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【お姫様抱っこ】の練習をしながら、我々はまだ移動中です。
実際に歩いているのはアーシュで、私は運ばれているだけですが。
ただその間にも、人間さんの言葉をいくつか覚えることはできました。
どんな種族との対面でも、第一印象は大事ですからね。気合も入ろうというものです。
いまも、アーシュのお手本を復唱しながら、最後のおさらいをしています。
「はじめまして」
「はじぇめ、まちて」
「私はイレーヌです。よろしくお願いします」
「わたち……は、いれーにゅ、でちゅ。よろちく、おにゃにゃい、ちまちゅ」
「こんにちは」
「こんにゃちわ」
「アーシュ」
「あーちゅ」
「アシュラウル王子」
「あちゅりゃうりゅ、おおじ」
「あれは何ですか?」
「ありぇは、なんでちゅか?」
「これは何ですか?」
「こりぇは、なんでちゅか?」
『だいぶ上達しましたね。イレーヌはやはり覚えが早いですよ』
『いまので、人間さんには伝わりそうですか?』
『はい。ゆっくり丁寧に話しかければ、充分伝わるでしょう』
よっしゃ――!
最初はふざけた様子のアーシュでしたが、私の熱意が伝わったようで、途中からは真面目に丁寧に教えてくれるようになりました。
『言葉に関しては、ログーザで生活していくうちに、自然と身についていくはずです。私も協力しますので、あまり焦らず、気楽に外の暮らしを楽しんでみてください』
『はい。ありがとうございます』
アーシュが一緒にいてくれて本当に心強いです。
母様が、人間さんの中で、まず彼を頼りにしたのも頷けます。
『到着しました。これが移動用の魔法陣です』
『これが……』
『どうしました?』
『いえ……、結構小さいので意外でした』
目指していた魔法陣は、私たちがかろうじて立てるくらいの、平らな岩の上にありました。膝丈くらいの高さの岩に、小さな円の図柄がくっきりとした線で深く刻みまれています。
『確かに、先程の魔法陣に比べれば、ひとまわり小さいですよね。あれは神獣であるあなたを召喚するための特別仕様でしたから。移動だけの魔法陣であれば、この大きさで充分です。大きさに比例して大勢運べるわけではないので、皆この図柄を複製して使っています。使用後も先ほどのように消えることはありません』
『行き先はどうやって指定するのです?』
『それは術者が詠唱するときに組み込むのですが、難しい話になってしまいますので、これも少しずつ勉強していきましょう』
『わかりました』
『もっとも、神獣であるあなたには、人間が扱う矮小な魔術など必要ないかもしれませんが……、さてと』
彼は魔法陣の上に、私を抱えたままヒョイと乗ると、
『では、まいりましょうか』
『……えっ?』
これまでとは打って変わった真剣な表情で、目を閉じ、小さく何かを唱え始めたのです。
いきなりっ?
アーシュの足元から光が出てきた!
なんかウニョウニョ昇ってきたあ――!
これは確実に始まってますよね?
何かが、始まっちゃってますよね!
まだ心の準備がっ! 覚悟がっ!
ええええ――!
こうして私は、本日二度目となる光の奔流に呑みこまれたのでした。
実際に歩いているのはアーシュで、私は運ばれているだけですが。
ただその間にも、人間さんの言葉をいくつか覚えることはできました。
どんな種族との対面でも、第一印象は大事ですからね。気合も入ろうというものです。
いまも、アーシュのお手本を復唱しながら、最後のおさらいをしています。
「はじめまして」
「はじぇめ、まちて」
「私はイレーヌです。よろしくお願いします」
「わたち……は、いれーにゅ、でちゅ。よろちく、おにゃにゃい、ちまちゅ」
「こんにちは」
「こんにゃちわ」
「アーシュ」
「あーちゅ」
「アシュラウル王子」
「あちゅりゃうりゅ、おおじ」
「あれは何ですか?」
「ありぇは、なんでちゅか?」
「これは何ですか?」
「こりぇは、なんでちゅか?」
『だいぶ上達しましたね。イレーヌはやはり覚えが早いですよ』
『いまので、人間さんには伝わりそうですか?』
『はい。ゆっくり丁寧に話しかければ、充分伝わるでしょう』
よっしゃ――!
最初はふざけた様子のアーシュでしたが、私の熱意が伝わったようで、途中からは真面目に丁寧に教えてくれるようになりました。
『言葉に関しては、ログーザで生活していくうちに、自然と身についていくはずです。私も協力しますので、あまり焦らず、気楽に外の暮らしを楽しんでみてください』
『はい。ありがとうございます』
アーシュが一緒にいてくれて本当に心強いです。
母様が、人間さんの中で、まず彼を頼りにしたのも頷けます。
『到着しました。これが移動用の魔法陣です』
『これが……』
『どうしました?』
『いえ……、結構小さいので意外でした』
目指していた魔法陣は、私たちがかろうじて立てるくらいの、平らな岩の上にありました。膝丈くらいの高さの岩に、小さな円の図柄がくっきりとした線で深く刻みまれています。
『確かに、先程の魔法陣に比べれば、ひとまわり小さいですよね。あれは神獣であるあなたを召喚するための特別仕様でしたから。移動だけの魔法陣であれば、この大きさで充分です。大きさに比例して大勢運べるわけではないので、皆この図柄を複製して使っています。使用後も先ほどのように消えることはありません』
『行き先はどうやって指定するのです?』
『それは術者が詠唱するときに組み込むのですが、難しい話になってしまいますので、これも少しずつ勉強していきましょう』
『わかりました』
『もっとも、神獣であるあなたには、人間が扱う矮小な魔術など必要ないかもしれませんが……、さてと』
彼は魔法陣の上に、私を抱えたままヒョイと乗ると、
『では、まいりましょうか』
『……えっ?』
これまでとは打って変わった真剣な表情で、目を閉じ、小さく何かを唱え始めたのです。
いきなりっ?
アーシュの足元から光が出てきた!
なんかウニョウニョ昇ってきたあ――!
これは確実に始まってますよね?
何かが、始まっちゃってますよね!
まだ心の準備がっ! 覚悟がっ!
ええええ――!
こうして私は、本日二度目となる光の奔流に呑みこまれたのでした。
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