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5月の森
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私は定期試験に向けて徹夜でヘッドフォンを付けて勉強していた。しかし、人間なんてものはそう長く勉強なんてしていられないものであり、あっという間に集中力がきれてしまった。その集中力が切れた時に、なんとなく窓からスルスルと入ってきた冷気に自然と注意がいった。
その窓からスルスルと私の足にやってきた冷気はどこか変だった。何か臭いがするとか何か変な色が付いた気体があるとかそういうのではない。言ってしまうとおかしいのは、その冷たさだった。5月に入りカエルも鳴いているというのに、その日の夜は健やかな冷たさをまとっていた。もちろん、気温というのは急に「やっぱやーめたっ」てな具合に変わったりするものであり、5月に入っても寒くなることぐらいあるものだ。
しかし、私が窓のカーテンから外の様子や空気を感じたとき、やはりおかしかった。というのは、夜にしてもあまりにも静かすぎたし、空気が朝靄のような一種の神秘性を帯びていたのだ。そういった静けさや神秘性は近くにある標高500メートルの山の荘厳さと相まってさらに興味深いものになっていた。
私は怖い物見たさや好奇心から山に向かうことにした。こんな真夜中に山にいっても、もちろん何も見えないことぐらい分かっていたが、その時ばかりはいけるような気がしていた。
実際に、山の麓まで行ってみるとそこには境界線があった。こちらとあちらを結ぶ境界線。私はあちらに行くべき存在であり、行かなければならなかった。しかし、私はあちらへは行けなかった。あちらの世界へ行くための試練に私はひるんでしまったためである。こうなってしまった以上、もう扉は開かない。私はチャンスを逃したのだ。
私は翌日の朝もう一度森に行ってみたがやはり扉は消えていた。
そうして、5月の森は消えた。
その窓からスルスルと私の足にやってきた冷気はどこか変だった。何か臭いがするとか何か変な色が付いた気体があるとかそういうのではない。言ってしまうとおかしいのは、その冷たさだった。5月に入りカエルも鳴いているというのに、その日の夜は健やかな冷たさをまとっていた。もちろん、気温というのは急に「やっぱやーめたっ」てな具合に変わったりするものであり、5月に入っても寒くなることぐらいあるものだ。
しかし、私が窓のカーテンから外の様子や空気を感じたとき、やはりおかしかった。というのは、夜にしてもあまりにも静かすぎたし、空気が朝靄のような一種の神秘性を帯びていたのだ。そういった静けさや神秘性は近くにある標高500メートルの山の荘厳さと相まってさらに興味深いものになっていた。
私は怖い物見たさや好奇心から山に向かうことにした。こんな真夜中に山にいっても、もちろん何も見えないことぐらい分かっていたが、その時ばかりはいけるような気がしていた。
実際に、山の麓まで行ってみるとそこには境界線があった。こちらとあちらを結ぶ境界線。私はあちらに行くべき存在であり、行かなければならなかった。しかし、私はあちらへは行けなかった。あちらの世界へ行くための試練に私はひるんでしまったためである。こうなってしまった以上、もう扉は開かない。私はチャンスを逃したのだ。
私は翌日の朝もう一度森に行ってみたがやはり扉は消えていた。
そうして、5月の森は消えた。
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