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第21話 再会
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「さあ、野郎ども! 準備はいいか! まだ宵の口だ、これからアタシの家で本格的に飲みまくるぞ!
新兵共は遅れをとるな!! オオオー!」
ギャラリーの声が小さいな、アタシは更に大声で、オオオーと叫ぶと、ようやく周囲もオオオーっと言い出した!
「まだ、小さい、もっと大きく、腹から声を出せ! オオオおおおお!!」
「おおおおおおー!」
「お集まりのお客様もご一緒にご唱和をお願いします! おおおおおー!」
「おおおおおおー!」
いやー、いい気持ちだ。さっきまでの不快感が飛んだ!
「皆さん、ご唱和ありがとう御座いました!! お騒がせいたしました。
皆様には無料の感謝デーを近いうちに設定いたしますので、今後ともこのハルの店、春一番、富士山をお引き立てくださーい!」
「クラリッサさん、戻られたんですね! ありがとうございます!」
「また、寄らせていただきます!」
「ハルさん、頑張れよ!」
ギャラリーは大喝采だ。酒盛り場はこうでなくちゃ、いけない。うん、うん、いつもと変わらない!
「さて、我が家に行こうか!」と、皆の方を振り返ると、一人の少女が仁王立ちでアタシを睨みつけていた。
その少女は帯で巻いた道着を背中に引っ掛けている姿は、ガキ大将時代の和樹のようだ。
「アンタ、いったい何やってんのよ、トロイ!」
え、誰だって? トロイって何だ? 見た感じ、まだ子供だな。ここはお姉さんが、ぴしっと言ってやるか!
「お嬢ちゃん、ここは歓楽街だよ。十八歳未満はお子様になる場所なのよ。だから、お嬢ちゃんは立ち入り禁止区域なんだけど知らないの?」
「アタシ、今日で十八になったの。教えてなかったっけ、トロイ!」
「さっきから、トロイって言ってるけど、それアタシのことなの?
ネットではトロイメライと名乗ってるけど、トロイじゃ無いわよ。それと、アンタ、態度が凄く生意気よ!
道着持ってるみたいね。合気道かな。何ならひとつ手あわせやってみる?
来なさい、お嬢ちゃん、お姉さんがたっぷり可愛がってあげるから」
少女はアタシの低音をきかせた、悪者風な声にややおびえた様子をのぞかせた。そして、動揺もしている。さっきまでの凄味は、本物を知らない蛮勇行為だったか。
「トロイ、あなた。もしかして、記憶が戻っちゃたの?」
お嬢ちゃんは相当におびえている。声がさっきよりも、素に戻っている。
「今のアンタ凄く怖いわよ。本当にトロイ、だった娘なの?
ねえ、覚えてない? アタシ、ジョアンナよ。アナタと数ヶ月もの間、寝食を共にしたのよ。一緒にお料理したり、街でドレスを試着したり、食べ歩きしたりしたじゃない。
本当に覚えてないの?」
ジョアンナだって? こいつ今、自分をジョアンナと言ったぞ。こいつがハルの婚約者なのか! おのれー、アタシの可愛いハルを色香にかけおって! 目にものみせてくれるわ!
「だー、ジョアンナ。何で戻って来たんだよ! 一時間も前に車で送り帰したはずなのに、どうしてここに居るんだよ」
ハルが慌てて、走って来た。
「ますます、ややこしいことになっていく!」
ハルは、もう気が動転しちゃってる。ここはお姉ちゃんが、場をぴしっとしないといけない状況だ。
アタシは、大人なんだ。奥様で、お母さんなんだもの。落ち着けアタシ。そう、落ち着くんだ!
アタシは、ジョアンナを威嚇する構えを解いた。そして、お姉ちゃんスマイルをして、この娘も家に誘うことに決めた。
「アタシ達、何か誤解があったみたいだけど、ジョアンナさん、とりあえず仲直りしましょう。
アタシは、クラリッサ・ワイルダー、いえ、クラリッサ・麗香・加藤と言います」
アタシは右手を差し出し、ジョアンナに握手を求めた。ジョアンナは不安そうにハルの方を見た。
ハルは、アタシと握手して!というような素振りを見せた。
ジョアンナは恐る恐る右手を差し出して来たので、アタシは、じれったいと、ガッチリと握ってやった。
すると、何か懐かしい、優しい温かさを感じた。その手の感触は心地よかった。
「何かとても不思議。あなたの手、とても気持ちいい感じがするわ」
実際、感じたのは蚊に刺された程度の感触だったのだけど、アタシは、大げさに表現した。
「姉さん、今のやり取りで何を納得したって言うの?」
「この馬鹿ハル! 大人の社交辞令よ。険悪なムードのままじゃ場が収まらないでしょ。
今は抑えて、この娘の品定めは後回しよ。とにかく、その娘も我が家に連れて行くわよ!
わかったらすぐ行動する。みんなを案内しなさい、さあ、早く!」
あたしは、ハルのお尻を蹴って催促した。ハルは気を取り直し、襟を正して、営業スマイル顔になり、声も柔らかに変える発声練習をはじめた。
「じゃあ皆さん、お疲れでしょうけど、すみません。もう数時間。いえ、明日の朝まで、我が姉にお付き合いください。お願いいたします! 本当にお願いします」
ハルは声も枯れ枯れに絞り出すように話し、深々と頭を皆に向かって下げている。
別に酒はボトルでグビグビじゃなく、グラスでちびちびやるだけで、アタシの身に起こった話をするのに、なんてこと言ってんだ、ハルは!
新兵共は遅れをとるな!! オオオー!」
ギャラリーの声が小さいな、アタシは更に大声で、オオオーと叫ぶと、ようやく周囲もオオオーっと言い出した!
「まだ、小さい、もっと大きく、腹から声を出せ! オオオおおおお!!」
「おおおおおおー!」
「お集まりのお客様もご一緒にご唱和をお願いします! おおおおおー!」
「おおおおおおー!」
いやー、いい気持ちだ。さっきまでの不快感が飛んだ!
「皆さん、ご唱和ありがとう御座いました!! お騒がせいたしました。
皆様には無料の感謝デーを近いうちに設定いたしますので、今後ともこのハルの店、春一番、富士山をお引き立てくださーい!」
「クラリッサさん、戻られたんですね! ありがとうございます!」
「また、寄らせていただきます!」
「ハルさん、頑張れよ!」
ギャラリーは大喝采だ。酒盛り場はこうでなくちゃ、いけない。うん、うん、いつもと変わらない!
「さて、我が家に行こうか!」と、皆の方を振り返ると、一人の少女が仁王立ちでアタシを睨みつけていた。
その少女は帯で巻いた道着を背中に引っ掛けている姿は、ガキ大将時代の和樹のようだ。
「アンタ、いったい何やってんのよ、トロイ!」
え、誰だって? トロイって何だ? 見た感じ、まだ子供だな。ここはお姉さんが、ぴしっと言ってやるか!
「お嬢ちゃん、ここは歓楽街だよ。十八歳未満はお子様になる場所なのよ。だから、お嬢ちゃんは立ち入り禁止区域なんだけど知らないの?」
「アタシ、今日で十八になったの。教えてなかったっけ、トロイ!」
「さっきから、トロイって言ってるけど、それアタシのことなの?
ネットではトロイメライと名乗ってるけど、トロイじゃ無いわよ。それと、アンタ、態度が凄く生意気よ!
道着持ってるみたいね。合気道かな。何ならひとつ手あわせやってみる?
来なさい、お嬢ちゃん、お姉さんがたっぷり可愛がってあげるから」
少女はアタシの低音をきかせた、悪者風な声にややおびえた様子をのぞかせた。そして、動揺もしている。さっきまでの凄味は、本物を知らない蛮勇行為だったか。
「トロイ、あなた。もしかして、記憶が戻っちゃたの?」
お嬢ちゃんは相当におびえている。声がさっきよりも、素に戻っている。
「今のアンタ凄く怖いわよ。本当にトロイ、だった娘なの?
ねえ、覚えてない? アタシ、ジョアンナよ。アナタと数ヶ月もの間、寝食を共にしたのよ。一緒にお料理したり、街でドレスを試着したり、食べ歩きしたりしたじゃない。
本当に覚えてないの?」
ジョアンナだって? こいつ今、自分をジョアンナと言ったぞ。こいつがハルの婚約者なのか! おのれー、アタシの可愛いハルを色香にかけおって! 目にものみせてくれるわ!
「だー、ジョアンナ。何で戻って来たんだよ! 一時間も前に車で送り帰したはずなのに、どうしてここに居るんだよ」
ハルが慌てて、走って来た。
「ますます、ややこしいことになっていく!」
ハルは、もう気が動転しちゃってる。ここはお姉ちゃんが、場をぴしっとしないといけない状況だ。
アタシは、大人なんだ。奥様で、お母さんなんだもの。落ち着けアタシ。そう、落ち着くんだ!
アタシは、ジョアンナを威嚇する構えを解いた。そして、お姉ちゃんスマイルをして、この娘も家に誘うことに決めた。
「アタシ達、何か誤解があったみたいだけど、ジョアンナさん、とりあえず仲直りしましょう。
アタシは、クラリッサ・ワイルダー、いえ、クラリッサ・麗香・加藤と言います」
アタシは右手を差し出し、ジョアンナに握手を求めた。ジョアンナは不安そうにハルの方を見た。
ハルは、アタシと握手して!というような素振りを見せた。
ジョアンナは恐る恐る右手を差し出して来たので、アタシは、じれったいと、ガッチリと握ってやった。
すると、何か懐かしい、優しい温かさを感じた。その手の感触は心地よかった。
「何かとても不思議。あなたの手、とても気持ちいい感じがするわ」
実際、感じたのは蚊に刺された程度の感触だったのだけど、アタシは、大げさに表現した。
「姉さん、今のやり取りで何を納得したって言うの?」
「この馬鹿ハル! 大人の社交辞令よ。険悪なムードのままじゃ場が収まらないでしょ。
今は抑えて、この娘の品定めは後回しよ。とにかく、その娘も我が家に連れて行くわよ!
わかったらすぐ行動する。みんなを案内しなさい、さあ、早く!」
あたしは、ハルのお尻を蹴って催促した。ハルは気を取り直し、襟を正して、営業スマイル顔になり、声も柔らかに変える発声練習をはじめた。
「じゃあ皆さん、お疲れでしょうけど、すみません。もう数時間。いえ、明日の朝まで、我が姉にお付き合いください。お願いいたします! 本当にお願いします」
ハルは声も枯れ枯れに絞り出すように話し、深々と頭を皆に向かって下げている。
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