人間さんと暮らしてみましたが、ちっとも馴染めません。

白光猫(しろみつにゃん)

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遠慮なさらず

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 ケホッ

 まだ咳をしているアーシュに、私はお水を差し出しました。

 アーシュは喉が繊細なのかなあ?

 そういえば、彼は会った当初から私を見ては、口に手を添えたり、小さく咳払いをすることが多々ありました。

 え? まさか?
 喉が悪いことを、遠回しに訴えかけていたのですか? 自分はお客だからと遠慮していたのですか? そうだとしたら、重ね重ね気が利かない性格で申しわけなかったです。しかも酸味のあるお茶で、ざっくりずっぽりトドメを刺してしまいました。

『喉は痛くありませんか?』
『もう平気です。治まりました。お見苦しいところをお見せして申しわけありません』

 そう言いながらも、まだ遠慮されているのでは?
 念には念を入れて、ここはもう少し畳み掛けてみましょう。

『とても喉にきく飴玉はいかがですか?』
『いえ大丈夫です。ありがとうございます』

『喉に優しい飲みものもありますよ?』
『いえ、あの……』

『喉を温めながらツボを押してみるのもおすすめです』
『ツ……ツボですか?』
『はい。赤い鳥さんの喉しかやったことはありませんが、細いか太いかの違いで、きっと大して変わらないと思います。やってみますか?』

 怖くないよ~。イレーヌ怖くないよ~。なんでも言ってね~。
 わきわきと両指をうごめかす私に、

『お気遣いありがとうございます。とても魅力的なお申し出ですが、それはまたの機会にお願いしますね』

 アーシュは淡く微笑みながらも、やけにきっぱりとした口調で答えてくれました。
 おや? アーシュの上半身が少し後ろへのけ反っている気がするのですが、目の錯覚でしょうか?

『……ところでイレーヌ』
『はい、なんでしょう?』
『先程【人間】についてご質問されていましたが、よく聞き取れなかったのです。すみませんが、もう一度お願いできますか?』

 そうでした。質問しながらすっかり忘れていました。

『ええ~と、【人間】とはどんなものですか? 森の外にはたくさんの汚れた【人間】があると聞きました。父様たちがたまに掃除しに行っているのですが、私もそろそろお手伝いしてみたいのです。アーシュはやったことありますか? 道具は何が必要なのでしょう? ほうきや雑巾で足りますか?』
『……やはり私の聞き間違いではなかったのですね』

 遠い目をしたアーシュが、酷くかすれた声で呟きました。

 ほらやっぱり喉が痛いのでしょう?
 飴玉、差しあげます。
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