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風紀委員長様は引っ張られる(3―S教室編)
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食堂での騒動のせいで、午後の授業開始ギリギリになってしまった。
委員会室には戻らず、そのままSクラスへ向かうことにする。
教室へ入れば、すぐに一人の男が視界に飛び込んできた。相変わらず華やかで目立つ男だ。彼の周囲には何人かの取り巻きがいたが、俺の顔を見た途端にそそくさと散ってしまった。俺も同じ級友なのに……なんだか寂しいぞ。
「よお藤堂、伊織との食事は楽しかったか?」
「ああ」
いろいろ面倒事はあったが、いちいち如月に報告するのも面倒なので、短く返事をして席に着いた。何かあれば塚崎から直接連絡がいくだろう。
教科書を準備していると、コロンと目の前に何かが転がってきた。
「やるよ」
それは一口サイズのチョコレート菓子だった。
高級志向の生徒会長とは無縁な……ごくごく庶民的な駄菓子の登場に目が点になる。
手に取って隣に目をやれば、如月が笑みを浮かべて説明してきた。
「売店のおばちゃんがいつもオマケでくれるんだ」
「……売店……おばちゃん……」
似合わない言葉の羅列に、少々面食らってしまう。
「……おまえも自分で売店へ行くんだな」
「当たり前だ。俺をなんだと思ってる」
「てっきり親衛隊をパシリにしているものだと思ってた」
「そんなことで、親衛隊ごときに借りを作ってたまるか」
それもそうか。コイツの親衛隊嫌いは有名だった。
「藤堂はそういった市販の駄菓子は食べるのか?」
「正直あまり食べたことは無いが……これは美味そうだ。チョコレートは大好物だから遠慮なくいただく。ありがとう」
「そうか。……え? もう食べるのか?」
「我慢できん」
和食を食べてきたせいか、俺の舌はいま猛烈に甘いものを欲していた。食後のデザートに丁度いい。如月もたまには役に立つじゃないか。見直したぞ。
包み紙を開けて、ポイッと口に入れた。
あっま! うっま!
パティシエが届けてくれるデザートもいいが、こういう単純な駄菓子もいいものだ。目から鱗だった。今度俺もひとりで買いにいってみよう。
舌に残る甘みでテンションが上がり、その後は居眠りすることなく授業を受けることが出来た。
教科書を自分のロッカーへと仕舞い、教室をあとにする。
「――藤堂、ちょっといいか?」
すると、後ろから如月に声をかけられた。
慌てて追いかけてきたのか、少しだけ息が乱れている。
「おまえ……教室出るの早過ぎだ。危うく見失うところだった」
「まだあのクラスに慣れてないから、長居をしたくないんだ。異空間にいるようでいたたまれない」
「……Sクラスは、一年の時から半分以上面子変わってねえぞ」
「そうなのか? 顔見知りはお前くらいだと思っていた。今度じっくり見渡してみよう」
「何年かけても、おまえの視界に入れてもらえない級友たちが、俺は不憫で泣けてくる」
「安心してくれ。今年は心を入れ替えて、友達百人作る予定だ」
「高校三年目で言う台詞じゃねえ」
軽口を叩きあう俺達が珍しいのか、通行人がチラチラとあからさまな好奇の視線を向けてくる。それを如月は不快に感じたようで、
「上で話そう」
促されたのは、屋上へと続く階段だった。この時間で屋上へ行く生徒はあまりいないので、確かに話すには丁度いいだろうが……。
「……長くなるのか?」
「そんなにかからないが、静かな場所で話したい」
「階段登るのが面倒だから、ここでいい」
「あーもう、ウダウダうるせえな。とっととついて来い」
如月は俺の手首を握ると、引っ張るように歩き出してしまった。意外と楽ちんだったので、屋上に出るまで、させたいようにさせた。
「それで? 話って?」
「週末の件だ」
「週末?」
……会議でもあったか?
「……いかにも【覚えてない】ってツラだな」
「すまん。その通りだ。これっぽっちも覚えていない」
これ見よがしに、重い溜息を吐かれてしまった。
そんなに切迫した予定があっただろうか? 瑞貴からは何も聞いていないが、生徒会からクレームがくるような事態となれば大ごとだ。胸に不安がよぎる。
「週末に手料理を振る舞ってくれると言っただろう? 忘れたとは言わせんぞ」
「……」
すっかり忘れてた。
むしろ忘れていたかった。
「……そんなことで、ここに呼んだのか?」
「そんなこと? 俺にとっては最重要案件だ」
キラキラと、それはもう眩しい笑顔で如月は断言した。
……会長がこんなで、この学園は大丈夫なのだろうか?
委員会室には戻らず、そのままSクラスへ向かうことにする。
教室へ入れば、すぐに一人の男が視界に飛び込んできた。相変わらず華やかで目立つ男だ。彼の周囲には何人かの取り巻きがいたが、俺の顔を見た途端にそそくさと散ってしまった。俺も同じ級友なのに……なんだか寂しいぞ。
「よお藤堂、伊織との食事は楽しかったか?」
「ああ」
いろいろ面倒事はあったが、いちいち如月に報告するのも面倒なので、短く返事をして席に着いた。何かあれば塚崎から直接連絡がいくだろう。
教科書を準備していると、コロンと目の前に何かが転がってきた。
「やるよ」
それは一口サイズのチョコレート菓子だった。
高級志向の生徒会長とは無縁な……ごくごく庶民的な駄菓子の登場に目が点になる。
手に取って隣に目をやれば、如月が笑みを浮かべて説明してきた。
「売店のおばちゃんがいつもオマケでくれるんだ」
「……売店……おばちゃん……」
似合わない言葉の羅列に、少々面食らってしまう。
「……おまえも自分で売店へ行くんだな」
「当たり前だ。俺をなんだと思ってる」
「てっきり親衛隊をパシリにしているものだと思ってた」
「そんなことで、親衛隊ごときに借りを作ってたまるか」
それもそうか。コイツの親衛隊嫌いは有名だった。
「藤堂はそういった市販の駄菓子は食べるのか?」
「正直あまり食べたことは無いが……これは美味そうだ。チョコレートは大好物だから遠慮なくいただく。ありがとう」
「そうか。……え? もう食べるのか?」
「我慢できん」
和食を食べてきたせいか、俺の舌はいま猛烈に甘いものを欲していた。食後のデザートに丁度いい。如月もたまには役に立つじゃないか。見直したぞ。
包み紙を開けて、ポイッと口に入れた。
あっま! うっま!
パティシエが届けてくれるデザートもいいが、こういう単純な駄菓子もいいものだ。目から鱗だった。今度俺もひとりで買いにいってみよう。
舌に残る甘みでテンションが上がり、その後は居眠りすることなく授業を受けることが出来た。
教科書を自分のロッカーへと仕舞い、教室をあとにする。
「――藤堂、ちょっといいか?」
すると、後ろから如月に声をかけられた。
慌てて追いかけてきたのか、少しだけ息が乱れている。
「おまえ……教室出るの早過ぎだ。危うく見失うところだった」
「まだあのクラスに慣れてないから、長居をしたくないんだ。異空間にいるようでいたたまれない」
「……Sクラスは、一年の時から半分以上面子変わってねえぞ」
「そうなのか? 顔見知りはお前くらいだと思っていた。今度じっくり見渡してみよう」
「何年かけても、おまえの視界に入れてもらえない級友たちが、俺は不憫で泣けてくる」
「安心してくれ。今年は心を入れ替えて、友達百人作る予定だ」
「高校三年目で言う台詞じゃねえ」
軽口を叩きあう俺達が珍しいのか、通行人がチラチラとあからさまな好奇の視線を向けてくる。それを如月は不快に感じたようで、
「上で話そう」
促されたのは、屋上へと続く階段だった。この時間で屋上へ行く生徒はあまりいないので、確かに話すには丁度いいだろうが……。
「……長くなるのか?」
「そんなにかからないが、静かな場所で話したい」
「階段登るのが面倒だから、ここでいい」
「あーもう、ウダウダうるせえな。とっととついて来い」
如月は俺の手首を握ると、引っ張るように歩き出してしまった。意外と楽ちんだったので、屋上に出るまで、させたいようにさせた。
「それで? 話って?」
「週末の件だ」
「週末?」
……会議でもあったか?
「……いかにも【覚えてない】ってツラだな」
「すまん。その通りだ。これっぽっちも覚えていない」
これ見よがしに、重い溜息を吐かれてしまった。
そんなに切迫した予定があっただろうか? 瑞貴からは何も聞いていないが、生徒会からクレームがくるような事態となれば大ごとだ。胸に不安がよぎる。
「週末に手料理を振る舞ってくれると言っただろう? 忘れたとは言わせんぞ」
「……」
すっかり忘れてた。
むしろ忘れていたかった。
「……そんなことで、ここに呼んだのか?」
「そんなこと? 俺にとっては最重要案件だ」
キラキラと、それはもう眩しい笑顔で如月は断言した。
……会長がこんなで、この学園は大丈夫なのだろうか?
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