或いは、逆上のアリス

板近 代

文字の大きさ
上 下
36 / 44

36『アリスよさらば』

しおりを挟む
 アリスはルールーの元に帰った瞬間、こう言い放ちました。

「ルールー、アリスが帰ってきたわよ!」

 ルールーは応えます。

「元の生意気なアリスに戻ったな。ははは、なんてこった。素晴らしいほどに冗談じみている」

 アリスの後ろに立っていた少女を見て、ルールーは思わず笑ってしまいました。アリスと同じライトブルーの瞳を持つ少女、エリーの顔を見て。

「なに笑ってるのよ」
「ああ、君がアリスに戻ってくれたことが嬉しくてね」
「私はずっとアリスよ! くだらないこと言う暇があるなら、エリーが着る服を用意してくれないかしら?」

 ルールーはケタケタと笑いながら、全裸のエリーにアリスと全く同じライトブルーとホワイトで構成されたエプロンドレスを着せてやりました。

「まるで鏡を見ているみたいね。私とエリーは髪の色以外、そっくりよ。どうして今まで気づかなかったのかしら、ああ、服を着ていなかったから鏡にならなかったのね」
「鏡ってなに?」
「鏡は鏡よ、鏡さん。もう、ないけれど」

 右目のないエリーと、左目のないアリスが向き合うと視線がまっすぐにぶつかります。

「二人とも、紅茶を飲まないか」
「あら、お茶会ってわけね。どうかしらエリー?」
「お茶ってなに?」
「教えてあげるわ。お菓子もあるのよ」
「お菓子ってなに?」
「ねぇ、ルールー。どうして笑うの?」

 お茶を準備しながら、何度も吹き出し笑っているルールーにアリスは不満顔。

「いやあ、君たちの瞳がまるで地球のようだからね」

 ルールーは思い出します。私が作り出したこの似非アリスは左目が少し、ほんの少し、しっかりと観察した者だけが辛うじてわかるレベルで濁っていたなと。私はそれを認めたくなかったのだなと。

「さて、お茶会をはじめるわよ!」

 テーブルには、可愛らしい茶器と色とりどりのお菓子。エリー、人生初のお茶会でした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

我ら新興文明保護艦隊

ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら? もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら? これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。 ※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

処理中です...