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3章 辺境の地ライムライトへ
23、旦那さんは乙女ゲームの攻略対象者でした
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「そういえばレオンさん、色々と噂になってるわよ」
「噂ァ?」
何ミルファさんの言う噂にピンとこない様子のレオンハルトは首を傾げた。髪を手で払うミルファさんの鈴型イヤリングが小さく音を立てて揺れる。
「ええ、わたしが聞いたのは、あの『紅竜』レオンハルトがようやくつがいを見つけて、あちこちで見せびらかしてるって。確か、暗殺者ギルドに攫われて殺されそうになっちゃったつがいを、レオンさんがギルドを壊滅させて助け出したんでしょう?」
「「は?」「ん?」」
レオンハルトと同時に声が出て、お互いなんとなく見つめ合って首を傾げた。微妙に合っている……けど?
「あら? 違うの?」
「いや……、まあいいや。それで?」
怪訝そうな表情のミルファさんにレオンハルトが先を促した。
「でも、レオンさんが毎日のように愛を囁いても、優しくしても、ぜんぜん絆されてくれなくてむしろ塩対応。あの魔王討伐の英雄レオンさん相手にそんな態度を取れるなんて、レオンさんのつがいは魔王よりも手強いんじゃないか、ですって」
「はぁ……」
思わずため息が出た。ここに来る途中に「頑張って口説けよ~~」という声かけをされたけれど、この噂を聞いたことがあったかららしい。レオンハルトに助けられたのと邪険にしてるのは本当だけど、僕が魔王よりも強いってどんな冗談だ。
「あ、それとレオンさんって童貞だってほんと?」
「ぶほっ」
「え……。そうなんですか?」
げほげほと咽せたレオンハルトの顔は海猿のように歪んで赤くなっている。こんな面白い顔は初めて見た。
因みに海猿とは、くしゃっと潰れたような顔をした猿の魔物で、海に面する崖に洞窟を作って棲む。
しばらく下を向いて咽せていたレオンハルトだったがようやく立ち直ったのか、キッと上を向いて声を限りに叫んだ。
「その噂流したの、ぜってえシュタイナーだろっ!!」
「さあ、どうかしらね」
ミルファさんは惚けたが、その態度から明らかにレオンハルト童貞疑惑の噂の出所は、グランダンナのギルマスで小人族のシュタイナーさんで間違いないだろう。
レオンハルトはぐぬぬぬっと唸ってから怖い顔をして僕に言い含めるように声を落とした。
「いいか? シュタイナーには気を付けろ。アイツ、見た目は神の御遣いのように見目美しいが、実際は魔王よりも恐ろしいヤツだ。腹黒で嘘吐きで誰に対しても情け容赦ない。見た目だけで侮って手ェ出して返り討ちにあったやつはごまんといる。特に『小さい』と『可愛い』は禁句だ。くれぐれも初対面で言うんじゃねえぞ。言ったら最後、生きて帰れねぇ」
「う、うん……」
僕はコクコクと頷いた。シュタイナーさんはいつもあることないこと言うので、周りは話半分にしか聞かないらしい。
レオンハルトまさかの童貞疑惑はともかく、こんな王都から離れた辺境に近い街の人にまでつがいの情報が届いていたことに驚きを隠せない。これが魔王討伐の英雄の有名税というものか。
ミルファさんが聞いた噂では僕は何故か誘拐された被害者という扱いになっているけれど、しばらくの後にレオンハルト暗殺に失敗した元暗殺者がつがいだったという正確な情報が伝わるだろう。メレキオールで『天上の射手』のメンバーにレオンハルトがさらっと暴露していたし。
みんなから英雄扱いされるレオンハルトを暗殺しようとして失敗したのにも関わらず、その暗殺対象者に温情をかけられて助けられた惨めな元暗殺者がつがい。それも助けられたくせにレオンハルトをつがいだと認めずに邪険にしている。そう考えると、僕は端から見れば相当に嫌な奴だ。
きっと遠くない未来、僕を非難したり悪し様に言う輩が出てくる。その時が来たら僕に向けられた悪意は甘んじて受け入れよう、そう心に誓った。僕の償いははじまったばかりだから。
ガッと、レオンハルトはいきなり僕の頭に手を置き、大きな手のひらでガシガシと撫ではじめた。
「なぁに決意の籠った目ェしてんだよ。よく分からんが困ったことがあったら俺に言えよ。前にも言ったと思うが、俺はお前の保護者であり、お前は俺の大事なつがいだからな。親は子の面倒を見るもんだし、つがいは最愛の相手を守るもんだ」
レオンハルトのどっしりとした山のように動じない強さと手の温かさに少しだけ心が軽くなったような気がした。
「ありがとう」
「お、おう」
きゅっと袖を掴んで下を向いて聞こえるか聞こえないかくらいの声量で感謝の言葉を伝える。
僕にできることは、過去の罪を背負いながら今を真っ当に生き、周りに信頼してもらえるような人になることだけだ。人を殺すためだけに使っていた僕の力を今度は誰かを守ることに使おう。過去の罪は消えることはなく僕を苛むけれど、この痛みを薄くしていくことはできる。
「ケイくんがレオンさんを邪険にしてるって聞いてたけど、これのどこが塩対応なのよ。なぁに? このラブラブっぷり」
「え? うわっ」
今の今まで頭を撫でられたままだったことに気が付いて慌てて袖を掴んでいた手を離し、身体を捻ってレオンハルトの手を避けて逃げる。
「ちょっと! そんなに強く頭をガシガシ触らないでくれます? 髪の毛が抜けたらどうしてくれるんですか」
「さっきまでの殊勝な態度はどこいった!?」
「気のせいでは?」
僕たちのやり取りを生暖かい目で見守りながらミルファさんがクスクス笑っている。
「ほら、仲良しさんじゃない。喧嘩をするほど仲がいいってあなたたちみたいなことを言うのね」
「そうだろ~~」
レオンハルトが嬉しそうに相槌を打つ。僕は真っ赤になって言い返した。
「僕はまだレオンハルトさんをつがいだって認めたわけではないですから! 僕は人間ですから、つがいとか言われてもピンときません」
「そうよね……。獣人のつがいに関する執着心はやっぱり人間にはあまり伝わらないのよねえ……」
ミルファさんが頬に手を当ててため息を吐いた。吐息にとても深い実感のような感情が籠められているような気がした。なぜだろうと思っていると、レオンハルトがその答えをすぐに教えてくれた。
「ああ……。そういやミルファの旦那も人間だったな。最初はやっぱつがいって信じちゃくれなかったか?」
「ああ、うちは色々と事情があって、ロミオがわたしのつがいなのって告白したのは一年後くらいだったかしら。でもその時に言われたわ。つがいって言われてもよく分からないって」
ミルファさんは自分と旦那さんの出会いを僕たちに語ってくれた。
ミルファさん夫婦は旦那さんが人間族で、名前はロミオさん。元は男爵家の次男で、男爵は下位の爵位ではあるけれど立派な貴族だ。獣人と結婚するなら家を出ろと言われ、ミルファさんと生きることを選んだロミオさんは貴族籍から抜けて平民になり、今では冒険者ギルドの実務を担当するサブギルドマスターをしている。今日のレイドにはギルマス、つまりシュタイナーさんのおもりと後方支援で参加している。
ミルファさんと出会う少し前、ロミオさんには将来を約束した仲の良い平民の幼馴染がいた。その幼馴染は特殊な光魔法が使えることが判明して、ロミオさんと同じ貴族学園に特待生として入ることになった。
くるくると表情を変えよく笑う、優しくて思いやりのあるいい子だった幼馴染は、学園に入学する直前に流行病に罹って三日三晩生死を彷徨った。その後回復したが、別人かと疑うほど性格が変わり、気性が激しくなってしまったらしい。
「彼女が言うには、将来の約束は小さな子供同士の口約束だし、自分はもうすぐ入学する貴族学園で王子様と出会って恋に落ちる運命だからって訳が分からない理由でロミオを振ったのよ。彼はショックを受けて、一緒に通うはずだった学園の入学を取り消して領地へ引き篭もったの」
王子様と運命の出会いをして恋に落ちるなんて、正直言ってその幼馴染さん、脳内花畑なんだろうか。学園に入学する年齢なら僕と同い年のはずなのに幼稚すぎる。ロミオさんじゃなくてもそんな訳の分からない理由で振られたら困惑する。
そしてロミオさんが領地へと向かう馬車の護衛任務を受けたのがミルファさんだった。貴族の護衛任務はC級以上との規定があるため、『神の鉄槌』の解散後、ソロで活動していたB級冒険者のミルファさんと、同ランクの冒険者数名が護衛任務を請け負った。
「会ってすぐにロミオが自分のつがいだと気が付いたの」
失恋したばかりのロミオさんを慮ってつがいのことを伝えることはせず、道中も、領地へと到着した後も、ミルファさんはその地に留まり、ずっとロミオさんの傍らに寄り添い、献身的に世話を焼き、愚痴を聞いては慰めて、時には発破をかけて立ち直ることができるよう尽力した。
「その甲斐あってロミオは少しずつ笑顔を見せるようになってくれた。『実は、あなたはわたしのつがいなの』って告白するのに一年以上かかっちゃったわ」
ミルファさんは何でもないことのように言ったけれど、男爵領に留まり続けてまでロミオさんの傍にいて立ち直らせるなんて、相当大変だっただろう。
「でもね、ようやくつがいだって伝えたのにさっきのケイくんみたいに『つがいだなんて言われても、人間の僕にはフェロモンも嗅ぎ取れないし、つがいだというその感覚も分からない』って言われちゃって。ショックを受けて高熱を出して寝込んじゃったわ。でもね、わざわざお見舞いに来てくれたロミオが病床でこう言ったの」
『君は僕が辛い時も悲しい時もいつも一緒にいてくれて、献身的に支えてくれた。僕は獣人じゃないからつがいっていうのはよく分からないけれど、つがいであってもそうじゃなくても、僕は君に恋をしたと思うよ』
「そう言ってくれたの。ロミオはつがいの繋がりを感じられなくてもわたしを好きになってくれた。その心がとても嬉しかったわ」
ミルファさんが両手で顔を覆った。耳の縁が赤く、尻尾が左右にバッサバッサと激しく揺れている。自分で惚気たくせに照れたらしい。恥ずかしがっているミルファさんは外見も相まって可憐な少女のようだった。
ミルファさんを落ち着かせるように、レオンハルトはコホン、と一つ咳いた。
「あ、あらやだ。わたしったら」
わざとらしい咳に正気に戻ったミルファさんは真っ赤に染まった顔のまま自分の尻尾をぎゅっと抱きしめた。
恋する乙女のようなミルファさんはとても可愛くて輝いていた。感情が乏しい僕は恋愛についてよく分からないけれど、こんな幸せな顔ができるのならば、恋愛とは悪いものではないのだろう。
いつか分かるといいな、そう思った。
ロミオさんの幼馴染のその後。
彼女は学園の卒業式で、王子の婚約者だった高位貴族の令嬢に冤罪を被せたことがバレて不敬罪で捕まり、戒律の厳しい修道院へ送られることになった。しかし修道院へ行く途中の山中で野盗に襲われて亡くなっている。野盗を雇ったのは王族とも、婚約者の令嬢の親とも言われているが真相は不明である。
…………………………………………………………………
【補遺】
乙女ゲーム攻略対象者
・エクラン国第六王子(イグネイシャスの腹違いの弟。侯爵令嬢だった側妃の子のため、王位継承順位はこちらの方が上だった)
・宰相の義理の息子(眼鏡枠)
・副騎士団長の息子(脳筋)
・隣国エマーシャル王国からの留学生、侯爵子息(チャラ男)
・ヒロインが昔助けた暗殺者『L』(『深海』所属、ケイの先輩)
ヒロインの名前はジュリエッタ。ロミオさんはヒロインの幼馴染枠だったが、ヒロインが前世を思い出したため攻略対象から外れた。
野盗を雇ったのは第五王子のお母さん。ヒロインが息子を誑かしたせいで息子の王位継承権が剥奪されたから。
後に攻略対象者の一人だった『L』は路地裏で息がない状態で発見された。その手口の鮮やかさから殺ったのは『A』ではないかと言われている。
【おまけ】
(side.グランダンナの人たち ある噂)
最近になってここグランダンナで『紅竜』レオンハルトのある噂が流れている。
ーーねえ聞いた?
レオンハルトさんにつがいが見つかったって。
ああーー、うん。私も聞いたわ。レオンさん狙ってたからちょっとショック。
そのつがい、まだ十代らしいな。いいなぁ、若くて肌ぴちぴちで可愛いんだろうなぁ。くーーっ、羨ましいねぇ。
つがいは女の子じゃないぜ。十五歳の男の子だってよ。
え、ちょっと。いったいいくつ歳の差あるのよ! え、七十……レオンさんってショタコン(※落ち人が伝えた言葉)だったの!?
確か、暗殺者ギルドに囚われてたつがいさんを助け出すためにレオンさんがギルドを壊滅させたんでしょう?
暗殺者ギルドの手練れ集団を一人で壊滅なんて、さっすが竜人、最強だぜ。
え、違げぇよ。そのつがいは『紅竜』を狙った少年暗殺者だったって!
えーー、暗殺者? こわぁい。
つまりは自分の命を狙った敵が愛するつがいだったてことよね? なにその運命的な出会い! 愛する人は敵でした……って、なんてロマンチック……。
でもさ、あの滅茶苦茶強いレオンハルト様を狙うなんてばかじゃないの。勝負する前に負けるの分かりそうなものじゃない?
暗殺者ギルドって確か幹部以外みんなに奴隷印を刻んで言うこと聞かせて人殺しさせてんのよね……。相手が誰でも命令されたら実行しないといけないって。
ああ。このレオンハルトさん暗殺依頼さあ……。大きな声じゃ言えないけれど、依頼主が実は王族だったって話だぜ……。
ああーー、王族からの依頼じゃ、レオンさんが強くて暗殺に絶対失敗するって分かっていたとしても、暗殺者ギルドは断れないか……。
王族案件……。
それもさ、その依頼主の王族、つい最近誰かに殺されたそうだぜ……。
えっ……。
ヤバいんじゃない?
あまり話さない方がいいぜ……。誰が聞いてるかも分かんねぇ。
そうよね……。うん……。
あーー、えっとーー、あ! そうそう。話は変わるけどさ、その子は人間だからいくら『紅竜』が自分のつがいだって言っても全く信じてもらえないみたいよ。
ああ、竜人と人間だもんね。異種族同士のつがいだと難しいわよね……。人間にフェロモンを感じることはできないから。
だからあのレオンハルトさまに対しても塩対応なんですって。
あのレオンさんにそんな態度を取れるなんてすごいな、そのつがいさん。魔王よりも最強じゃね?
ええーーもったいない! わたしだったらすぐ受け入れるのになぁ。だってレオンさんって見目もいいし、明るいし、何より高ランク冒険者って高級取りじゃない!
それにレオンさんって一途よね。告白されても、いつか出会うかもしれないつがいさんを待っていたいからって断ってるし。娼館なんかにも行かないみたいだし。
ーーあ、その事なんだけど。
ーーレオンハルトさんって実は童貞って聞いた?
えええぇぇぇ!!
うそぉ。
やっだぁ。マジ?
きゃああ。
嘘でしょ?
え、だってギルマスがそう言ってたわよ。
やだあんた、シュタイナーさまの言う事信じちゃダメよ。あの人、嘘ばっかりつくんだから。
でも、まさかね。
娼館へ行かない、言い寄られても断ってる、誰かと交際しているところを見たことがない、恋人の噂も立ったことがない……。え、え、やっぱり童貞……。
わたし、DTはナシかな。
私はつがいさん一途ってことでまあアリかな。
ええ~~。やっぱり男は経験豊富な方がいいって。女の子ならはじめての方が喜ばれるけどねぇ。
(男たち)
あーあーあー、俺たちは何も聞いてなぁーーい。何も聞こえなーーい。
「噂ァ?」
何ミルファさんの言う噂にピンとこない様子のレオンハルトは首を傾げた。髪を手で払うミルファさんの鈴型イヤリングが小さく音を立てて揺れる。
「ええ、わたしが聞いたのは、あの『紅竜』レオンハルトがようやくつがいを見つけて、あちこちで見せびらかしてるって。確か、暗殺者ギルドに攫われて殺されそうになっちゃったつがいを、レオンさんがギルドを壊滅させて助け出したんでしょう?」
「「は?」「ん?」」
レオンハルトと同時に声が出て、お互いなんとなく見つめ合って首を傾げた。微妙に合っている……けど?
「あら? 違うの?」
「いや……、まあいいや。それで?」
怪訝そうな表情のミルファさんにレオンハルトが先を促した。
「でも、レオンさんが毎日のように愛を囁いても、優しくしても、ぜんぜん絆されてくれなくてむしろ塩対応。あの魔王討伐の英雄レオンさん相手にそんな態度を取れるなんて、レオンさんのつがいは魔王よりも手強いんじゃないか、ですって」
「はぁ……」
思わずため息が出た。ここに来る途中に「頑張って口説けよ~~」という声かけをされたけれど、この噂を聞いたことがあったかららしい。レオンハルトに助けられたのと邪険にしてるのは本当だけど、僕が魔王よりも強いってどんな冗談だ。
「あ、それとレオンさんって童貞だってほんと?」
「ぶほっ」
「え……。そうなんですか?」
げほげほと咽せたレオンハルトの顔は海猿のように歪んで赤くなっている。こんな面白い顔は初めて見た。
因みに海猿とは、くしゃっと潰れたような顔をした猿の魔物で、海に面する崖に洞窟を作って棲む。
しばらく下を向いて咽せていたレオンハルトだったがようやく立ち直ったのか、キッと上を向いて声を限りに叫んだ。
「その噂流したの、ぜってえシュタイナーだろっ!!」
「さあ、どうかしらね」
ミルファさんは惚けたが、その態度から明らかにレオンハルト童貞疑惑の噂の出所は、グランダンナのギルマスで小人族のシュタイナーさんで間違いないだろう。
レオンハルトはぐぬぬぬっと唸ってから怖い顔をして僕に言い含めるように声を落とした。
「いいか? シュタイナーには気を付けろ。アイツ、見た目は神の御遣いのように見目美しいが、実際は魔王よりも恐ろしいヤツだ。腹黒で嘘吐きで誰に対しても情け容赦ない。見た目だけで侮って手ェ出して返り討ちにあったやつはごまんといる。特に『小さい』と『可愛い』は禁句だ。くれぐれも初対面で言うんじゃねえぞ。言ったら最後、生きて帰れねぇ」
「う、うん……」
僕はコクコクと頷いた。シュタイナーさんはいつもあることないこと言うので、周りは話半分にしか聞かないらしい。
レオンハルトまさかの童貞疑惑はともかく、こんな王都から離れた辺境に近い街の人にまでつがいの情報が届いていたことに驚きを隠せない。これが魔王討伐の英雄の有名税というものか。
ミルファさんが聞いた噂では僕は何故か誘拐された被害者という扱いになっているけれど、しばらくの後にレオンハルト暗殺に失敗した元暗殺者がつがいだったという正確な情報が伝わるだろう。メレキオールで『天上の射手』のメンバーにレオンハルトがさらっと暴露していたし。
みんなから英雄扱いされるレオンハルトを暗殺しようとして失敗したのにも関わらず、その暗殺対象者に温情をかけられて助けられた惨めな元暗殺者がつがい。それも助けられたくせにレオンハルトをつがいだと認めずに邪険にしている。そう考えると、僕は端から見れば相当に嫌な奴だ。
きっと遠くない未来、僕を非難したり悪し様に言う輩が出てくる。その時が来たら僕に向けられた悪意は甘んじて受け入れよう、そう心に誓った。僕の償いははじまったばかりだから。
ガッと、レオンハルトはいきなり僕の頭に手を置き、大きな手のひらでガシガシと撫ではじめた。
「なぁに決意の籠った目ェしてんだよ。よく分からんが困ったことがあったら俺に言えよ。前にも言ったと思うが、俺はお前の保護者であり、お前は俺の大事なつがいだからな。親は子の面倒を見るもんだし、つがいは最愛の相手を守るもんだ」
レオンハルトのどっしりとした山のように動じない強さと手の温かさに少しだけ心が軽くなったような気がした。
「ありがとう」
「お、おう」
きゅっと袖を掴んで下を向いて聞こえるか聞こえないかくらいの声量で感謝の言葉を伝える。
僕にできることは、過去の罪を背負いながら今を真っ当に生き、周りに信頼してもらえるような人になることだけだ。人を殺すためだけに使っていた僕の力を今度は誰かを守ることに使おう。過去の罪は消えることはなく僕を苛むけれど、この痛みを薄くしていくことはできる。
「ケイくんがレオンさんを邪険にしてるって聞いてたけど、これのどこが塩対応なのよ。なぁに? このラブラブっぷり」
「え? うわっ」
今の今まで頭を撫でられたままだったことに気が付いて慌てて袖を掴んでいた手を離し、身体を捻ってレオンハルトの手を避けて逃げる。
「ちょっと! そんなに強く頭をガシガシ触らないでくれます? 髪の毛が抜けたらどうしてくれるんですか」
「さっきまでの殊勝な態度はどこいった!?」
「気のせいでは?」
僕たちのやり取りを生暖かい目で見守りながらミルファさんがクスクス笑っている。
「ほら、仲良しさんじゃない。喧嘩をするほど仲がいいってあなたたちみたいなことを言うのね」
「そうだろ~~」
レオンハルトが嬉しそうに相槌を打つ。僕は真っ赤になって言い返した。
「僕はまだレオンハルトさんをつがいだって認めたわけではないですから! 僕は人間ですから、つがいとか言われてもピンときません」
「そうよね……。獣人のつがいに関する執着心はやっぱり人間にはあまり伝わらないのよねえ……」
ミルファさんが頬に手を当ててため息を吐いた。吐息にとても深い実感のような感情が籠められているような気がした。なぜだろうと思っていると、レオンハルトがその答えをすぐに教えてくれた。
「ああ……。そういやミルファの旦那も人間だったな。最初はやっぱつがいって信じちゃくれなかったか?」
「ああ、うちは色々と事情があって、ロミオがわたしのつがいなのって告白したのは一年後くらいだったかしら。でもその時に言われたわ。つがいって言われてもよく分からないって」
ミルファさんは自分と旦那さんの出会いを僕たちに語ってくれた。
ミルファさん夫婦は旦那さんが人間族で、名前はロミオさん。元は男爵家の次男で、男爵は下位の爵位ではあるけれど立派な貴族だ。獣人と結婚するなら家を出ろと言われ、ミルファさんと生きることを選んだロミオさんは貴族籍から抜けて平民になり、今では冒険者ギルドの実務を担当するサブギルドマスターをしている。今日のレイドにはギルマス、つまりシュタイナーさんのおもりと後方支援で参加している。
ミルファさんと出会う少し前、ロミオさんには将来を約束した仲の良い平民の幼馴染がいた。その幼馴染は特殊な光魔法が使えることが判明して、ロミオさんと同じ貴族学園に特待生として入ることになった。
くるくると表情を変えよく笑う、優しくて思いやりのあるいい子だった幼馴染は、学園に入学する直前に流行病に罹って三日三晩生死を彷徨った。その後回復したが、別人かと疑うほど性格が変わり、気性が激しくなってしまったらしい。
「彼女が言うには、将来の約束は小さな子供同士の口約束だし、自分はもうすぐ入学する貴族学園で王子様と出会って恋に落ちる運命だからって訳が分からない理由でロミオを振ったのよ。彼はショックを受けて、一緒に通うはずだった学園の入学を取り消して領地へ引き篭もったの」
王子様と運命の出会いをして恋に落ちるなんて、正直言ってその幼馴染さん、脳内花畑なんだろうか。学園に入学する年齢なら僕と同い年のはずなのに幼稚すぎる。ロミオさんじゃなくてもそんな訳の分からない理由で振られたら困惑する。
そしてロミオさんが領地へと向かう馬車の護衛任務を受けたのがミルファさんだった。貴族の護衛任務はC級以上との規定があるため、『神の鉄槌』の解散後、ソロで活動していたB級冒険者のミルファさんと、同ランクの冒険者数名が護衛任務を請け負った。
「会ってすぐにロミオが自分のつがいだと気が付いたの」
失恋したばかりのロミオさんを慮ってつがいのことを伝えることはせず、道中も、領地へと到着した後も、ミルファさんはその地に留まり、ずっとロミオさんの傍らに寄り添い、献身的に世話を焼き、愚痴を聞いては慰めて、時には発破をかけて立ち直ることができるよう尽力した。
「その甲斐あってロミオは少しずつ笑顔を見せるようになってくれた。『実は、あなたはわたしのつがいなの』って告白するのに一年以上かかっちゃったわ」
ミルファさんは何でもないことのように言ったけれど、男爵領に留まり続けてまでロミオさんの傍にいて立ち直らせるなんて、相当大変だっただろう。
「でもね、ようやくつがいだって伝えたのにさっきのケイくんみたいに『つがいだなんて言われても、人間の僕にはフェロモンも嗅ぎ取れないし、つがいだというその感覚も分からない』って言われちゃって。ショックを受けて高熱を出して寝込んじゃったわ。でもね、わざわざお見舞いに来てくれたロミオが病床でこう言ったの」
『君は僕が辛い時も悲しい時もいつも一緒にいてくれて、献身的に支えてくれた。僕は獣人じゃないからつがいっていうのはよく分からないけれど、つがいであってもそうじゃなくても、僕は君に恋をしたと思うよ』
「そう言ってくれたの。ロミオはつがいの繋がりを感じられなくてもわたしを好きになってくれた。その心がとても嬉しかったわ」
ミルファさんが両手で顔を覆った。耳の縁が赤く、尻尾が左右にバッサバッサと激しく揺れている。自分で惚気たくせに照れたらしい。恥ずかしがっているミルファさんは外見も相まって可憐な少女のようだった。
ミルファさんを落ち着かせるように、レオンハルトはコホン、と一つ咳いた。
「あ、あらやだ。わたしったら」
わざとらしい咳に正気に戻ったミルファさんは真っ赤に染まった顔のまま自分の尻尾をぎゅっと抱きしめた。
恋する乙女のようなミルファさんはとても可愛くて輝いていた。感情が乏しい僕は恋愛についてよく分からないけれど、こんな幸せな顔ができるのならば、恋愛とは悪いものではないのだろう。
いつか分かるといいな、そう思った。
ロミオさんの幼馴染のその後。
彼女は学園の卒業式で、王子の婚約者だった高位貴族の令嬢に冤罪を被せたことがバレて不敬罪で捕まり、戒律の厳しい修道院へ送られることになった。しかし修道院へ行く途中の山中で野盗に襲われて亡くなっている。野盗を雇ったのは王族とも、婚約者の令嬢の親とも言われているが真相は不明である。
…………………………………………………………………
【補遺】
乙女ゲーム攻略対象者
・エクラン国第六王子(イグネイシャスの腹違いの弟。侯爵令嬢だった側妃の子のため、王位継承順位はこちらの方が上だった)
・宰相の義理の息子(眼鏡枠)
・副騎士団長の息子(脳筋)
・隣国エマーシャル王国からの留学生、侯爵子息(チャラ男)
・ヒロインが昔助けた暗殺者『L』(『深海』所属、ケイの先輩)
ヒロインの名前はジュリエッタ。ロミオさんはヒロインの幼馴染枠だったが、ヒロインが前世を思い出したため攻略対象から外れた。
野盗を雇ったのは第五王子のお母さん。ヒロインが息子を誑かしたせいで息子の王位継承権が剥奪されたから。
後に攻略対象者の一人だった『L』は路地裏で息がない状態で発見された。その手口の鮮やかさから殺ったのは『A』ではないかと言われている。
【おまけ】
(side.グランダンナの人たち ある噂)
最近になってここグランダンナで『紅竜』レオンハルトのある噂が流れている。
ーーねえ聞いた?
レオンハルトさんにつがいが見つかったって。
ああーー、うん。私も聞いたわ。レオンさん狙ってたからちょっとショック。
そのつがい、まだ十代らしいな。いいなぁ、若くて肌ぴちぴちで可愛いんだろうなぁ。くーーっ、羨ましいねぇ。
つがいは女の子じゃないぜ。十五歳の男の子だってよ。
え、ちょっと。いったいいくつ歳の差あるのよ! え、七十……レオンさんってショタコン(※落ち人が伝えた言葉)だったの!?
確か、暗殺者ギルドに囚われてたつがいさんを助け出すためにレオンさんがギルドを壊滅させたんでしょう?
暗殺者ギルドの手練れ集団を一人で壊滅なんて、さっすが竜人、最強だぜ。
え、違げぇよ。そのつがいは『紅竜』を狙った少年暗殺者だったって!
えーー、暗殺者? こわぁい。
つまりは自分の命を狙った敵が愛するつがいだったてことよね? なにその運命的な出会い! 愛する人は敵でした……って、なんてロマンチック……。
でもさ、あの滅茶苦茶強いレオンハルト様を狙うなんてばかじゃないの。勝負する前に負けるの分かりそうなものじゃない?
暗殺者ギルドって確か幹部以外みんなに奴隷印を刻んで言うこと聞かせて人殺しさせてんのよね……。相手が誰でも命令されたら実行しないといけないって。
ああ。このレオンハルトさん暗殺依頼さあ……。大きな声じゃ言えないけれど、依頼主が実は王族だったって話だぜ……。
ああーー、王族からの依頼じゃ、レオンさんが強くて暗殺に絶対失敗するって分かっていたとしても、暗殺者ギルドは断れないか……。
王族案件……。
それもさ、その依頼主の王族、つい最近誰かに殺されたそうだぜ……。
えっ……。
ヤバいんじゃない?
あまり話さない方がいいぜ……。誰が聞いてるかも分かんねぇ。
そうよね……。うん……。
あーー、えっとーー、あ! そうそう。話は変わるけどさ、その子は人間だからいくら『紅竜』が自分のつがいだって言っても全く信じてもらえないみたいよ。
ああ、竜人と人間だもんね。異種族同士のつがいだと難しいわよね……。人間にフェロモンを感じることはできないから。
だからあのレオンハルトさまに対しても塩対応なんですって。
あのレオンさんにそんな態度を取れるなんてすごいな、そのつがいさん。魔王よりも最強じゃね?
ええーーもったいない! わたしだったらすぐ受け入れるのになぁ。だってレオンさんって見目もいいし、明るいし、何より高ランク冒険者って高級取りじゃない!
それにレオンさんって一途よね。告白されても、いつか出会うかもしれないつがいさんを待っていたいからって断ってるし。娼館なんかにも行かないみたいだし。
ーーあ、その事なんだけど。
ーーレオンハルトさんって実は童貞って聞いた?
えええぇぇぇ!!
うそぉ。
やっだぁ。マジ?
きゃああ。
嘘でしょ?
え、だってギルマスがそう言ってたわよ。
やだあんた、シュタイナーさまの言う事信じちゃダメよ。あの人、嘘ばっかりつくんだから。
でも、まさかね。
娼館へ行かない、言い寄られても断ってる、誰かと交際しているところを見たことがない、恋人の噂も立ったことがない……。え、え、やっぱり童貞……。
わたし、DTはナシかな。
私はつがいさん一途ってことでまあアリかな。
ええ~~。やっぱり男は経験豊富な方がいいって。女の子ならはじめての方が喜ばれるけどねぇ。
(男たち)
あーあーあー、俺たちは何も聞いてなぁーーい。何も聞こえなーーい。
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なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

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<第一部:疫病編>
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二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

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