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15 酒
しおりを挟む昨年の暮れだった
クリスマスの数日前やり切れない感情を抱えたまま肩を当てた程度で揉み合いになっちまった相手トシミ、
今日は彼と俺の家で呑むことになった
あの夜連絡先を交換して1ヶ月ぶりの再会だった
金山駅から名城線に揺られて俺の住む名城公園まで男は来た
駅で待合せをして、奴を自宅に迎え入れた
4階建てアパートの4階の部屋で男二人
酉の刻から戌の刻に移ろうかという頃だった
俺は昨日からの夜勤明けで睡眠を取って申の刻に目を覚まして調理をした
ニラや玉葱に豚肉を材料としてチヂミなんかを作って一丁前に客人を饗す準備を済ましていた
「チヂミ作ったんだ」
「へえ、ハミル料理するのか」
「いや、簡単にできるのな」
「チヂミは手間かかるだろ」
「まあ、座ってくれよ」
ビールで乾杯して焼酎に進めて数杯飲った
トシミはメビウスの電子タバコを喫って、俺はラッキーストライクの電子タバコを吸った
「なあハミル、いいか」
「?」
トシミが何かしら箱をダウンジャケットから取り出して右手で揺らしていた
「ああ、紙か」
「酒呑むとな。たまに欲しくなるんだよ」
「いいよ。俺ももらっていいかい」
「ああ、いいぜ」
キャメルの紙タバコを2人で咥えた
久しぶりに吸った紙タバコに細胞が活性化したような感覚を覚えた
「はは、クラクラすんな」
「紙は吸ってないか」
「ああ、かなり久々だな」
「そうか」
「うめぇ」
しばらく酒を交わしながら、男同士のくだらない話で屈託のない時間を過ごした
「トシミは仕事は何してんだ」
「俺は造園師だ」
「造園師。あれか庭作ったりするのか」
「そうだな。庭園だけじゃなくて公園とかな。企業からの依頼も多い」
「へえ、すごいな。独立してやってるのか」
「いや、俺は雇われだ。そういうことも考えないでもないけどな」
「そうか。羨ましいな」
「いや」
白い煙が立ち昇り香ばしさを味わった
齢40を過ぎて全くのプライベートで親しいFRIENDができるとは思わなかった
こうして友と歓楽の時を過ごすことができるなら、それも悪くはないかなと、
千七菜との行く末ばかりに気を取られて視界が狭まっていたのかもしれない
価値観の納め所なんてどう変わるかわからない
何もかも朧気にしちまってただ楽しめりゃ良い、刹那的で短絡的な思考だが脳に憩いを与えてやれるかもしれねえ
「よし」
「どうしたトシミ」
「ちょっと酒作るわ」
「ああ、それ」
「最近ちょっとな」
トシミが手ぶらじゃなんだからと持ってきたドライ・ジンとドライ・ベルモット、雑にオリーブをカクテルピンに突いた、
俺はグラスを少し上げて礼を告げた
・
「なあトシミ、ハミルENって知ってるか」
「なんだ、そりゃ」
「血縁や婚姻ではない形態で家族を築いている」
「なんだと」
「おかしな話だろ」
「・・・・」
「なあ、」
「・・詳しく聞かせてくれ」
トシミが灰皿に吸殻を増やして、俺の目を見た
俺はマティーニを飲み干して、目を逸らして、オリーブを口にして声を塞いだ
#HAMIRU
#ハミル
#トシミ
#ミステリH
#20250124
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