヤリとわらう。
「いらっしゃい、リオくーん! とっても、会いたかったぁ」
「よお、エリオット。おまえちょっとここに座れ」
ギルバートが立ち上がり、直前まで座っていたイスを指定する。
「なにを企んでいるんですか」
不審げなエリオットにかまわず、ブラットリーが腕をひっぱる。
ギルバートは背後にまわり、エリオットの背中をイスの方へと押した。
嫌な予感しかないエリオットが、足に力を入れる。
「あれ、ぜんっぜん、うごかない」
「おまえ、体幹すごいな!?」
めずらしく結託しているふたりを見て、エリオットは確信する。
これはぜったいに、碌なことにならない。
「詳細の説明を」
説明を求めるが、ふたりはまったく聞き耳をもたない。
「いいから、おすわりだ!」
「座ったらぁ、手はお膝!」
彼らが、とてもおもしろがっていることだけは、わかった。
「……お断りします」
「おいおい、団長命令だぞ」
その浮ついた声音に、エリオットは違和感を感じて振りかえる。
視線でギルバートの異変を探ると、きょとんとする彼の右耳に、見慣れない飾りがあることに気付いた。
しかも、そこからうっすらと血がにじんでいる。
「なんですかこれは!」
「いって!」
おもわず両手で彼の顔をはさみ、右耳が見えるように首を固定する。
「ピアス……開けたんですか!?」
「おい、はなせ!」
ギルバートが、抗議するように、エリオットをたたく。
手を離したエリオットは、ブラットリーに鋭い視線をむけた。
「ブラットリー副所長」
「え、なに?」
「ブレイデン卿に、許可は」
低い声で問うと、ブラットリーとギルバートが、そろって首をかしげた。
エリオットが、額にこぶしをあてて、うなる。
「なんとお詫びすれば……っ!」
ギルバートは、ふしぎそうにエリオットの顔をのぞきこむ。
「エリオット? 何の話だ?」
「貴方は、ブレイデン公爵家の嫡男ですよ! もっと自覚をもちなさい!」
「自覚? してるしてる」
「しかも……よりによって、右耳……なぜ……」
「なぜって……これ、通信術具だぞ?」
右耳をさして、ギルバートが告げる。
「俺とおまえで、一対。だからおとなしく、耳を差し出せ」
つきつけられた指を手でどけて、エリオットはため息をつく。
ギルバートの右耳をにらみながら、しばし考える。
通信術具がどれぐらいの精度かは知らないが、職務の一環としてならば、まだ言い訳が立つかもしれない。
しかもさきほど、魔獣討伐の王命が、竜騎士団に下った。
自分とギルバートは、いつも別部隊になるため、通信術具が役に立つ可能性もある。
ブラットリーはこう見えて、高い技術力を誇る。
いちど試してみるのも、ひとつの手か。
そう結論づけて、あきらめてイスに座る。
ブラットリーがピアッサー片手に、エリオットの左耳を検分しはじめた。
「リオくんは、左耳ね」
「……やっぱり。わかってやりましたね、ブラットリー副所長」
「ええー? なんのことぉ?」
とぼけながら、エリオットの左耳を消毒する。
ピアッサーで、耳たぶを挟み、ねらいをつけた。
「じゃ、いくよ」
バチン!!!
「!!?」
予想の百倍は大きな音に、エリオットは目を見開いて肩を揺らす。
彼のめったに見ない挙動に、ギルバートとブラットリーは、腹をかかえて爆笑した。
「おまえのせいで、追い出されたじゃねーか」
「ええ? 共犯だよぉ」
他の医者からうるさいと叱られ、三人仲良く医務室から追い出された。
ギルバートは、無言でとなりを歩く、エリオットを見上げる。
彼の左耳には、自分と同じ通信術具の、アイリスクオーツのピアスがはまっている。
しかし、彼のキャッチは、目立たないほど小さい。
「なぜエリオットのは、アンテナが無い」
「どちらか片方で、だいじょうぶだから」
――嘘だけど。
そう胸中でつぶやき、ブラットリーは、にっこりとわらう。
その笑顔をうさんくさげに見やるギルバートが、不意に足を止めた。
ちょうど回廊が二手に分かれた場所で、左に行けば、ギルバートの執務室にたどりつく。
「ブラットリー。執務室のガラクタを、撤去しておけ」
「ガラクタじゃなくてぇ、希少金属だよ」
「どちらでもかまわん。俺が帰るまで残っていたら、全部捨てるからな」
ギルバートは身をひるがえし、右の通路に足をむける。
帰還の腕輪が澄んだ音をたて、右耳の飾りとともにきらめいた。
蜂蜜色の髪のあいだから、白金のチェーンがゆれる。
窓からの陽射しをうける背中は、しなやかで神々しい。
ブラットリーは、そのうつくしい生き物に目を奪われて、立ち尽くす。
彼をいろどる術具は、すべて自分が作ったものだ。
あらためて自覚すると、体の芯からふるえるような歓喜がわきあがってきた。
悪寒にも似たゾクゾクとした感触に、鳥肌が立つ。
血が沸騰するように体中が熱く、脳みそが溶けてしまいそうだ。
ギルバートの背中と、それを追うエリオットが見えなくなっても、ブラットリーはその場を動けなかった。
ひとり通路に立ち尽くしたまま、恍惚とした表情で、熱っぽいため息を吐きだした。
「ギルバート団長、どちらへ?」
執務室とは逆方向にむかう彼に、エリオットが問う。
「クソ術士のところだ。王命の遂行には、転移室の優先使用がみとめられている。先に行って、ヘビーモスだけでも倒してくる」
「おひとりで、ですか?」
「帰還の腕輪がある。いつでもここに帰ってこられる術具だ」
腕輪のはまった右手を軽くかかげて、ギルバートはつづける。
「王命より、自分の命の方が大事に決まっている。あぶなくなったら、すぐに逃げ帰ってやるから安心しろ」
「だからといって、単身討伐を選ぶ理由にはなりません」
「ひとりのほうが都合がいい。知っているだろ。おまえは竜騎士団員から討伐隊を結成し、ダイアウルフの殲滅にあたれ」
話は終わりだとばかりに、足早に去ろうとするギルバートの、腕をつかんで引き留めた。
「貴方はさきほど、単身討伐から帰還されたばかりです。せめて、すこしなりとも休憩を」
「必要ない」
断言し、わずらわしげに腕をふりはらう。
「昼食もとっておられないのでは」
「一食ぐらい、抜いても死なん」
歩く速度を上げるギルバートに、エリオットはあきれながら着いていく。
「またそのようなことを。騎士は、体が資本です」
「帰ったら、食べる」
「食べてから、討伐に行かれてはどうですか?」
エリオットの言葉を、ギルバートは鼻でわらう。
「今日中に殲滅しろと厳命された。気になって、食事が喉を通らない」
のらりくらりと躱される。
すでに転移室は、目と鼻の先。
ギルバートは、こうと決めたら、曲げない頑固さがある。
エリオットはあきらめて、ギルバートを見送ることにした。
「くれぐれも、ご無理なさいませんよう」
「エリオット」
めずらしく、彼が振りかえる。
その右耳にゆれる飾りに、一瞬気をとられ、彼の顔に視線を戻す。
エリオットの視線をうけて、ギルバートが不敵に笑う。
「あとで連絡する」
右耳の飾りを見せつけるように、彼が顔をかたむける。
そうして、転移室へと入っていった。
ギルバートの言動を思い返し、エリオットがおおきなため息をつく。
あれでは、あたらしいおもちゃを与えられた子供だ。
そのうえ彼は、疲労で判断力が落ちていることに、気づいていない。
指摘して、意固地になられるくらいなら――泳がせておいて、通信術具の精度に賭けたほうが、勝算が高い。
早急に合流できれば、彼への危険は格段に軽減される。
ギルバートに、単身討伐をさせる気がさらさらないエリオットは、すぐさま踵を返し、竜舎へと向かった。
自然ゆたかな国立公園は、希少な動植物の楽園だ。
みはらしのいい原っぱと、林と、山がある。
けしきを楽しみながら、野生動物を観察できるので、観光客にも人気だ。
やわらかい下草をふみしめ、アルデはあたりを見渡す。
立入禁止令が出されているので、人の気配はない。
しろい幹がならぶ林は、木漏れ日であふれている。
鳥がさえずり、ここちよい風がアルデの頬をなでる。
薬草は、湿りけをおびた地面に生える。
アルデは、大木の根元を中心に探索する。
下ばかり見ていたので、気づくのが遅れた。
なにかの臭気を感じ、顔をあげたアルデが見たのは、巨大な牙で土を掘りかえす、牛のような魔獣だった。
大木の幹に手をつけたまま、アルデの足は凍りつく。
ヒッと息をのむと、悲鳴は音にならず、空気だけが喉をこすった。
下手に動けば、気づかれるほどの距離しかなかった。
アルデは、ガクガクとふるえる足で、ゆっくりと後退をこころみる。
こちらを向くな、とただひたすらに願いながら。
鼻息あらく、首をふった魔獣が、顔をあげる――アルデの願いもむなしく、目が合ってしまった。
歪んだ牙がのぞく口で、魔獣が嗤ったように、アルデには見えた。
地響きのような野太い咆哮が、あたりに響きわたる。
逃げだすこともできないまま、アルデは衝撃に備えて身を固くした。
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